クロ (クロアイ)は四季を通して釣りの対象になるが私が釣るのはこの時期なのでこ
こで紹介させて頂く。鱸は出生魚で名前も有名だがクロにも出生魚としての名前が
ある。小さい五~六センチほどのものをコメサといい、アオザネ、ハブナガ、クロ (ク
ロヤ)となっていく。
旬は梅雨時の"梅雨グロ"、冬の"海苔グロ"と呼ばれる。島根半島は岩海
苔の産地である。冬が厳しければ厳しいほど良質の岩海苔が育ち、荒れる日本海
の波が静まった時を見計らって岩海苔を摘む。昨今の一次産業は海苔摘みに限ら
ず後継者不足で岩海苔を採るのも老人の姿が目立つ。岩海苔はクロも好んで食べ
る為、針に海苔を巻いて釣る。
私のクロ釣りは本格的なものではない。梅雨の旬、冬の旬には出かけない。簡単に
釣りの出来る防波堤か危なくない岩場を選んで出かける。
岩場では岩に波が当り白い泡と潮流が交叉する場所にジャンボやオキアミを蒔餌
にし魚を誘き寄せ安心させ餌を食べさせる。クロは警戒心の強い魚で目は抜群に
いい。引きは強く大きいものはおいしい魚だ。
ハリスは一号以下の細いものを使い、餌を浮かせるようにするため、あまり重いオモ
リをつけない。魚になったことのある太公望の報告だと、重い錘を付けると糸が垂直
に張り、それを嫌うのだと言う。目のいい、警戒心の強い魚には共通しているらしい。
近年の釣りにはオキアミ(南極オキアミ)は欠かせない。オキアミは南極の唯一の量
産品だろう。クジラの好物でクジラが食べ切れないで、その上に人間が捕っている
のだからどれ位、生息しているのか想像できない。オキアミの食料品としての研究
は遅れており摺り身にして混ぜて使用されている程度と聞く。身が柔いため捕った
らすぐ鮮度が落ちるのでボイルし冷凍にして日本に運ぶ。
遠い南極で捕れたオキアミが日本の片田舎で釣りの蒔餌で使われているとは馬鹿
げているやら、もったいないやら。
蒔餌をし、そこに糸を垂れると小さいものは直ぐに浮きを沈めるが手の平を越すよ
うなものは、たまにしか引かない。しかしクロの引きは面白くチヌ(黒鯛)竿を弓成り
にさせ釣りの醍醐味を満喫させてくれる。海の中では多少灰色がかったクロは釣
り上げると、墨汁よりも濃い真っ黒になる。料理はこれといったものは知らないが腹
を開けると磯臭い臭いがし途端に食欲が落ちる。
地元の漁師は小さいものをブッ切りにして食べるとおいしいと教えてくれたが試し
たことはない。本格的に狙えばチヌ同様にその引きの魅力に取り付かれ虜にな
ってしまうだろう。