R45演劇海道

文化の力で岩手沿岸の復興を願う。
演劇で国道45号線沿いの各街をつないでいきたいという願いを込めたブログ。

久慈高校演劇部公演『眠れる君へ』

2014-09-28 17:09:32 | インポート

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 久慈地区の高等学校総合文化祭で、久慈高等学校演劇部の公演『眠れる君へ』を観てきました。

 以前、本年4月2日に同作品の公演を見たのですが、今回の舞台は良い意味で全く別物の作品となっていました。

 4月の公演の際には、才能あふれる作者の南朗子さんの世界に、表現がついていけていない感じがあったのですが、今回は、役者の表現力がこの物語を演じきれるところまで伸びていました。さらには、部員全体で世界観をきちんと把握し、その世界観を表現でできる音響・照明・舞台美術のスキルが格段にあがっていました。

 総合的な力量が向上し、見事に調和のとれた圧巻の舞台として蘇っていたのです。

 

 この作品であれば、県でも戦えるでしょう。

 久慈地区からまた一つ新しい文化の風が吹き始めたといっても過言ではないでしょう。

 10月17日(金)~19日(日)に、北上のさくらホールで行われるで岩手県高等学校演劇発表大会では、上位入賞を目指し、東北大会への進出を決めて欲しいと願っています。

 久慈地区の演劇関係者は全力で久慈高校演劇部を応援していきましょう。 

 


海女照(AMATERASU)Vol.16

2014-09-26 21:09:55 | インポート

最 終 景 真実の群唱

 会場にとぼとぼと風呂敷包みに荷物を背負って、山を去る獣神たちがやってくる。

オオカミ 奴らの策略だったとは。

イノシシ 親方、仕方ありませんよ。

イタチ  身を呈(てい)して我が子たちの未来を守るとは。

オオカミ 俺たちの未来は消え去ったがな。

タヌキ  母の愛は強しですね。

 海神たちが、海から顔を出す。

ナカツ  おおい。

ソコツ  どこ行くんだ。

オオカミ これで、一族の再興は潰(つい)えた。我らが生き延びる土地を探して旅   

    に出るよ。

アジガミ 行くあてはあるのか? 

オオカミ 劇団四季のオーディションを受けて、ライオンキングへの出演をねらう

    よ。

イタチ  動物の動きをさせたら、リアリティは半端ないですからね。

ソコツ  アフリカにはタヌキやイノシシはいないよ。

イノシシ あちゃぁ。

タヌキ  親方、劇団作って日本の動物のミュージカルやるってのはどうですか、タ

    イトルは、えっと『タヌキング』!

イノシシ タヌキが主役かい!

タヌキ  良いと思うんだけどな。

オオカミ あんたらはどうする。

アジガミ 来年オープンする『もぐらんぴあ』で使ってもらうかな。

ナカツ  ぬめりすぎる海女なんてどうですかね。

ソコツ  良いですね。

オオカミ …せいぜいがんばってくれよな。

アジカミ お互いにな。

 獣神たち、会場から去る。海神たち、海の中に消える。

 浜にウミネコの声が響く。波の音も聞こえ始める。

 日差しは、水平線すれすれの低い位置から当り始める。次第に浜の市日の風景になり始める。

 三々五々、市の人々や浜の人々が集まり、店を出し始めたり、網を直したりし始める。

  今日も、彼らの日常が始まろうとしている。

チカ さかないらんかぁ。今日は、ニシンが入ってるよ。

ハマギク 花、いらんかぁ。仏壇の花は枯れてないかぁ。

 海女たちが現れる。

波 ちかさぁん!

