R45演劇海道

文化の力で岩手沿岸の復興を願う。
演劇で国道45号線沿いの各街をつないでいきたいという願いを込めたブログ。

内間木モグラーズ④

2008-08-31 19:57:08 | インポート

その4 慶美院大学穴口准教授

スバル ぎょぇっ。

ナオ びっくりするなぁもう。

長内 穴口先生じゃないですか。こんなところで何をしているんです。

穴口 き、君は…。誰だっけ。

長内 先日、洞窟案内人の講習会でお世話になった、長内と申します。

穴口 失敬失敬。キクガシラコウモリの個体ならそれぞれ識別できるんだけれども、ちょっと人間の識別は苦手でね。

長内 今日は、子どもたちをつれて、その成果を試してみようと。

スバル 俺たち実験台。

ナオ 人体実験だ。

長内 うるさい。先生は、今日は何かの調査ですか。

穴口 えぇ、まぁ、定期的に行っている学術調査の15日目で…。あぁぁっ、そこぉ!!!

アキ はいっ。

 穴口に指差された場所から、あわてて足を引っ込める。

穴口 そこは、貴重な鉱石タラナカイト!めったなことでは、ふんではいけない。あぁぁ、

それに靴は泥だらけじゃぁないですか。雑草の種とか持ち込んだりしたら、ここだけの貴

重種が絶滅してしまう可能性だってあるんですよ。あぁっ。そして、こっちぃ!!

スバル はいっ。

穴口 いま、踏みましたね。

スバル 何をでしょう。

穴口 君の足の下には、キタカミホラツチカニムシの個体が数ひき…。あぁぁ。ここ一週間、彼らの行動を見続けてきたのに…。  

長内 すみませんでした。

穴口 仕方がないですよ。素人なんだから。

 穴口、長内を端に連れていく。

穴口 こないだの講座で重要なことをたくさん話したよね。どれも守れていなんですけど。

長内 すみません。でも、子どもたちに貴重な体験をさせたくて。

穴口 たぁしかに悪いことではないですね。でもですね、子どもたちのため、子どもたちのためと言って、社会的なモラルを守らないそんな先生が非常に増えている。いや、失敬。先生といっても、あなたは学童クラブの指導員のようだから、そこまで求める気はないんですけどね。でもね…、

 リックン壁に登ろうとする。

穴口 そこのきみぃぃぃぃっ。

リックン はいっ。

 リックン。その場に気を付けをして立つ。

穴口 頼むから、スパイクシューズで、貴重なセピオライトを削り取ってしまうのだけはやめてもらえないかなぁ。その靴、もしかして、スパイクピンをしまえるタイプかな。もし、そうできるんだったら、ピンをしまって、やさしく歩いてもらえるとうれしいなぁ。

 スバル、穴をほじくろうとしている。

穴口 そして、そこのきみぃぃぃぃっ。

スバル は、はいっ。

穴口 いいところに目をつけたね。その穴こそは、キクガシラコウモリが隠れている穴だ。

スバル 本当ですか。

 もう一度、手を突っ込もうとする。

穴口 だ・か・ら。野生のコウモリはそっとしておいてもらわないといけませんね。君たちは年端も行かない子どもたちだから、優しく話すようにしているんだけど、それ以上しちゃいけないことのオンパレードを繰り広げたら、先生もちょっと人間代わっちゃうかもしれないよぉ。

スバル わかりました。気をつけます。


内間木モグラーズ③

2008-08-30 00:01:26 | インポート

その3 内間木洞探検学童クラブ  

 そこへ、数人の子どもたちが、洞窟に入ってくる。

ナオ うおおっ。洞窟だ洞窟だ。

スバ 案外、広い。

アキ ここ、もぐらが掘ったの?

リック そんなわけないだろう。

ナオ 地底人が掘ったんだ。

アキ 地底人って本当にいたんだ。

スバ 本気にしちゃった。

アキ うそなの。こらぁ、だましやがって!

