R45演劇海道

文化の力で岩手沿岸の復興を願う。
演劇で国道45号線沿いの各街をつないでいきたいという願いを込めたブログ。

山根若者の会『六豪』

2013-10-27 23:42:56 | インポート

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 本日、山根若者の会の公演『六豪』(ROKUGOU)が、山根町文化祭でありました。

 とにかく、客席が沸いた最高の舞台でした。

 一観客として、最高の時間を過ごすことができました。

 作り手が如何に高尚な思いがあっても、舞台は観客が『面白かった!』『これをみて、がんばろうと思えた。』が、なければ意味がありません。

 観客の万雷の拍手に手ごたえを感じました。良い舞台を作ってくれた、『山根若者の会』の、皆さんには感謝、感謝です!

 次は、2月にアンバーホールの小ホールで上演の予定です。

 見逃した皆さんは是非2月にアンバーホールでご覧下さい!


祝 おらほーる劇場ウエブ進出!

2013-10-23 21:48:21 | インポート

 おらほーるの間峠さんの御取り計らいで、おらほーる劇場として上演した全作品が、久慈市のHPから入ったオンデマンドで観ることができるようになりました。

 

 久慈は遠くて観にいけなかったという方、是非、お立ち寄りいただいて、こむろワールドをご堪能ください。

http://www.city.kuji.iwate.jp/cb/vod/cbServlet?FRID=EntryList&cID=262


幸せな劇作家

2013-10-22 22:57:51 | インポート

10月13日(日)

 陸前高田の田村ピアノ教室の発表会が、住田町のホールでありました。

 私が書いた『恋の洞窟探検』という作品を、構成台本として使っていただきました。

 精一杯演じていただいたうえに、挿入したダンスを教えてくれた若者が、ステージの出来に感動して、大泣きをしていました。

 とても、良い舞台をみせていただきました。

10月19日(土)

 久慈市立山形小学校2年生が『もぐらんぴあのなかまたち』を上演してくれました。

 先生方が気合を入れて衣装をつくってくださっていましたし、こちらも熱演でした。

 子どもたちの演技に、作者がほろっとしてしまいました。

10月27日(日)

 山根町民文化祭で山根若者の会が、『六豪』を上演してくださいます。

 

 ということで、三週にわたって自分が書いた作品を生で観ることができます。

 作者冥利に尽きますね。


闘牛王の憂鬱【第10回】

2013-10-16 00:00:19 | インポート

 第十七話 決勝戦 内間木王 VS グレートガタゴン<o:p></o:p>

 会場には、観光振興協議会の人たち、子どもたち、テレビ局スタッフ当、一同が勢揃いしている。<o:p></o:p>

 アナウンサーがコールをする。<o:p></o:p>

江根知 それでは、本日の最後の取り組みとなります。

   新生ヒラニワ闘牛の初代チャンピオンは、内間木王とグレートガタゴンのいったいどちらになるのでしょうか。お待たせいたしました、本日結びの一番。両闘牛の登場です。<o:p></o:p>

 クイーンの『We will Rock You』が流れ出す。<o:p></o:p>

 観客も今度は慣れたもので、曲に合わせて腿と手を使ってリズムを取りはじめる。<o:p></o:p>

 グレートガタゴンが静かに現れる。<o:p></o:p>

 続いて、音楽が流れ出す。曲はアリスの『遠くで汽笛を聞きながら』。<o:p></o:p>

 こちらも静かに内間木王が上手から現れる。<o:p></o:p>

 両者、リングの中央で相まみえる。<o:p></o:p>

 

ガタゴン 前回のけりはきっちりとつけさせてもらいますよ。<o:p></o:p>

内間木王 お前、一回り大きくなったな。<o:p></o:p>

ガタゴン 俺は一人で闘っているのではないことがわかりましたから。<o:p></o:p>

内間木王 俺もだ。<o:p></o:p>

 ガタゴンと内間木王は角(腕)をがっしりと組み合わせる。牛としては、角を突き合わせている格好だが、絵的には、両手を頭のわきに掲げた両者が、それぞれの手をがっぷりと組み合い、力勝負をしている格好となる。<o:p></o:p>

