■講師が感じた違和感
当塾では毎日授業終了後にミーティングを行っています。
以前、その授業終了後のそのミーティングで、ある講師がこんなことを切り出しました。
「ちゃんと教えているんですが、なかなか覚えてくれなくて…」
「前に教えたことを改めて聞くと、覚えていないことが多くて、また最初から説明をしなくてはならないことがあるんです」
そういった内容だったと思います。
一生懸命に教えていても、それがなかなか生徒さんに伝わっていかないと、やはり辛いだろうと思います。そこで、その日のミーティングでは、そういう生徒さんにどう対処していったらいいのかを考えていくことになりました。
■授業のやり方を検証してみる
私はその講師にどんなふうに授業を進めているのかを聞いてみました。
その詳細は省略をしますが、一言でいえば、それはとても丁寧な教え方だったと思います。
でもそれは同時に「依存をうむ」ということに、その講師は気づいていなかったようです。
「分からない」と言われると、どうしても教えたくなるのが私たちの志向です。
でも、実はここでグッとこらえられるかどうか、これが私たちに求められていることでもあります。
そのことにその講師は最初気づいていませんでしたが、そのミーティングをしたことで気づいてくれたようです。
■教える側に求められるもの
「分からない」と言われてすぐに教えたくなる。
これはこの仕事をしている人ならば、誰もがそうだと思います。
でも、分からないと言われてすぐに教えてしまうと
「分からないといえば教えてくれる」
という甘えというか、言い方を変えると依存の気持ちが生徒に芽生えてしまうことがあります。
でも、一生懸命考えた末での「分からない」に対しては即座に反応する必要があり、その区別をしてくことが大切だと、その講師も気づいたようです。
考えもせずに、答えだけを求めて「分からない」と言っているのか、
一生懸命自分なりに考えて「分からない」と言っているのか、
その区別をつけていくことが教える側には求められます。
それだけ生徒さんを「よく『観察』しておくこと」が私達には求められます。
■小学生のうちに身につけたいのは「考える力」
分からないからと言ってすぐに教えると、奪われていく力は「考える力」です。
実はこの「考える力」、これを12歳までに、つまりは小学生のうちに身につけておいて欲しいのです。
でも、実はこれにはアナログ的な「てまひま」がかかります。
例えば、御家庭で小学生のお子さんに宿題を聞かれたシーンで考えてみます。
ご両親が忙しい時に「宿題が分からないから教えて」というシーンです。
そういう時は、忙しいがゆえに「考え方」を飛ばして「答えだけ」をサッと教えてしまう、そんなことがないでしょうか。
忙しいときは特に「一緒に考える」というよりも「答えを教えてしまう」ことになりがちです。
これは教わったほうも「分かった」となりますし、教えたほうも「教えた」となり、双方win-winの関係になったように見えますが、実は確実に「考える力」を奪うことになってしまします。
■必要なのは生徒さんの『観察』
もし上記のようなシーンが長く続けば、教わる側の「考える力」を奪うことになりがちです。
本当ならば、どこまで分かっていて、どこから分かっていないのかを見極めて、それに応じたヒントを出し、そこから自分で考えてもらって…というのが適切な手順だと思います。
でもこれは時間がかかりますし、何よりも生徒さんをじっくりと『観察』することが必要です。忙しいと、そのプロセスがすべてすっ飛んでしまい、答えだけを教えるということになりがちです。
「考える力」を育てるには、それこそアナログ的な「てまひま」がかかるということになります。
そして何よりも教える側が生徒さんに興味・関心をもち『観察』していく姿勢が必要になってきます。
冒頭に出てきた講師は、ミーティングでの話し合いや、自分のやり方を検証した結果、『生徒さんを観察することが大切』ということに気づき、それを実践していくことになりました。
■高校受験に向けて
「考える力」については、小学生のうちに身につけておいて欲しい、ある意味たった1つのことだとも言えます。これがあれば、どのような教科でも、まずは考える、自分の頭を使う、それから質問するという流れができ、成果を出しやすくなっていきます。
「でも、もう中学生になってしまったよ」という皆さん。
今から「考える力」を取り戻すにはどうしたらよいかを考えてみましょう。
それは「しっかりと皆さんを観察してくれる人を持つこと」です。
あまり考えずに「分からない」といった時に「もう少し考えてみなよ」と言ってくれる人、
一生懸命考えたときには「ここまではできていたんだね。続きはね…」と言って適切なヒントをくれる人、
そんな人を身近に置いておくことが大切なんだろうと思います。
皆さんにはそんな自分をリードしてくれる人はいますか?
ご両親やご兄弟にそんな方がいるのが一番ですが、もしなかなかそういう人がいないなあという時は、「しっかりと皆さんのことを観察してくれる」先生がいる塾を活用してみるのいいかもしれませんね。
ただ、じっくり取り組む覚悟と自分が変わろうとする気持ち、それをまずは忘れずにね。