浜子 ウニ捕って来たよ。

 そこに、海治郎が現れる。

海治郎 おう、俺が買ってやるから、直接俺に売れ。

磯愛 いくらで買ってくれるんですか。

海治郎 もちろん

浪子  もちろん

海治郎 これくれぇ。

 海治郎、指を立てて金額を示す。

凪沙  おっ。良いねぇ

海治郎 この金額には、俺とちょっと遊んでくれるっていう分も入ってだけど…。

 磯、裏のある笑顔で現れる。

磯   何をして遊ぶつもりなんだい。

海治郎 えっ。な、何も。

 海治郎小さくなる。

海尊と、浜の男たちが話し始める。

礁三郎 長老、次の漁はどんな感じと出ている。

海尊  豊漁と出ておる。心配はいらん。

洋太郎 俺の船も修理できたし、今度の漁では、がんがん捕るぞ。

漁夫  俺の船が、俺の船がって泣いていたくせに。

礁三郎 船がほとんど無傷だったら、元気になりやがった。

碇   それは、それで良いじゃねぇか。

銛之助 活気が有って、元気な事は何よりだ。

 磯愛、突然何かに気がつく。

磯愛 あれ、誰かいないよ。

波  誰かって誰よ。

礁三郎 そう、誰かが居ない。

洋太郎 誰たちかが居ない。

磯   大切な、誰かのような気がする。

碇   大切な何か?

海尊  大切なものは、全て山や海の自然の中に溶けている。お前たちの周りは、大

   切な何かで満ち溢れているのだ。

漁夫  そう、大切なものは誰も忘れない。

海治郎 ちゃんと、そこにあるから。

 浜の人たちは、微かにほほ笑みながら、また日常の生活に戻り始める。

 物語の終演の様相を醸し出し始めた時、彼らは突然に自分の偽りの仮面を脱ぎ払い、自分を嘲笑する真実の顔をさらけ出し、語り始める。

《群唱》

正しいものとは一体何だ。

  自分が信じてるものが正しいのか。

 真実とは何だ。

 お前は

  上辺だけの真実で塗り固められた抜け殻にしがみついて生きてはいないか

 

へどが出る

  ウソで塗り固められて

 愛想笑いをする

  あいつ

  おまえ

  あんた

  そして

  俺

  私 

そんな奴らもにも

  朝は来る

  空と海との境から、そんな俺たちにも新しいおひさんが祝福を与えてくれる。

  嘘つきでも

  偽善者でも

  盗人でも

  詐欺師でも

  とりあえず

  おはよう

 

どんな奴らにでも

  朝は来る

  嘘で塗り固められた

  重い天の岩戸を開け放ち

  みんな同じに朝が来る

  どんな俺たちにも

  天照らせ!

水平線の奥から一筋の光明が放たれる。

 シルエットで浜の人々が浮かび上がる。

 その中に、オジョウコと磯治の影は無い。


海女照(AMATERASU)Vol.15

2014-09-24 21:53:26 | インポート

 第 壱拾弐 景 浜の決戦

 

 鬨の声にかぶせるように、闘いの予感を感じさせる不安な音楽が流れてくる。

 人々の鬨の声は次第に音楽にかき消され、舞台にたどり着く時には、恐ろしさに声も出ない浜の住人に戻っている。

 客席に広がっていた人々が、舞台に集結する時には、舞台は浜の風景へと変貌している。

 浜の山側には山のもので装飾され、オジョウコの母親が張りつけられた十字架がゆっくりと、立ち上がってくる。

 また、海側にも海のもので装飾された十字架がゆっくりと立ちあげられてゆく。そこには、磯治の母が張りつけられている。

 山側の十字架の周りには獣神たちが陣取る。周りには赤い旗が立ちあがる。

 海側の十字架の周りには海神たちが陣取る。周りには白い旗が立ち上がる。

 怯えた浜の住民は舞台前方中央に固まるように身を寄せる。

 舞台下手中央にはオジョウコが立つ。

 舞台上手中央には磯治が立つ。

オジョウコ お母さん?

磯治 母さん。

 ソコツ、オジョウコのところに海族風の刀剣を持ってゆく。

 イノシシ、磯治のところに日本刀を持ってゆく。

アジカミ ジョウコ、それでウワツの母を切れ。

オオカミ サカナ、それでオジョウコの母を切れ。

ソコツ  ウワツ兄よ、母さんを殺されたくなければ、こっちへ来なよ。

イノシシ ジョウコよ、母さんは大事だろう。こっちへ来なよ。

 オジョウコ、磯治、それぞれ笑みを浮かべながら、刀を受け取り、オジョウコは海の神の傍に、磯治は山の神の傍にゆっくりと歩み寄る。

 不安げな浜の人々。

漁夫 磯治、お前まさか本気じゃ無いだろうな。

凪沙 オジョウコ、あなたはそんなことをする子じゃないよね。

 オジョウコ、磯治は、それぞれの母に向かって、刀を大上段に振りかざす。

オジョウコ・磯治 今こそ、憎しみと悲しみの輪廻を解き放つ時、いざ!