ガタゴン 年だからって、容赦はしませんよ。<o:p></o:p>

内間木王 望むところだ。<o:p></o:p>

 一旦 離れる。間合いを保って、懐に入り込むのを窺う二頭。<o:p></o:p>

内間木王 冷静だな。<o:p></o:p>

ガタゴン あなたこそ。<o:p></o:p>

内間木王 前回とは偉く違うな。<o:p></o:p>

ガタゴン 背負っているものがありますから…。<o:p></o:p>

 二頭、再び組み合う。<o:p></o:p>

内間木王 これでこそ頂上決戦にふさわしい。<o:p></o:p>

ガタゴン この闘いを勝つ意味は大きい。負けませんよ。<o:p></o:p>

 内間木王、押し込む。<o:p></o:p>

 ガタゴン、押された分、押し戻す。そのまま、ガタゴンは、内間木王の角の付け根を掘る。<o:p></o:p>

 内間木王たまらず、一旦離れる。<o:p></o:p>

内間木王 やるな。<o:p></o:p>

ガタゴン 横綱、目指してますから。<o:p></o:p>

 ガタゴンの一瞬の隙を突いて、内間木王はガタゴンの首筋を攻める。<o:p></o:p>

 一旦受けるような形になったが、ガタゴンは首をひねりそれを流す。<o:p></o:p>

 そのまま、両者、距離を取って隙を窺う。<o:p></o:p>

ガタゴン 今日は動きが見えますよ。<o:p></o:p>

内間木王 俺も、今日はまだまだいけるぞ。<o:p></o:p>

ガタゴン やせ我慢はしないことです。<o:p></o:p>

内間木王 せいぜい強そうなふりをしているがいい。そのうち、化けの皮が剥がれる。<o:p></o:p>

ガタゴン もう、今ままでの俺とは違いますよ。そんな挑発には乗りませんよ。<o:p></o:p>

内間木王 …強くなったな。相手に不足は無い。<o:p></o:p>

ガタゴン お互い様です。あなたにも同じ言葉をお返しします。<o:p></o:p>

 両者、睨みあったまま、硬直している。<o:p></o:p>

 会場が、ざわつき始める。<o:p></o:p>

江根知 いかん。お客さんが飽き始めた。例の演出だ。やれ!<o:p></o:p>

 と、突然会場がストロボ照明になる。<o:p></o:p>

栗木 何だ、これは。<o:p></o:p>

江根知 斬新なパフォーマンスです。<o:p></o:p>

栗木 これじゃ、牛が試合に集中できねぇ。<o:p></o:p>

江根知 観客は試合に集中できます。<o:p></o:p>

栗木 それじゃぁ…(牛はどうだって良いってことか。)<o:p></o:p>

江根知 お客さんは、こういった斬新な演出を求めています。<o:p></o:p>

栗木 わしは納得できねぇ。中止だ!<o:p></o:p>

 ライトは変わって、観光振興協議会。<o:p></o:p>

大畑 あんまりだべ。<o:p></o:p>

野田 そうだな。<o:p></o:p>

田子内 会長…。<o:p></o:p>

小林 テレビの人たちは田舎もんはこんなんで喜ぶだろうと決めて、上から押し付ける。これは違う。ここの闘牛をなめんじゃねぇ!<o:p></o:p>

  小林たち、立ち上がる。<o:p></o:p>

 内間木王、ガタゴン、共に目がくらんでわけがわからなくなってる。<o:p></o:p>

ガタゴン 何だこれは。<o:p></o:p>

内間木王 試合に集中できねぇ。<o:p></o:p>

ガタゴン くそお!<o:p></o:p>

 ガタゴンのたうちまわる。勢子、精一杯、ガタゴンを止めようとする。<o:p></o:p>

勢子 ガタゴン、落ち着いて。落ち着いて! <o:p></o:p>

ガタゴン うぉぉぉぉ。<o:p></o:p>

内間木王 俺はこっちだ。そっちじゃない!<o:p></o:p>

 ガタゴン、ストロボライトが設置してある土俵わきの柵に突っ込む。<o:p></o:p>

 柵が壊れ、ガタゴンは柵の外に…。<o:p></o:p>

 大破するストロボライト。<o:p></o:p>

 逃げ惑う人々。<o:p></o:p>

 更に暴れるガタゴン。<o:p></o:p>

 ケーブルをくわえ引きちぎろうとすガタゴン。<o:p></o:p>

 会場の後ろの方で、機材が崩れ落ちる音。<o:p></o:p>

 発電機らしきところから、火があがる。<o:p></o:p>

 赤く染まった会場の中、人々の叫び声と、牛の雄たけびが交錯する。<o:p></o:p>

