歩きながら考える

最近ちょっとお疲れ気味

インドビジネスはいいことばかりなの?

2007-05-22 00:06:13 | Weblog
これだけ世間でインドが話題になっているのに、無視し続けるわけにもいかないなあ、と思い、インドビジネスに関する本を読んでみました。
Amazonで「インド」をキーワードに検索すると、かなりの量の本がヒットするのですが、ビジネス関係のものはタイトルからして脳天気なものが目立ちます。確かに成長市場なのかもしれませんが、「バスに乗り遅れるな」と言わんばかりにインド投資を煽るのはどうかと思います。

量的にはインド関連よりも断然多い中国ビジネス関係の本も、その手の「とにかく儲かる」系が多いのですが、幸いなことに中国についてはマイナス情報を伝える本も多いため、あの国でのビジネスのメリット、デメリットをじっくり検討することが容易です。マイナス情報本の中には、嫌中感情剥き出しで読むに耐えないものもありますが、悪化の一途をたどる環境問題、拡大する一方の貧富の格差、役人の底なしの腐敗、などなど、中国の負の側面について冷静に分析している良書が少なくありません。私は日本の中国研究の幅広さ、深さは世界的にも最高水準にあると思います。歴史的にもつき合いは長い国ですし、多くの企業が現地でビジネスをしており、多くの人間が行き来しているので、それも当然なのですが。

しかしこれがインドとなると、確かに仏教発祥の地であって古くから馴染みのある国なのかもしれませんが、ビジネスでのつき合いがある企業はまだ少数ですし、観光地として訪れるにしても日本人にとってはマイナーな存在なので、情報の蓄積が圧倒的に少ないのです。さらに、東京裁判でインド出身のパール判事が日本の戦争指導者たちを全員無罪とした歴史的事実を持ち出して、「インドは中国と違って親日的だ」と勝手に考える人がかなりいることも、インドは「良い国」だとする情報ばかりが我が国で流布する背景になっているのではないでしょうか。

私はインドに行ったことがありませんが、同じインド文化圏のネパールには学生時代に行ったことがあります。私にとって初めての海外旅行だったのですが、そこで受けたカルチャーショックは相当なものでした。日本では見たことのない凄まじい貧困と、商売人の強欲な商法に本当に気が滅入りました。そのとき私が受けた衝撃をインド旅行経験者に語ったところ、「何を言っているのか」という反応でした。インドを旅して回った後にネパールを訪れるとホッとするのだと言います。それだけインドは強烈なのだということだそうです。

話がそれましたが、我が国ではインドビジネスに関する書籍はプラス面ばかりを強調するものが目立つ現状に、私は危惧を抱きます。これらには嘘は書いてないとは思いますが、これからインドビジネスに乗り出すことを検討しようとしている人たちを読み手として想定するのであれば、インドのマイナス面もきちんと伝えるべきでしょう。
そんな中、これは読む価値がありそうだ、と思った本を3冊選んで読んでみました。

山田和「21世紀のインド人ーカーストvs世界経済」平凡社
島田卓「トヨタとインドとモノづくり」日刊工業新聞社
R.C.バルガバ「スズキのインド戦略」中経出版

いずれも書き手がインドでのビジネス、生活を長年経験した者ならでは内容です。「インド人は親日的」、「インドビジネスは有望」という話しか聞いていない方には、特に最初の山田和氏の本を一読されることをお勧めします。