父 あれ、親子水入らず洞窟探検のはずなのに。

姉 父さんの計画、ことごとくしくじってます。

弟 とほほ。

父 それ、父さんのセリフ。君たち、勝手に入ってきちゃぁダメじゃないか。

ナオ 僕たちを連れてきた、学童の先生が入っていいっていうカードをもってるって。

スバル そう、昨日、案内人の免許証を見せびらかしてたよ。

アキ 静まれ静まれ、この証明書が目に入らぬか…。って。

母 誰かと同じリアクションね。

姉 そのリアクションまで、講座で習ってきたんじゃないでしょうね。

父 ぎくっ。

母 先輩インストラクターのパクリね。

姉 ギャグまで地に落ちた。

母 最初からよ。

姉 そうね。

  父、肩を落とす。

弟 父さん。僕がついているから。がんばれ。

父 ありがとう。

弟 奥のほうに行ってみようよ。

父 あぁ。こっち行ってみるぞ。

姉 何、階段有って、面白そうじゃないの。母さん行こう。

母 はい、はい。

弟 ちょっと、姉ちゃんも乗ってきたよ。チャンスだお父さん。

父 よし、がんばるぞ。

 家族、連れ立って奥の北の部屋へ向かう。 そこへ、学童の子どもたちに後れをとった長内先生とキョウちゃんが入ってくる。

長内 みんな待ちなさいよ。私より先に行っちゃだめです。まだ、洞窟探検の注意を話してな  いでしょう。

ナオ へいへい。

スバル でも、先生。マニュアルのページ、そっち見たりこっち見たりで、洞窟の入り口に一時間もいるんだもん。

ナオ 僕たちの青春を誰も止められはしない。

アキ かっこぃぃ。しびれるぅ。

 キョウちゃん。先生の後ろにしがみつく。

キョウ 怖い。

リック 洞窟は怖いですよ。

キョウ 何かいます。

長内 何かって。

ナオ コウモリとかリック 熊とか…

キョウ そんなんじゃなくて、よくわからないけれども感じるの。

ナオ 地底人とか。

アキ やっぱり、地底人っていたんだ。

スバ ほら、なんだかんだ言って、地底人のこと、信じてるよ。

キョウ なんだかさみしいような、くやしいようなそんな感じ…。

ナオ また、始まった。俺の後におばあさんがいて、守ってるとか言う話だろう。

スバル そのおばあさんが守ってくれたおかげで、車にひかれなくてすんだって話だろう。

ナオ そんなばあさんなら、何人いてくれてもいいよ。な。

キョウ あれから、あなたの後ろには、もう誰もいなくなっているから、気をつけてね。

スバル 守護霊使い果たしたか。

ナオ そういわれたほうが、こええよ。

長内 ちょっと、こっちのあきらめのホールっていう方に行ってみない。

スバル あきらめたくない。

キョウ ここより、奥の方が怖くない感じがする。

アキ それっておかしいよ。

キョウ どうして。

リックン 奥の方が怖いに決まっているじゃないか。

キョウ 私は、怖くないんだから。

スバル 女は良くわからないなぁ。

 長内先生に連れられて、子どもたちは舞台上手奥のあきらめのホールに向かって去る。 舞台に誰もいなくなると、舞台中央の入り口の戸が静かに開く。 一人の女性が戸の隙間から、中を覗き込む。あまり、大きくない声で、ひとりごとのように話し始める。

市職員 もしもぉし。誰もいませんか。いやなんだよね、こういう暗くて狭いところ…。今日は、誰も入洞していないはずですよねぇ。どうして、戸が開いてるんですか?誰もいませんよね。閉めますよ。鍵もかけますよ。誰かいたら返事をしてくださぁい。 返事はありませんねぇ。閉めますよぉ。

 市職員、逃げるように洞窟から出て行く。 バタンと、戸が閉まる音。ガチャンと鍵がかかる音がする。  と、そこへ、子どもたちがもどって来る。

ナオ 本当にあきらめちゃったよ。

アキ いきどまりなんだもんなぁ。

リックン もっと先にはいけないの?

長内 水を潜っていけば行けそうね。

スバル そりゃぁ、無理だ。

ナオ 先生、今度はどこへ行くの?

長内 行きたいところを決めて。

スバル 僕たちがきめていいの?

長内 いいわよ。危ないところだったら、行けないって言うから。

アキ よっしゃぁ。

スバル 探検隊だね。

リックン いいねぇ。

ナオ じゃぁ、俺が隊長ね。

スバル 何でだよ。僕だよ。

リックン おれ、おれ。

アキ 隊長は、俺様だ!

 男の子たち4人で騒ぎ出し、どつきあい、体長の座をめぐってけんかが始まる。 スバル、大きな石のようなものにつまづいて転ぶ。すると、その石が悲鳴をあげる。

穴口 いてぇっ!