 暗 転<o:p></o:p>

 第十八話 後の祭り<o:p></o:p>

 一夜明けた、闘牛場。<o:p></o:p>

 会場は機材が飛び散り、柵が折れ曲がり、混乱した状態のままだ。<o:p></o:p>

 そこへ、江根知、照深の、テレビ局のスタッフが現れる。<o:p></o:p>

照深 江根知さん。やってしまいましたね。<o:p></o:p>

江根知 俺のせいじゃないぞ。俺は、依頼された通りに演出を手掛けたまでだ。<o:p></o:p>

照深 私たちの仕事は、メディアを使って人々により良い暮らしを提供することですよね。<o:p></o:p>

江根知 もちろんだ。<o:p></o:p>

照深  地域の文化を壊すことは、良い暮らしにつながるんでしょうか…。<o:p></o:p>

江根知 再構築するためには、壊すことも必要なことはあるんじゃないか。<o:p></o:p>

照深 しかし、今回は、壊すべきじゃ無かったかと…。<o:p></o:p>

江根知 ここの人たちが、望んでいると思ってやったんだ。<o:p></o:p>

照深 そう。誰も悪くは無い。でも、<o:p></o:p>

藤井 でも…。<o:p></o:p>

照深 残ったものは、良い結果だとは思えない。<o:p></o:p>

江根知 おれも、そう思う。<o:p></o:p>

 そこへ、勢子たちと、川向が下手から、観光振興協会のメンバーが上手から現れる。<o:p></o:p>

 大上、江根知を見つける。<o:p></o:p>

大上 あっ。<o:p></o:p>

 大上、江根知をにらみながら歩み寄る。<o:p></o:p>

大上 てめぇ!ここの闘牛をめちゃくちゃにしやがって!<o:p></o:p>

 大上、江根知につかみかかろうとするところに、小林が割って入る。<o:p></o:p>

小林 この人は悪くない。悪いのは、俺だ。闘牛をこうしてくれと頼んだのは、俺だ。殴りたければ、俺を殴れ!<o:p></o:p>

 小林、大見えを切って立ちはだかる。が、大上に殴られ、地べたにはいつくばる。<o:p></o:p>

小林 ここで、殴るかい…。<o:p></o:p>

 栗木、妻と共に現れる。<o:p></o:p>

栗木 大上、それくらいにしろ。<o:p></o:p>

大上 おやっさん。<o:p></o:p>

栗木 許してくれ、俺はここのために、この土地の振興のために良かれと思って今回の興業を許した。しかし、これはここの闘牛じゃなかった。<o:p></o:p>

川向 そうですね。<o:p></o:p>

江根知 すみませんした。<o:p></o:p>

大畑 江根知さんだけを責めるのは間違いだわ。<o:p></o:p>

田子内 そうです。我々にも責任があります。<o:p></o:p>

野田 そうだ。<o:p></o:p>

栗木 …やったことに、意味が無かったわけじゃない。<o:p></o:p>

小林 栗木さん…。<o:p></o:p>

栗木 やってみたからこそ、ここの闘牛の良さ、何を大切にするべきかがわかった。<o:p></o:p>

川向 そうですね。<o:p></o:p>

栗木 失った物もあるが、得たものもある。<o:p></o:p>

小林 …栗木さん…。<o:p></o:p>

栗木 挑戦なくして、成功無しだ。<o:p></o:p>

大上 おやっさん。<o:p></o:p>

栗木 本当に良いものは、何があっても受け継がれて残るものだ。それを、この若いやつらが自分たちで見ただけでも、価値がある。<o:p></o:p>

勢子 ちゃんと、見たよ。大上さん、見たよね。田代さんも、大欅さんも見たよね。<o:p></o:p>

田代 あぁ。<o:p></o:p>

大欅 心に刻んだ。<o:p></o:p>

栗木妻 これからの闘牛は…。<o:p></o:p>

栗木 これからを考えるのは、俺らではねぇ。任せるべ、こいつらに。<o:p></o:p>

大上 ようし、来年の闘牛は…。<o:p></o:p>

勢子たち よっしゃぁ。やるぞぉ。<o:p></o:p>

 大上の最後の言葉は勢子たちの声にかき消され聞こえない。<o:p></o:p>

 夕焼けの空を背に、闘牛に関わった人たちが影だけになり、その影も次第に暗闇の中に同化していく。<o:p></o:p>

 夕闇の闇の端には、闘牛たちが現れ、そのシルエットを残す。<o:p></o:p>

 終  幕<o:p></o:p>

 


