R45演劇海道

文化の力で岩手沿岸の復興を願う。
演劇で国道45号線沿いの各街をつないでいきたいという願いを込めたブログ。

ロケッティ ②

2009-02-26 07:44:46 | インポート

第1章 図書室 午後三時四十五分

 一冊の本を持って立ち尽くしている男に明かりが落ちる。男は、その本を朗読し始める。

男1 『舞い降りる翼の無い鳥たちよ

       お前達はどのような導きのもと

       大空をその手にすることができたのか。

       多くの人々の亡骸を踏み台にして

       一歩一歩青空に近付き

       ついには

       鳥たちをもしのぐ速さで

       いずれの国をも

       凌駕する。

       それはまさしく

    現世に降臨した

    ガルーダの如く。』

  明かりが広がると、そこは図書室の一角である。男1が難しそうな本を読んでいる脇で、男2は、椅子に座ってマンガを読んでいる。ちょっと離れたところでは、女1、女2が一冊の怪しげな本を開いている。窓際では、松葉杖をついている男が、つまらなそうに外の景色を見ている。

男2  なんだよそれは。

男1  十七世紀の前半イギリスのある詩人が書いた詩だよ。

男2  その詩が何かすごいのかよ。

男1  人類が始めて空を飛んだのは十八世紀に入ってからだぞ。それ以前に翼の無い 

   鳥、すなわちロケットの発明を予言したことになる。

男2  こじつけ、こじつけ。もっと古い神様の話にも、飛行機みたいなものが出てく 

   るじゃねぇか。

男1  確かに。インドの神話に出てくるガルーダ、 ギリシャ神話のペガサス、これ 

   らはみんな現代の飛行機の予言ともとれる。

男2  ほらね。

男1  飛びたいな。

男2  その詩を書いた人も、インドの神話を知っていたんだろ。予言何かじゃねぇ

   ょ。

男1  飛ばしてみたいな。

男2  神様の話って言うのが、そもそもが予言じみているのは、時代、時代で使えそ

   うな所が、でっかくされて使われているからだよ。予言って言えばノストラダ

   ムス。終わったね。1999年も終わったけど。ノストラダムスも終わった

   ね。2000年過ぎちゃえば、ノストラダムスも、ユリゲラーといっしょだ

   ね。知ってるユリゲラー。任天堂相手に訴訟を起こしてるんだってよ。生活に

   困ってるんだね。そりゃぁそうだろうね。あんなにスプーン曲げちゃえば、カ 

   レーも食えねぇんだもんね。

男1  青空を、俺の作ったマシンが舞飛ぶ。何とも言えぬ恍惚感。

男2 おまえさ、俺の話聞いてねぇだろ。

男1  翼を持たない飛行物体。その名も…。

男2  何だよ。俺が、一生懸命説明してやってるのによ。

男1  お前も、俺の話は聞いちゃいねぇ。

男2  あたりまえだろう。おまえのそのくだらない夢物語には付き合ってらんねぇん

」  だよ。

男1  くだらねぇって、おまえの夢も希望も節操も無い現実主義の話より、よっぽど

   未来がある話だとは思うがな。

男2  何だって。

男1  本当のことを言ったまでだよ。

男2  あぁっ、頭きた。

  男2、男1の側に近づく。今にも一触即発の様相である。おどろおどろしい曲が流れ出す。女1に明かりが落ちる。

女1  いいねぇ、男たちの熱いバトル。少年は相手の言い分に納得できず、ついには

   ポケットにしまい込んだサバイバルナイフを取り出し、さっきまで親友だと思

   っていた友人の腹部にその切っ先を突き立てる。腹を刺された少年は自分の身

   体に感じた鈍痛よりも友人のとった行動に驚愕し、自分の腹をまさぐった。手 

   にベットリとついたさっきまで自分の内部を脈々と流れていた、真っ赤な流体 

   をながめ、自然に笑いが込み上げてくる。『なんだよこれ。』少年が発した言 

   葉は、これが最期だった。   

   残された少年は、自分の取った愚かな行動に苛まれながら、残された長い人生

   を送り続けるのだ。さぁ、やりなさいよ。ナイフもってんでしょう。

男2  馬鹿かおまえ。

女1  えっ。

男2  なんで、俺がナイフ持ってて、こいつを刺さなきゃいけないんだ。

男1  えっ。俺、刺されるの。てっきり、俺の方が刺すんだと思ってた。

男2  お前の方が、刺されやすそうじゃないか。

男1  そうか?お前の方が短命って感じだぞ。チンピラ風って言うか。

男2  (むかっ。)