 突然、石のようなものが動き出す。


内間木モグラーズ②

2008-08-29 06:54:52 | インポート

その2 内間木洞探検ツアーの家族

 舞台がうっすらと明るくなってくる。いくつか、設置されてる蛍光灯がほのかに青白く周りを照らし出している。そこに、子どもたちの話し声が聞こえてくる。

姉 暗いね。

弟 人の血を吸うコウモリとかいそうだね。

姉 そんなこと言わないでよ。

父 怖くなんかないよ。コウモリはかわいいもんだよ。

弟 でも、夜になると、人の血を吸うんでしょう。

父 何を言うんだ。ホラー映画の観すぎだぞ。人の血を吸ったりするもんか。コウモリはな、毛むくじゃらでちっちゃくて、本当にかわいいんだぞ。

母 どうせ、ガイドブックか何かの受け売りね。

父 そんなことは無い。

弟 じゃぁ、見たことがあるんだ。

父 あぁ。もちろんだ。

弟 どこで見たの。

父 …学研の動物図鑑で…。

母 やっぱりね。

弟 動物図鑑?

父 あぁ、動物図鑑だ。

弟 鳥の図鑑じゃないの?

父 よぉーし。いいところに気がついたようだね。コウモリは何を隠そう哺乳類。胴部となんだ。だから、卵は産まないよ。赤ちゃんを産むんだ。

弟 へぇぇ。コウモリって鳥じゃないんだ。

父 そうだ、鳥じゃなんだ。動物なんだ。前足の指と指の間に膜が張ってあって、翼のようになっているんだ。勉強になったかな。わからないことがあったら、父さんにききなさい。

弟 父さんすげぇ。今日はメモとか見ていないのに、難しいこと話してる。

父 ぐきっ。

母 無垢な少年の一言が刺さりましたね。

父 そんなことでめげるような私ではない!

母 本当にここに入ってよかったの?

父 大丈夫だって。

母 教育委員会に許可を取ったりしなきゃないんじゃないの?

父 だからこそ…じゃぁん!

 父、洞窟案内人の証明書を出してみせる。

父 えぇい、下がれ下がれ、この証明書が目に入らぬか。これこそは、この内間木洞の案内をしてもよろしいですよという、市長様のお墨付きの印であるぞ。者ども頭がたかぁい。

姉 大きすぎて目の中には入りませんけど。

父 どうして、そう、冷めた言い方をするわけ。

姉 父さんは、どうしてそんなくだらないことをそれだけ熱く話せるわけ。

父 くだらないこと…。

母 どうしてそんな証明書がそんな偉いわけ。講習会に参加すれば誰でも貰えるんでしょう。

父 だいたい、お前がそんな言い方をするから、こいつも親を敬おうと言う気持ちももてないようになってしまって…。

母 えぇっ。それじゃぁ、この子達の良くないところは、全部私のせいだって言うわけですね。子どものことなんか全部私にまかせっきりで、仕事だ仕事だって言って、休みの日だってほとんどうちにいないくせに。仕事って本当なんですかね。

父 何だよ。こんなところで。

母 こんなところで…?こんなところで話を持ち出したのは、そっちの方でしょう。大体ね、男女共同参画の時代なのにね、うちのことはなぁんにもしないし。よそ様のご主人は、休日にはご飯をつくって振舞ったりしているそうよ。

父 毎朝、新聞をとっているじゃないか。

母 自分が読む新聞を取るのは、家事とは言いません。保育園児のお手伝いじゃないんですからね。もう少し、みんなの役に立つことでもしてくれたらどうなんですか。

父 自分のパンツも洗わない夫で悪うございました。

母 そう思うんなら、洗濯くらいしてくれたっていいじゃない。あぁっ。だんだん腹がたってきた。

弟 もう、やめてよ。

姉 いじめや非行の原因の8割が、夫婦喧嘩を聞くことのストレスからくるものなんだって。

母 えっ。

父 …それ、本当か?