闘牛王の憂鬱【第9回】

2013-10-15 22:51:17 | インポート

第十五話 内間木王の憂欝(一回戦 サイクロン霜畑 VS 内間木王)<o:p></o:p>

 音楽が流れ出す。曲はアリスの『チャンピオン』だ。<o:p></o:p>

 スクリーンには内間木王が映し出される。<o:p></o:p>

 会場からは老若男女問わず歓声が起きる。<o:p></o:p>

 上手から、マントをはおって腰に面綱をつけた『内間木王』が現れる。<o:p></o:p>

 続いて、演歌の渋い音楽(『夢芝居』)が流れ出す。スクリーンにはサイクロン霜畑。渋い表情のサイクロンがスクリーンに映し出される。今回の声援は、『待ってました!千両役者!』等、掛け声が飛ぶ。<o:p></o:p>

 満を持して『サイクロン霜畑』が登場する。<o:p></o:p>

 両者に単サスが落ちて、モノローグ仕様の照明になる。<o:p></o:p>

サイクロン お前とやるのも、今日が最後かもしれねぇな。<o:p></o:p>

内間木王  俺は、貴方を負かしたくは無い。<o:p></o:p>

サイクロン 何、生意気なことを言ってるんだ。俺が、負けるっていうのか。<o:p></o:p>

内間木王  サイクロンさん…。<o:p></o:p>

サイクロン 俺は、お前に負ける気はしねぇぞ。若造!<o:p></o:p>

内間木王  俺に、若造と言えるのは、サイクロンさんだけですよ。<o:p></o:p>

サイクロン お前、俺と組めるか。<o:p></o:p>

内間木王  流石にひよっこではありませんから。サイクロンさんの眼光に恐れをなして逃げ去るようなことはしませんよ。<o:p></o:p>

サイクロン 良く言った。俺に敬意を払いたければ、手ぇ抜くな。全力で来い。<o:p></o:p>

内間木王  わかりました。全力で行かせていただきます!<o:p></o:p>

 両者睨みをきかせながら、リングで間合いを保ちゆっくりと周っている。<o:p></o:p>

内間木王 サイクロンさんは何のために戦っているんですか。<o:p></o:p>

サイクロン そんなこと考えていれば戦えないぞ。<o:p></o:p>

内間木王 勝ってどうなるというんです。<o:p></o:p>

サイクロン 負けた相手が、ほふられるだけだ。<o:p></o:p>

内間木王 だったら、俺は勝ちたくねぇ。<o:p></o:p>

サイクロン なら、負ければ良い。<o:p></o:p>

 サイクロンの痛烈な押しに内間木王後ずさりをする。<o:p></o:p>

内間木王 負けたらどうなるって言うんです。<o:p></o:p>

サイクロン お前さんなら、かろうじて肉になって、人様の役に立つだろうよ。もっとも、筋肉質の肉だから、せいぜいミンチになってひき肉としてユニバースで特売日に一〇〇g98円で売られるのが関の山だろうけどな。<o:p></o:p>

内間木王 それが、俺の一生か。<o:p></o:p>

サイクロン そうなのかもな。<o:p></o:p>

内間木王 俺は次も勝つべきだろうか。<o:p></o:p>

サイクロン 次があったらな。<o:p></o:p>

内間木王 勝ったらどうなる。<o:p></o:p>

サイクロン 勝ったら相手がほふられる。<o:p></o:p>

内間木王 だったら、俺は勝てない。<o:p></o:p>

サイクロン それじゃぁ、お前がほふられるだけだ。<o:p></o:p>

内間木王 俺はどうすればいいんだ。<o:p></o:p>

サイクロン 考えるな。<o:p></o:p>

内間木王 考えるな?<o:p></o:p>

サイクロン そんなんじゃ、今まで一所懸命にやって来た、大上さんが泣くな。<o:p></o:p>

内間木王 大上さん?。<o:p></o:p>

サイクロン 栗木の奥さんも泣くな。<o:p></o:p>

内間木王 ……。<o:p></o:p>

サイクロン もちろん、栗木さんも泣くな。<o:p></o:p>

内間木王 栗木さんは、泣かせるわけにはいかねぇ。<o:p></o:p>

 内間木王、渾身の押し。徐々に、サイクロンが押される。<o:p></o:p>

サイクロン そうじゃなきゃ。<o:p></o:p>

内間木王 そうだ、そうなんだ。俺は、栗木さんのために闘っているんだ。俺が、どうなろうと関係はねぇ。栗木さんが、栗木さんが喜んでくれれば、それだけで、俺が生きている価値があるんだ!。<o:p></o:p>