女1  ほぉら、試してみたくなった。早く試してみなよ。刺してみなよ。

女2  やめなよ。そんなのに絡んでどうするの。

 男1、何かに気が付いたように本を読み始める。

男2  あのさ、残念だけど、ナイフ持ってないの。

女1  なんで、ナイフ持ってないのさ。男らしくないね。男だったら、ナイフみたい

   に尖ってなきゃ。

男2  お前は、いつの時代の人間じゃ。

女1  時代は巡る。そしてまた、新しくも古風な世代がやってくる。2001年の高

   校生のファッションの主流は、足のくるぶしまである長いスカートだって知っ

   てた?

女2  えっ。本当。新しいスカート買わなきゃ。

男2  そんなの知りたくもねぇや。

女2  ねぇねぇ。こんなことしてる場合じゃないよ。スカート買いにいこうよ。

女1  この学校に2年半もいて、来年も、高校(ここ)にいるつもり。

女2  はっ。そりゃぁ、留年ってこと。そりゃぁまずい。

男2 お前、天然で有名な、A組のお嬢じゃねぇか。何でここへ来た。早く帰れよ 

   な。ベンツが迎えにくるんだろ。

女2  なによ。その言い方。頭くるわね。何でわたしが図書室に来ちゃいけないわ

   け。

男2  ここはね、本が読みたくても買えない小市民のくる所なわけ。

女2  私は、本が読みたくても読めません!なぜならば、漢字が読めないからで~

   す!