 浜の人たち、顔を覆う。

 しかし、オジョウコと磯治が断ち切ったのは、それぞれの母が十字架に繋がれていた鎖だけである。

 オジョウコ、磯治は刀を振り回し、海・山の者たちを遠ざけると、それぞれの母を解放し、浜の人たちのもとへと、連れてゆく。

海女神 どこへ?

オジョウコ 浜の人たちのもとへ逃げます。

狐神  浜の人たちのところへ行ってはいけない。

磯治  どうして。

海女神・狐神 そこには、お前の母はいるか?

オジョウコ・磯治 えっ?

 オオカミ、アジガミ体制を立て直して浜の風景を見やる。

オオカミ くそぉ図ったな!(にやりとした表情)…と、言いたいところだが、

アジガミ・オオカミ 『海の母と山の母が交わりし時、緑青の渦が巻き起こり、全て    

    を飲み込むであろう。』

アジガミ 交わってはいけない者たちを近づければ、災いが生じるのだ!

 地鳴りがする。

 浜の人たちが、何かに取りつかれたように列をなして上手と下手に去ってゆく。

 舞台中央には、オジョウコと磯治、そして狐神、海女神だけが取り残される。

 時を置かず、四人を取り囲むように、青の渦と緑の渦に変貌した浜の人たちが、少しずつ現れる。

アジガミ 世界は相反する二つの側面を持ち合わせる。守るべきものを包み込む側面

    と!

オオカミ 守るべきもののために修羅に変貌する側面!

アジガミ・オオカミ 味方だと思っていた人間の想いの波に飲まれて息絶えるがよ

    い。

 『緑青の渦』に飲み込まれながら、狐神はオジョウコのところへ、海女神は磯治のところへ近づく。

狐神 大きくなったね。その姿を見ることができただけで、思い残すことは無いよ。

オジョウコ お母さん。

海女神 さぁ、私たちの時代は終わる。ここから、新しい時代はあなたたちが切り開

   いてゆくのよ。

磯治  母さん。

 狐神・海女神、それぞれの子にほほ笑みを残しながら、オジョウコと磯治が持っている刀を奪う。

狐神  一族の再興には私たちの存在は必要不可欠。

海女神 だからこそ、私たちは殺されず捕えられていた。

狐神  私たちが相まみえ、緑青の場をつくり出すために、

海女神 そして

狐神  そして

海女神 あなたに(オジョウコに向かって)

狐神  あなたに(磯治に向かって)

狐神・海女神 真実を語り、解き放つために、私たちはこの状況が起きるよう、二人

   を導き出した。

 狐神・海女神、刀を振りかざす。

狐神・海女神 私たちがここで滅びれば、獣神・海神の野望も潰(つい)える。

狐神 ここでまた、人を殺(あや)めれば、憎しみと悲しみの輪廻は繰り返される。

海女神 誰かが犠牲になって、この輪廻を断ち切らなければなりません。

狐神・海女神 私たちが、その輪廻を断ち切ることができれば、この世に生を受けた

   意味が有ると思います。

オジョウコ お母さん何を!

磯治  母さん!

 満面の笑みを湛えながら、二人は磯治とオジョウコに語りかける。

狐神・海女神 憎しみと悲しみの輪廻は痛みや悲しみ無しに解き放たれることは有りません。強く、強く生きるのですよ。

オジョウコ お母さん!

磯治  母さん!

 狐神と海女神の二人は、交錯するように舞台中央で刺し違える。

オジョウコ 私が望んでいた結末は。

磯治 俺が望んでいた結末は、

オジョウコ・磯治 こんな結末じゃ無かった!

