歩きながら考える

最近ちょっとお疲れ気味

ブラジルの「怪我の功名」から生まれた技術

2007-05-18 00:46:24 | 海外ものづくり事情
 これまで訪問した外国の中で、ブラジルは非常に印象に残る国でした。ブラジル人は陽気で明るく美人が多い、日系人が多いので困ったときは日本語で助けてくれる、料理は美味しい、イグアスの滝やアマゾンといった壮大なスケールの大自然、などなど魅力は多いのですが、残念ながらサンパウロなどの大都市は治安が非常によくありません。幸い何事もなく過ごしましたが、いかにもやばそうな雰囲気を漂わせている場所を何度も見かけました。
 自動車の盗難も非常に多く、最近ブラジルに赴任された方のブログによると、サンパウロでは1日約500台の自動車が盗まれるのだとか。このため、ブラジルでは自動車の盗難防止技術が発達しています。私も現地で聞いたのですが、その技術は世界的にも非常に高いのだそうです(それでも盗まれるのだから盗む側の技術も高いというわけか)。しかし、あまりに自動車の盗難が多いのでやむを得ずそれを防ぐ技術が発達したわけで、いくら世界最高水準といっても誇れないような気もしますが。。。

 同様に「やむを得ない」理由でブラジルが世界的にも高い技術を獲得しているのが、1つはエタノール燃料、それから深海の石油採掘の技術です。
 広い国土を持ち資源にも恵まれたブラジルですが、かつては石油がほとんど取れませんでした。仕方なく輸入に頼っていましたが、70年代に石油ショックに直面し、ただでさえ当時巨大プロジェクトをいくつも抱えて大借金国だったブラジルは未曾有のインフレに直面、経済はえらいことになりました。そこで外貨節約のために考え出されたのが、サトウキビを使ったアルコール燃料を使って自動車を走らせることと、技術的に難しい深海に眠る石油資源の採掘です。今ではブラジルのエタノール燃料の技術は世界から注目を集めていますし、深海の石油採掘もうまくいき今ではほとんど石油が自給できています。
 あと余談ですが、レストランに入った時と支払いの時とでは値段が違う、とまで言われた未曾有のインフレを経験したことから、ブラジルでは銀行で小切手を現金化するときの処理が日本では考えられないほど早い、と現地の邦銀の方から聞きました。
 まさに「怪我の功名」ですね。

 写真は昨年の1月にブラジル出張のついでに訪れたアマゾン河の光景です。ここは治安に不安を感じることもなく、のんびりできました。
 アマゾン中流域のマナウスという都市で日系企業のヒアリングをしたのですが、こんな辺鄙なところにバイクやエレクトロニクス製品の工場が集積しているというのは、実際にこの目で見るまで信じられませんでした。機会があればこのブログで詳しく報告したいと思います。