九品人の落書帖

写真をまじえ、身の回りで見聞きしたことを、つれづれなるままに!

石原慎太郎 逝く(続)

2022年02月03日 | 書籍

 “天才”は田中角栄の独り語り。

 かって、反田中の急先鋒であった石原が、何故、田中を天才と称えるか。

 石原慎太郎が田中角栄に成り代わって書いた衝撃のモノローグ!

 (以下、角さんとも呼ぶ)

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 角さんの生まれてから死ぬまでの一生を語る。

 関心が集まるのは、日中国交正常化とロッキード事件であろう。

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 アメリカはキッシンジャーの突然の訪中で、ニクソンが対中外交を展開する。

 この時、日本は完全に無視され、事は頭越しに進められた。

 他方、日本も角さんの訪中は、アメリカ抜き、突然の日中国交回復であった。

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 訪中して毛沢東に逢ったとき「田中先生、日本には四つの敵があります」と、質された。

 角さんは、外務省から四つの敵として予めレクチャーを受けていた。

 「アメリカ帝国主義」「ソ連修正主義」「日本帝国主義」「日本共産党宮本修正主義」と。

 ところが、毛の言葉は違った。

 最初は「ソ連」二番目「アメリカ」そして「ヨーロッパ」最後は「中国」です。

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 角さんには、毛の言葉は予想外であった。

 同席していた中国側の幹部連中も、一瞬、表情が変わったという。

 最後の敵は中国です、という毛の言葉の意味は、やがて分かるときがくる。

 これが、中国における文化大革命の前触れであったかと、角さんは知る。

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 石油危機が起きて、角さんはアメリカのメジャーに頼らない輸入ルートの確保に。

 カナダやインドネシアなどへ資源外交を求めて動き回る。

 そんな角さんに、ヒステリックなアメリカは「田中降ろし」を模索し始める。

 そのきっかけは、青天の霹靂でやってきた。

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 アメリカ上院外交委の公聴会で、ロッキード社の不正支払い問題が持ち上がった。

 ロッキード社が航空機売り込みのため、日本や欧州の政府高官に政治的支払い。

 日本へは、政商小佐野、右翼の大物児玉、商社の丸紅経由で政府高官へ、と。

 政府高官リストの中に、Tのイニシャルがあり田中と察せられた。

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 角さんの事務所へは5億円。

 丸紅の伊藤から田中事務所の榎本が直接受け取ったとの証言。

 そんなこんなで、角さんは刑事被告人となる。

 一審は総理大臣の職務権限による収賄罪、懲役4年、追徴金5億円。

 そして控訴。

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 角さんとすれば、

 そもそも一国の総理大臣として、

 一商社の飛行機売り込みのための請託を受けて、

 金銭を受け取るなど、あり得ない話しであった。

 この国は、こうして、この天才を葬り去ったのである。

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