 緑青の渦はその激しさを一段と強くし、狐神と海女神を飲み込んでしまう。

 二人を飲み込んだ後は、潮が引くように、少しずつ舞台から消えてゆく。

 後には骨のかけらも残っていない。

 崩れ落ちる獣神と海神たち。

 渦が消え去った中心には、オジョウコと磯治だけが取り残されてうずくまっている。

 二人はただただ、悲しみに打ちひしがれている。

 暗  転


海女照(AMATERASU)Vol.14

2014-09-23 23:09:16 | インポート

第 壱拾壱 景 深海・深山での画策

 舞台下手には、深海の世界。アジガミを中心にナカツ、ソコツが脇を固め、その前にオジョウコが居る。

アジガミ それじゃぁ、今回のはウワツをおびき出すための芝居だったっていうわけ

    か。

オジョウコ そう。

ナカツ なかなかの策士ですな。

ソコツ おいらでもなかなか思いつかない策ですね。

ナカツ お前は無理だろう。

アジガミ 何のためだ。

オジョウコ 山・人・海の三世界の統一と平和を願うアジガミ様の想いを実現するた

    めです。

アジガミ わしの想いを受け止めてくれていたということか。

オジョウコ はい。

 舞台上手(深山)に転換

 舞台上手には、深山の獣の世界。オオカミが鎮座する脇にイノシシ、タヌキ、イタチが居る。

 その前にひざまずくように磯治が居る。

オオカミ それじゃぁ、今回は、キツネを捕えるための罠だったっていうわけだ。

磯治 そうだ。

イノシシ 本当?

タヌキ  うそ、うそ。

イタチ  信用できないわね。

磯治 世界は一つにならなければならない。それこそが争いの無い世界を作る大元と 

  なる。

オオカミ 俺の気持ちがわかってくれててるんじゃないか。

磯治 もちろんだ。

オオカミ よしわかった。結論はすぐ出す。待っていろ。

磯治 よろしく頼む。

 舞台下手(深海)に転換

アジカミ で、我々が捕えている母親を餌に、奴をおびき寄せる作戦をとるというの

   だな。

オジョウコ そうです。

ナカツ  そんなんで、来るかな。

ソコツ  来るよ。

オジョウコ そのために、今まで生かして来たんだろう。

アジカミ まぁ、そうだ。

オジョウコ 今こそ、使い時じゃないですか。

アジカミ わかった、下がれ。

オジョウコ はい。良い返事を…。

 舞台上手(深山)に転換

オオカミ 面白い。やってみようじゃないか。

イノシシ 大丈夫なんですか。

オオカミ 裏が有ったとしても、そこに乗ってこちらの良いように持って行く。任せ

    ろ。

タヌキ  まぁ、『任せろ』なんて台詞を言うなんて。初めてカッコイイと思いまし

    た。

イタチ  初めてね。

 舞台下手(深海)に転換

アジカミ 大方、奴ら二人で考えた浅知恵だろう。隙をみて、それぞれの母親を助け

    ようといった程度の企みだ。

ナカツ  親分はそこまでわかっていて…。

ソコツ  さすが親分。

アジカミ 両者がひとところに集結した時、全てを我等のものとする。わかったな。

ナカツ・ソコツ はい。

 深海、深山、両場面に明り。

オオカミ・アジカミ 遂に我等の時代が来る。決戦の時だ!

深山・深海の住人 応!

 深山、深海の住人は勝鬨(かちどき)をあげる。

 と、同時に、客席を囲むように配置していた人々(出演者)たちからも、鬨の声があがる。

 人々は何かに取りつかれたように、鬨の声をあげながら舞台へと静かに向かう。

 


親子恋行(デート)2014 所感

2014-09-21 08:35:06 | インポート

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 『親子恋行2014』。素直に、面白かった!(作者のくせに…)

 作家が、舞台を見る感覚は、原作を読んでいて映画を観る感覚とほぼ一緒です。特に、記憶力の弱い私にとっては、ラストをどう描いたか忘れていたりするので、とても新鮮に観ることができるのです。

 

 泣かせる芝居を書いて、お客さま方が目を真っ赤にして鼻を啜りながら帰っていただくことができれば、自己満足を越えたものを書くことができたかなと、ちょっと安心します。

 しかし、作者が一緒になって泣いてちゃぁ、いかんでしょう。…と思いつつ、作者でさえ泣かせる舞台を創りあげてくれた演出・演者・スタッフの皆さんに敬意を表し、感謝しなければならないと思いました。

 

 

 舞台をつくってくださった皆さん、ありがとうございました。 

 今回も、自分で作り上げた自分の観たい映像を具現化していただいたことに感謝します。

 今年の秋は、後3~4本も同じような状態で自分の書いた芝居を観ることができると思うと、ワクワクしています。