浜野浦棚田の夕景があまりにも見事だったので、もう一ヶ所行ってみようと思い立った。
ネットで調べ、長崎県松浦市福島町の土谷棚田というところに出かけた。
自宅を出た時は晴れていたのに、現地に着くと曇りだった。
空全体を雲が覆い尽くし、太陽は雲を通して朧ろな光を放っている。
美しい夕日は望めそうもない。
諦めて帰るかとも思ったが、高速道路を使ってはるばるやって来たので、とにかく日の入りまで待つことにした。
時折、景色を眺めて帰っていく人はやってきても、夕日までいようとする人は誰もいない。
来た証拠写真兼暇つぶし写真を撮ったあと、車の中で時間が経つのを待つ。
と、観光バスがやってきて、突然賑やかになった。
20人ぐらいのカメラマン、カメラウーマンが降りてきて、めいめい好きなところに三脚を立て始めた。
僕も車を降りて、彼等から少し離れたところに三脚を立てた。
空は相変わらずの曇り空で、美しい夕景はやはり期待出来そうもない。
彼等の一人から話しかけられたのをきっかけに数人と話すようになった。
驚いたことに、彼等は大分から三時間をかけてやって来たという。
太陽の光がだんだん弱まっていく。
やがて、日の入りの時刻あたりになると、太陽はどこにいるかもわからなくなり、空の一部をわずかに色づかせているだけである。
空に変化が起こりそうな気配もなく、大分から来た人達は名残惜しそうにバスに乗り込んで帰ってしまった。
一人残った僕もどうしようかと思ったが、もう少し粘ってみることにした。
写真を撮っていると、予想もしない空の急展開があったりするが、浜野浦に続いてここでも美しい空を見せてくれるなど、自然の神様はそう甘くないと思いながら・・・
多分空の変化もないまま暗くなって帰路に着くことになるのだろうなあと空を眺めていると
お、なんと、少し赤みを帯びてきているではないか。
これは、ひょっとしたら、と思う間もなく、赤みがどんどん濃くなり、空に広がっていった。
この光景独占状態で、構図を変えながら夢中でシャッターを切る。
何枚も撮ってしまって、もうどれがいいんだか。
ここでも、現像ソフトで色を弄る必要のない、見た目そのままの色だ。
とにかく空の色が美しかった。
棚田が空の色を映してくれれば最高だが、なぜか三ヶ所だけ。
やがて感動の光景もピークを過ぎ、光をだんだん弱めていった。
思いがけない展開に、もう大感動である。
やっぱり日頃の行い・・・
でも、この日のあと、快晴の日々が続いている。
晴れていれば、本来の美しい夕景が見れていたのだ。
行った時に曇りだったのは、逆に、日頃の行いが・・・