 サイクロンの息があがってきた。両者、両手でもう一度押し合う。<o:p></o:p>

サイクロン そうだ。<o:p></o:p>

内間木王 今の、一瞬を精一杯生きる。どうせ、死ぬ時は死ぬんだ。どう死ぬか考えたって意味がない。今をどう生きるかだ。<o:p></o:p>

 両者ぱっと離れる。<o:p></o:p>

サイクロン 十七年生きてきて、わしがたどり着いた結論と同じだな。<o:p></o:p>

内間木王 ………。<o:p></o:p>

サイクロン お前も、そこまで来たな。<o:p></o:p>

 疲労したサイクロンの足が一瞬もたついた。そのすきを突いて、内間木王は、わき腹をつきあげる。<o:p></o:p>

サイクロン 次も。精一杯やれ。<o:p></o:p>

 勝負はあった。両者、勢子に綱を引かれて、頭を離す。<o:p></o:p>

サイクロン 本気でやってくれてありがとよ。<o:p></o:p>

内間木王  ……。<o:p></o:p>

サイクロン ここまで来たんだ。最後の試合も、きっちり、自分なりのけじめをつけるんだな。<o:p></o:p>

内間木王  サイクロンさん。<o:p></o:p>

サイクロン 俺は、楽しかったよ。<o:p></o:p>

内間木王  ……。<o:p></o:p>

サイクロン 俺がここまでがんばれたのは、お前が居たからだ。<o:p></o:p>

内間木王  ……。<o:p></o:p>

サイクロン 充実した、一生だった。内間木、ありがとうよ。<o:p></o:p>

内間木王  そんなこと言わないでくださいよ。<o:p></o:p>

サイクロン 本当の気持ちだ。<o:p></o:p>

内間木王  勝った俺の方がカッコ悪いじゃないですか。<o:p></o:p>

サイクロン 今のお前は、カッコイイ。<o:p></o:p>

内間木王  また、そんなこと言ってずるいですよ。<o:p></o:p>

サイクロン お前は、カッコイイ…。<o:p></o:p>

 サイクロン、その場にどうっと倒れ込む。<o:p></o:p>

 歓声に包まれ、2頭のモノローグから、闘牛大会の世界に戻る。<o:p></o:p>

江根知  サイクロン倒れた。もう、精も魂も尽き果てたか!闘牛場で倒れた牛は初めて見た!まさに、死闘の一戦!勝者は、内間木王!<o:p></o:p>

 歓声が消える。<o:p></o:p>

内間木王 サイクロンさん。最後までカッコ良すぎます。<o:p></o:p>

 再び歓声に包まれながら暗転。<o:p></o:p>

 

 第十六話 内間木王とグレートガタゴンの憂欝<o:p></o:p>

 次の試合を控えた牛つなぎ場。そこには『グレートガタゴン』が居て、側に勢子が居る。<o:p></o:p>

 

勢子 ガタゴン、ついにここまで来たね。私も精一杯やるから。横綱になるよ。<o:p></o:p>

 そこへ、車椅子の勢が現れる。<o:p></o:p>

勢子 兄さん。<o:p></o:p>

勢  勢子、良く、ここまでやってくれた。ありがとう。<o:p></o:p>

勢子 兄さん。<o:p></o:p>

勢  しかし、栗木さんも、大胆だな。俺たちのために、闘牛をここまで変えて。<o:p></o:p>

勢子 えっ。<o:p></o:p>

勢  俺たちのために、こうまでしてくれたんだ。それに酬いるためにも、最高の一戦をしなきゃな。<o:p></o:p>

勢子 …えぇ。<o:p></o:p>

 勢、ガタゴンの側に車椅子を走らせる。<o:p></o:p>

勢  ガタゴン、今日は、途中では止めないから、精一杯勝つまで闘え!お前の望みが遂に果たせるんだ。<o:p></o:p>

 勢、勢子の方を見る。<o:p></o:p>

勢  お前も、夢が果たせたんだ。ガタゴンのことを頼むぞ。<o:p></o:p>

勢子 ……うん。<o:p></o:p>

勢  行け!<o:p></o:p>

 ガタゴンのモノローグ。<o:p></o:p>

ガタゴン 御嬢さん。いさおさん。二人のためにもきっと勝ちます。横綱の称号を、お二人のところへ届けます。きっと、きっと…。<o:p></o:p>

 転  換<o:p></o:p>

 

 場面は再び闘牛場に変わる。<o:p></o:p>