男2  そりゃ、そうだ。

女2  どひゅーっ。

女1  墓穴掘ってどうすんのよ。

男2 ここは図書室。あんたのような人がくる所じゃない。読みたい本があったら、

   本屋ごと買えば言いだろ。

女2  別に、いいじゃん。

男2  ここに何しに来たわけ。

女2  黒魔術の暗号みたいなメモで、だれかに呼び出されたのよ。悪魔が蘇って、私 

   に会いたいって言ってるのかもね。そしたら、この子がここでおもしろい本を

   見つけたのよ。偶然じゃないわよ、これは。

男2  見つけた本って、何の本だよ。

女1  1627年発行の黒魔術の本。もうちょっとで召喚できそうなの。

男2  何だこいつは。

女1  魔女狩りで殺された魔女たちの怨念が封印されている一冊よ。どうして東洋の

   こんな高校の図書室にあるのか不思議ね。ここで、封印を解けば、怨念が世界

   中に広がり、邪悪なる封印された悪魔たちが、地上を支配することになるの

   よ。この世界は、もはや私の掌の中にあるのよ。ふっふっふっふっ。

男2  怖ぇぇな。

女1  黒魔術といっても非科学的なものじゃないのよ。この本を媒体として、次元の

   歪みの定点Aと定点Bを接近させることによって、異次元の物体をこの時空に

   引き出すことが可能かもしれないのよ。だから今、その時空の歪みの定点を割

   り出す計算式を考えているところなの。

女2  ねぇ、なんだかわからないけど、面白そうでしょう。

男2  …あっ、悪い、悪い、寝ちまったよ。

女2  アクマだって、どんなアクマなのかな。茶色い毛が生えていて、毛むくじゃら  

   で、思わず抱き締めたくなるようなものかな。出て来て欲しいな 。そんな

   ア、クマ なんちゃって。

男2  げっ。頭悪そう。

女2  何ですって。

男2  本なんて全く読んだことねぇんだろ。

女2  あっ、侮辱。本ぐらい読みます。


ロケッティ ①

2009-02-26 07:26:49 | インポート

プロローグ

 舞台は真っ黒な幕で覆われている。その漆黒の中を真っ白な男女が数人、前を見据え真っすぐに歩いている。

 6人の男女が舞台上を交錯しながら通り過ぎる。そしてまた、通り過ぎ交錯し合う。6人が二度目に交錯し合う瞬間、彼らは有る決意のもと、その場で立ち止まる。

男3 人がある時間ある地点に集う

男2  それは

男1 果たして偶然の出来事だろうか。

女3 ここにこうして出会う人々がいる。

女1 ここでこうしてすれ違い立ち去る人々がいる。

女2  出会った人々が繰り広げ続ける果てしない繰り返し。

男1  こうして、人々は、時代を築いていくのだ。

6人  それは

女3 人類から見ればちっぽけな事かもしれない。

男2  それは

女1  そこに集った物たちにとっては果てしも無く深遠な出来事かもしれない。

男2 そんな

男3  大きくもあり

男2  小さくもある

女2  人類の歴史の中では秒針が一目盛り進むだけ

男2 しかし

男達  確実に未来へ一歩近付いた事を記す

6人  そんな物語が今始まる。

 黒い中幕は音楽と共に開き出す。そこには『ロケッティ』と描かれた、真っ白い幕が広がっている。彼らはその前方で、躍動感の有るダンスを繰り広げる。

  ダンス


頭の中を空っぽにできる幸せ

2009-02-24 21:08:07 | インポート

 辛いことがあると、どんなに考えまいとしても、その辛いことで頭がいっぱいになってしまう。

 苦しいことがあると、そのことだけで想いが全部埋まってしまう。

 星空を見上げ、何も考えず、その綺麗さに見とれているときが幸せ

 全てのことを忘れ、頭の中を空っぽにできるそんな時間さえあれば、明日も生きていける。

 水平線の向こう側の揺らぎ、三重に重なる雲の先…

 焦点をぼかし、何を観るともなしに、空気の碧さを味わえたら、もういちど歩き始められる。


昭和41年の受領書

2009-02-23 20:38:48 | インポート

 箪笥の中から、仕立ての良いスーツを一着見つけました。買った覚えも無く、誰かからもらったものかと思いながらも、自分にしつらえたように体にぴったりだったので何の違和感も無く着て、出張に出かけました。

 車の運転をしているときに、内ポケットに入れた手帳を取り出すと、一緒に紙切れが出てきました。

Ryousyusyo_001 信号で止ったときに良く見ると、 昭和41年10月3日付けの領収書…。その瞬間、今着ているスーツの本当の持ち主が判明し、私の意識は一瞬で40年以上前の時代に遡ってしまいました。

 スーツは昭和42年4月に30歳ちょっとで胃癌で亡くなった、私の父親のものでした。

 亡くなる半年前、たぶん最後の出張で仙台に3泊した時の受領書がそのままポケットに入っていたのでしょう。

 この受領書を見ながら、知らず知らず自分より十歳も若い父親に話しかけていました。

『一泊350円安いなぁ。今の10分の1じゃない。…おいおい、もう発病してんだろう。胃が痛かったりするんだろう。酒飲んでる場合じゃないでしょう。6歳と1歳の子もいるんだからさぁ。』

 白黒の写真でしか見たことのない、私のイメージでは芥川龍之介似の父が語りかけてきます。

『そう思うんなら。自分も同じことをするなよ。』

 40年以上経って、父の死の悲しみを初めて感じ涙してしまいました。

 私は今日、娘たちに嫌われようが何だろうが、迷惑をかけるくらい生き続けてやろうと思いました。火葬のときはちょっと泣いてもらっても構わないけれども、『やっと逝ってくれたよ。』と、残された人たちが笑顔で語り合える状態で、この世を去りたいです。

 父の形見のスーツ、これからは勝負服として愛用します。


市民劇場花盛り!

2009-02-22 21:05:39 | インポート

 連日、岩手県内の市町村民劇場の公演の予告と、結果報告の記事で岩手日報の地域面は花盛りです。しかし、いったい岩手県内で舞台に関わっている人、今まで関わったことのある人はどれくらいいるのでしょうね。いつか調べてみたいところです。

 そして、芝居をしてるといえば、岩手県内なら新しい街に行っても、芝居談義にすぐ花が咲くのです。この、岩手ならではの演劇文化をもっと大切にして、全国に発信できるものにしていきたいものですね。