ある2年生の数学を教えていたときのこと。
ワークのちょっと難しい問題(実は過去に入試で出た問題)を解いていましたが、
なかなか難しかったようで、解くことができませんでした。
その後、解説をし解答も確認し終わった後で、
「どう?今度出たらできそう?」と聞いてみると
「こういう発想はできないかも」というふうに言っていました。
この生徒さんは中間・期末などではある程度の得点をとってくる生徒さんですが、
やはり入試問題となると難しいようです。
しかし、来年の今頃はこの問題が解けるようになっていないといけないんだよ、というと、
ちょっと神妙な顔つきになっていました。
「中間・期末はワークから出ると分かっているから事前の対策も立てやすい。けれど入試ではどんな問題が出てくるか、事前に知ることは難しい。だからこそ、たくさん問題を解いて発想力を身に付けておくことが大切」
「中間期末ができることと、入試で点数がとれることは別問題」
という話もさせてもらいました。
もちろんどんな入試問題も、中間・期末をはじめとする日々の学習を基礎としているのは確かですが、
中間・期末の問題だけしか知らないと、入試でたじろいでしまう人が多いのではないかと思います。
「この塾では数学は3年生の早い時期に終わらせたいと話したことがあるでしょ。それは、中間・期末とは違った、こういう入試問題をたくさん解くためなんだ。」
そう話すと、少しその生徒さんの目の輝きが違ってきたように思いました。
いままでは授業の後半になると少し眠そうにしていましたが、この話を聞いた後は最後まで眠そうにせず、いつもより目をらんらんとさせながら問題に取り組んでいるようにさえ思いました。
何事もそうですが、ゴールを早めにしっかりと知らせておくことは大切だと思います。
入試は今のテストの延長戦だろうと思っている間は、現状に満足して甘えがでて、なかなか伸びていかないと思います。
しかし、目指すゴールはもっと先にあった、目指すべきゴールにまだ自分は到達していないと思えば、自分から伸びていこうとする力を引き出せるのかもしれません。
ある高校では1年生のうちから東大の入試問題を解かせるといいます。
できる、できないの問題ではなく、「大学入試とはこういうものだ」ということを示すことで、生徒さんにゴールを早めに知ってもらい、学習意欲を喚起するのだそうです。
この方法は伸びようと思っている生徒さんにむしろ効果があるそうで、「ゴールはまだまだ先、現状に満足せずに未知のゴールに向けてまた伸びていこう」と決意し勉強を始めていくのだそうです。
私が教えたこの生徒さんも、「伸びたいという気持ち」を持った生徒さんだったのだと思います。
現状に満足して終わることがないようにお話したことが、これからのこの生徒さんの伸びにつながっていってもらえたらと思います。