人の出会いは数えきれないほどあるが、何かの関係で同じ時期を過ごし、人間性
や考え方や、その人の持つ独特の雰囲気など、自分と異なっていても何故か相性
のいい人はいるものだ。会社であれば差し詰め同期の桜であるし、先輩・後輩もそ
うだ。私が初めて駐在したお客様先で一緒になったのが、今回仙台で30数年ぶり
に再会する先輩だ。一緒に仕事をしたのは4~5年と短いものだったが、技術的な
知識が伸び盛りの時に、色々と教えて貰い私の技術的な基礎を固めることが出来
た。勿論、人間性も素晴らしい人だから、離れ離れになり長い歳月が過ぎても、こ
うして逢って語りたいと思わせるのだ。
奥さん共々、出掛けたのは仙台名物の牛タン屋さん。
老舗で美味しいと評判の店らしい。牛タンを4人前頼もうとすると、店長さんが『ここ
のタンは大きいから、2~3人前と何かを頼まれた方がいいですよ』とアドバイスして
くれた。厚さは1cmくらいあり、2cm幅くらいに切ってある。丁度、ステーキを2cmくらい
に切り分けたような感じ。厚いのに店長が自慢するように、柔らかい。ほんのりとした
塩味で上品な味だった。私たちが食べるのは薄くスライスしたものばかりだから、タ
ンそのもの味より塩コショウだったり、別の調味料の味の方が強く感じてしまう。
何故、仙台が牛タンの本場なのかを聞き逃してしまったが、お土産コーナーでは
笹カマと肩を並べて牛タンの燻製や加工品が置かれている。
美味しい食べ物、冷えたビールで口も滑らかになり昔話、震災のことなどに花が咲
き大変楽しいひと時を過ごすことができた。皮肉なことに、この再会は憎たらしい震
災があったから叶ったものだ。天災は何一つとしていい事は言われないが極まれ
に、こうした機会を作り出すこともある。次の日は会津若松を通過して、長岡に泊ま
る予定だったが、宿の変更が出来たので会津若松泊にした。ここには後輩がおり
これまた何十年ぶりの再会だ。
当時は未だ若かったから会社のレクリエーションで奥さんも一緒にバレーボール
をしたりした。年賀状でのやり取りだけの付き合いになっているが、彼ともこうした
再会を果たせるとは思いもしなかった。頭の中には『いつか三春桜を観に行った
ら彼と再会できるかも・・・』とあったが具体性は皆無だった。
私の方が先輩だから偉そうにしたいが、郷に入れば郷に従うしかないから、連れ
ていかれたのは『郷土料理』を食べさせる昔の豪農屋敷風の料理屋だった。
『こづゆ』と称する野菜汁のようなものや、目出度い時に食べる『饅頭の天ぷら』な
どともに会津地方の珍しい料理が出される。
呑み過ぎにならぬようと心がけていた心算なのに、ワインを3杯も飲んでも未だ元
気が残っていた。ここでも、当地で勤務していた仲間たちの報告やら病気の話を
していたら、奥さんは直腸がんで手術をされたと聞く。
以後の状況は順調で心配は要らないとの事だったが、こいつばかりは安心ならぬ
からお互い気を緩めないように。
懐かしい人との再会で話題は尽きないが時の経つのは早い。いつになるかはわ
からないけど、三春桜・・・・・と言いつつ再会を願う。
後輩の推薦・・・『五色沼は綺麗』に心を動かされ翌日は五色沼経由で中越地震
被災地の供養に向かう。