夏本番を迎えると暑さを我慢していることはない。海に行こう。暑さ凌ぎ、貝採りの
一挙両得となる。今年の夏は連日、猛暑が続いているが例年はいくら暑いといっ
ても一時間も潜れば二度と潜る元気がなくなり、ガタガタと震えがくるようになる。
ここは好場で岩場が続き冲合、百メーターほど歩いて行ける。途中の三ケ所は数
メータ泳がないといけない場所があり、遠くからこの岩場を眺めると南洋のトロピカ
ルな雰囲気を感じる。先端に迪り着くと大小の岩が波に洗われている。耳栓をし
て水中メガネをかけ大きく息を吸ってから潜る。
岩場はウ二、鋭った岩で足を怪我するので運動靴の軽いものと軍手は必需品。
それにアワビを起こすぺグも必要になる。
サザエは深く潜れば大きいものが採れるが壺焼きにする位のものなら手の届く所
でも採れる。海中に潜る、といっても一メーター位だろうが海草をかき分けると、ち
ょこんとサザエがいる。息の続く限りそこら中を探す、上手くすると一回の潜りで三
〜四個は採れる。また、潮通りのいい場所はサザエの棲家でもあり周囲の状況を
見ながら潜り決して無理をしてはいけない。岩場の波は気紛れで思わぬ方向から
寄せることがある。
三年前はサザエが異常繁殖した。夏本番になると海水浴客が増えサザエも段々
と少なくなっていくが、その年はよく潜る友人と三十分ほどで五十ケを楽に採れた。
この他にアワビ、トコブシも採れるが数は少ないし、アワビはせいぜい十センチもあ
れば大物。トコブシは6~7cmくらいのアワビと同じ格好をしたものだ。小さい貝だが一
応、刺身にして食べると食感はアワビと同じ。本格的な中華料理店ではトコブシを
使った料理をメニューとして揃えているが、一般的な所ではお目にかかれないから、
高級食材の下の部類に属すのかもしれない。
岩場にはべべ貝、ニナ貝と小さな貝がありニナ貝は塩茹でにしマチ針で身を取り
出して食べるとシッポの苦味が何ともいえず子供でもその苦みには抵抗がないらし
く次から次へと手が出る。以前は大きなものが沢山採れていたが、近年はスーパ
ーでも売られるようになり、海でも小さいものしか見られなくなった。
これと逆にムール貝、当地ではイ貝は潮通しのいい岩場、養分の多い船着場など
にビッシリとくっついている。残念ながら大きなものは簡単な場所ではとれないが、
4~5㌢のものを汁の出汁にすると美味しい『潮汁』ができる。
変わったものではフジッボで(鷹の爪みたいな貝)潮通りがいい岩の間におり、それ
を先の鋭い刃物で採りだし塩茹でにする。形はグロテスクだが磯の香りがプ—ンと
漂い中々の珍味である。