熊野の途中ですが・・
先週、急に行きたくなって奈良県桜井市の大神神社を再訪。
記事をupするのはまだまだ先になりますが、
注連縄(しめなわ)について再認識させられることがあったので、
ちょっと載せてみます。
(三嶋大社/静岡県三島市)
神社でしばしば見かける注連縄ですが、
その形状や張り方には様々な種類があります。
(厳島神社/広島県廿日市市)
太さが一定の「前垂注連(まえだれじめ)」、
片方が細くなっている「大根注連(だいこんじめ)」や「牛蒡注連(ごぼうじめ)」、
両端が細くて真ん中が太い「鼓胴注連(こどうじめ/つつみどうじめ)」などなど・・。
(さらには、縄を編む(綯う)向きによっても分かれており、
左綯え(ひだりなえ)と右綯え(みぎなえ)の二通りがあります。)
片方が細くなっている「大根注連」「牛蒡注連」の場合、
太いほうが編み始め(綯い始め)です。
~牛蒡注連の例~
(高牟神社/愛知県名古屋市)
その名の通りゴボウのように細長い。
そしてよーく見ると、向かって右側が太くなっています。
(大瀧・岡太神社/福井県越前市)
(伏見稲荷大社/京都府京都市)
このように、向かって右が太いものを 「左末右本 (左が細く右が太い)」、
反対に、向かって左が太いものは 「左本右末 (左が太く右が細い)」 と言います。
(磐船神社/大阪府交野市)
(先宮神社/長野県諏訪市)
神道においては、神様から見て「左を上位」、「右を下位」とするため、
注連縄を張る場合、
「神様から見て左(=参拝者から見て右)」を太くする のが一般的です。
(天照大神高座神社/大阪府八尾市)
向かって右を太くする「左末右本」が、神社全体の9割を占めており、
向かって左を太くする「左本右末」は1割ほどになるようです。
私みたいなマニアでない限り、気にも留めないと思いますが、
おそらく神社で目にする“太さの違う注連縄”のほとんどが、
向かって右が太くなるように配置されているのではないでしょうか。
~大根注連の例~
(総社大神宮/福井県越前市)
ゴボウ注連に比べ、明らかに胴体が太いダイコン注連。
(総社大神宮/福井県越前市)
たまにゴボウかダイコンか区別がつかない場合もありますが、
大体はもう見たまんま、太いのが大根、細いのが牛蒡だと思えば良いです。
(海神社/奈良県宇陀市)
↑これなんかちょっとどっちか迷うところ。
もしかしてゴボウかなあ・・。
(石切劔箭神社/大阪府東大阪市)
(戸隠神社/長野県長野市)
これもゴボウかもしんない。(笑)
こうして見ると、ホントことごとく右が太い。
200社近く神社を廻ったうち、
(まだ島根県には行ってないからってのもあるけど)たぶんほぼ100パーそうです。
(伊弉諾神宮/兵庫県淡路市)
(都久夫須麻神社/滋賀県長浜市)
これは、ビミョーに右が太いかな・・。
(都久夫須麻神社/滋賀県長浜市)
(洲原神社/岐阜県美濃市)
こちらは思わず、太めの高麗人参を思い浮かべてしまった。
~鼓胴注連の例~
(伊奈波神社/岐阜県岐阜市)
両端が細く、中央が太くなっているもの。
たまに見かける合繊の注連縄なども、この形が多いです。
(櫻山八幡宮/岐阜県高山市)
(諏訪大社・上社本宮/長野県諏訪市)
このへんは、前垂れ注連になるのかな。
(水無神社/岐阜県高山市)
これは・・ゴボウのような気がしないでもない。ほんとに微妙。
(城山八幡宮/愛知県名古屋市)
では、大神神社はどうなのかと言うと、
一般的な神社とは逆の、向かって左を太くする「左本右末」タイプです。
向かって左が太くて、
右が細い。
ついでに注連柱も。
あえて一般とは逆にしてるんだろーか?と思って、
そばを通りかかった神職さんにちょっと伺ってみたところ、
「ここでは普通と反対に、太い方が向かって左側に来るよう配置しています。
左から右へと、力が流れていくのです。」とのことでした。
そっか。
大神神社的にはこれが正しいのだな。(・ω・)
本社祭神の荒魂を祀る、境内摂社・狭井神社も同様です。
左が太い。
神体山である三輪山への登拝口にある注連柱も、
狭井神社の手前にある市杵島姫神社(御祭神:市杵島姫)もそう。
ていうか、大神神社関係はみんなそうなのね。
手水社の手前にある祓戸神社(御祭神:祓戸大神)
境内摂社、活日神社(御祭神:高橋活日命)
おなじく境内摂社の磐座神社(御祭神:少彦名神)
おなじく大直禰子神社(御祭神:大直禰子命)
末社、久延彦神社(御祭神:久延毘古命)
おなじく末社の、貴船神社
境外摂社、綱越神社(御祭神:祓戸大神)
おなじく境外摂社、神坐日向神社(御祭神:櫛御方命)
こちらも境外摂社で、桧原神社(御祭神:天照大神)。
ゴボウなのかダイコンなのか分らんが、とにかく全部左が太かったです。
その他、「左本右末」の代表的な神社として、
出雲大社(島根県大社町)、熊野大社(島根県八雲村)、
大山祇神社(愛媛県大三島町)、津島神社(愛知県津島市)
などが挙げられます。
これらの神社の御祭神は、
・大神神社--大物主(≒大国主命)
・出雲大社--大国主命
・熊野大社--熊野大神櫛御気野命(≒素戔嗚尊)
・津島神社--牛頭天王(≒素戔嗚尊)
・大山祇神社--大山積神
(大山祇神社/愛媛県今治市)
ちなみに出雲大社では、
一般とは逆に、神様から見て「右(向かって左)」が上位、
「左(向かって右)」が下位とされたため、
このような「左本右末」という張り方になっているようです。
(神明神社 石神社/三重県鳥羽市)
注連縄の由来は、
天照大神が天岩戸から出てきた際に、二度と岩戸に戻れぬよう
注連縄を張って戸を塞いだことによるとされていますが、
天照大神といえば、「天津神(高天原の神)」。
一方、大国主命のように天孫降臨の前から国土を治めていたとされる神は、
「国津神」と呼ばれます。
「天神地祇(てんじんちぎ)」という言い方があるように、
天津神=天神、国津神=地神であり、
天(高天原)を上位として見た場合、地は下位となります。
上に挙げた「左本右末」の神社は、
御祭神が大国主やスサノオ。
すなわち国津神です。
天の神サイドが、左(向かって右=天)を上位、右(向かって左=地)を下位とするならば、
地の神から見た上下はその逆。
下とされた右(向かって左=地)が上位で、上とされる左(向かって右=天)が下位・・。
それは出雲神族の抵抗と強い意志の表れなのかもしれない。
・・なーんて思ったり。
(松原神社/愛知県春日井市)
他に左が太いところは無いかなーーと思って写真を探ったら、
石神さんや松原神社がそうだった。
何でだろう。
ついでに、伊弉諾神宮の本殿裏もそうだったけど、
これも理由はわからない。
遺された物の姿かたちには、何かしらの意味がある
と思っています。
それを探ることで、いにしえの人々の声なき声を聞けるような気がするのです。
だからついつい記事upの途中に脱線しては、
寺社建築だの神祭具だのを掘り下げてしまうのでした。(*^Д^)
よほどじゃないと気にしない注連縄のカタチですが、
参詣の折にはぜひ観察してみてください。