姉 今、考えた。

母 まったく…。

父 まぁ、今日は親子水入らずで、洞窟探検を楽しみましょう。

弟 おぉ。(力なく)

父 いいねぇ。その、気合。

姉 気合、入ってないんですけど。


内間木モグラーズ①

2008-08-28 06:48:26 | 脚本

の1 逃げ延びる義経

 暗闇の中、火打石をたたく音が聞こえる。薄暗い洞窟の中の一角がぼうっと明るくなる。ここは、通称『熊の寝床』といわれる、洞窟の中でも入り口から見えにくい狭い場所だ。

 火打石で明かりを燈されたろうそくに二人の人影が浮かび上がる。

 一人は着物を着た女性、もう一人は甲冑をまとった武士である。

 

静 ここなら、追っ手のものも来ますまい。しばらくはごゆるりとお過ごしください。

義経 そうは申しても…。

二人から少々はなれたところに、二人よりも更にうっすらと大柄な男が浮かび上がる。

男はしくしくと泣いている。

義経 また 出おった。

弁慶 御曹司。そんな冷たい言い方はないではありませぬか。よよよよ。

義経 わかった。わかったから、泣かんでくれ。

弁慶 今日もご無事で何より。

義経 そなたは、今日も成仏できなんだか。

弁慶 成仏!

静  武蔵坊。おぬしは、平泉で殿の盾になって討ち死にしたのだぞ。

弁慶 また、また、そんなことを…。拙者は、倒れた覚えはござらん。

義経 立ったまま死んだんだ。

弁慶 えっ。

義経 『死してまだ、主君を守るとは天晴れ』と言えば格好もつくが、お主は自分が死んだことにも気づいておらぬだけじゃ。

弁慶 そんなご無体なことを。ほら、拙者は、このとおり元気ぴんぴんでござる。

静  足が良く見えませぬよ。

弁慶 霞目のせいじゃ。ほら、うっすらとではあるが、足の指の数も数えられる。

義経 頼む。成仏してくれ。『南無妙法蓮華経、南無妙法蓮華経…』

 弁慶、苦しみだす。

弁慶 御~曹~司~ぃぃぃぃ。それだけは~、ご勘弁を~~~。

 義経がお題目を唱えるのをやめると、弁慶は苦しみから解き放たれる。

義経 まるで悪霊のようだな。

弁慶 大事な家臣をつかまえて、悪霊よばわりされるとは、よよよよ。

静  また、泣いております。

義経 武蔵坊。お主、泣き所が多すぎだ。

弁慶 わかりました、泣きませぬ。

義経 生前は涙ひとつ流さぬ、たくましき男だったのにな。

弁慶 …生前?

静  また、泣きますよ。

義経 悪かった。泣かんでくれ。

弁慶 わかりました。泣きません。ぐす、ぐす。

静  はっ、誰か来ます。

義経 畠山の手のものかも知れぬ。灯りを消すぞ。

静  はい。

 義経、ろうそくの明かりを吹き消す。暗転


おらホール劇場ワークショップ始動!

2008-08-27 20:05:46 | インポート

 とりあえず、ゴールだけを決めて走り始めました。公演日は12月中旬です。(詳細が決定次第お知らせします。)

 8月26日(火)のワークショップは、演技の基本からスタート。集まったのはほぼ小学生(小学生8人、中学生1人、大人数名)。まるで学童クラブの指導のような状態からの始まりでしたが、言葉を相手に伝えることの重要性、パントマイムでお客さんに納得させる演技の学習をしました。

 去年まで、何がなんだかわからずに参加していた子どもたちも、今回は『台詞をどういえばいいかわかった!。でも(自分には)できねぇ!』と、自分の実力のなさを気づけるところまで成長しました。

 大人もそうなんですが、自分の良くないところに気づかない、気づこうとしない、わかっていても直そうとしない人は伸びません。彼らは、伸びる要素ふんだんです。目で、『教えてよ!』と、食いついてきました。楽しみです。

 さて、今後の予定も載せておきます。興味のある方、これからでも構いませんので、是非参加してみてください。(できれば、大人がいいな。)

 9月4日(木)18:30~ アンバーホール 演劇基礎ワークショップ(こむろ担当)

 9月10日(水)18:30~ おらホール 舞台効果ワークショップ(アクトディヴァイス)

 9月18日(木)18:30~ おらホール 舞台効果ワークショップ(アクトディヴァイス)

 脚本についても、構想ができてきたので、昨日から書き始めました。脚本も無い状態からタイトルだけ『内間木モグラーズ』と決め、4ヶ月で仕上げるという、自分への最大の負荷をかけた今回の企画、行く末をどうぞ見守っていてください。