R45演劇海道

文化の力で岩手沿岸の復興を願う。
演劇で国道45号線沿いの各街をつないでいきたいという願いを込めたブログ。

闘牛王の憂鬱【第8回】

2013-10-15 06:22:57 | インポート

第十三話 闘牛大会<o:p></o:p>

 江根知、会場のセンターに立ちスポットを浴び、巻き舌を交えて話し出す。<o:p></o:p>

江根知 それでは、ここで、今回の闘いを仕切る勢子たちを紹介します。<o:p></o:p>

   牛の間を八双飛び、闘牛界の牛若丸、田代奈央也(たしろなおや)!!!<o:p></o:p>

   牛を愛し、牛に愛され続ける、闘牛界至宝のダンディズム、大欅實(おおけや   きみのる)!!<o:p></o:p>

 寡黙な中に闘志を秘めている、キングオブ勢子、大上露歩(おおかみろほ)!!!<o:p></o:p>

 そして、南部闘牛界から誕生した、女性初の勢子、上舘勢子(かみだてせいこ)!!<o:p></o:p>

 紹介された勢子たち次々に現れる。<o:p></o:p>

江根知 上舘勢子!今回の場所では、ついに、ついに、女性が勢子として土俵に登場だ!南部闘牛界をいまいちどせんたくいたし申し候。新しい時代の幕開けだぜよ!<o:p></o:p>

 勢、観客席の端に陣取り、拍手を送る。<o:p></o:p>

 それにつられるように、観客はみんな立ち上がり、勢子に拍手を送る。<o:p></o:p>

江根知 この勢子たちの登場によって、闘いの場の舞台はそろった。ここで、第一回戦で闘う牛たちの登場だ!<o:p></o:p>

 回転する照明に、派手な音楽が流れてくる。<o:p></o:p>

栗木 なんだ、何だ。これは。<o:p></o:p>

小林 これは、今回の演出のポイントです。プロレスやプロ野球のような演出でやって観客の興味を引く作戦だとか。<o:p></o:p>

栗木 それで、これか。<o:p></o:p>

江根知 はい。<o:p></o:p>

栗木 闘牛の伝統がけなされるわ。<o:p></o:p>

小林 そういうリスクは当然あります。しかし、興業の面から考えると、こういった演出もありかなと思います。要は何を取るかです。人が来なくても伝統を重んじてやって行くのか、興業と割り切って、地域経済のために人が集まるイベントに作り上げて行くのか…。<o:p></o:p>

栗木 伝統を重んじながら客は呼べないのか。<o:p></o:p>

小林 無理ですね。それが成功していたら、日本中のどこの町でも、活気あるイベントが繰り広げられていることでしょう。<o:p></o:p>

栗木 そういうものなのか…。<o:p></o:p>

小林 そういうものです。<o:p></o:p>

栗木 しかし…。<o:p></o:p>

 栗木の思いとは裏腹に、会場が暗くなり色とりどりの照明が灯りだす。<o:p></o:p>

 

 第十四話 一回戦 モーレツ娘。 VS グレートガタゴン<o:p></o:p>

スクリーンには、『グレートガタゴン』の写真と名前のロゴ。『グレートガタゴン』のテーマソング、クイーンの『We will Rock You』が流れ出す。それにシンクロするかのような派手に照明が煌めき出す。<o:p></o:p>

 上手の単サスの中に、グレートガタゴンが登場する。<o:p></o:p>

 会場から、割れんばかりの声援と、指笛。割れんばかりの拍手と喝采。(これは、舞台が始まる前に前説で観客と練習をしておく)<o:p></o:p>

栗木 これが、南部闘牛か。南部の闘牛はこれでいいのか…。<o:p></o:p>

 続いて、スクリーンには『モーレツ娘。』と同時に、舞台センター奥から、アイドルユニット『モーレツ@MUSUME』が現れる。観客も大盛り上がりで総立ちになった時に、下手から『モーレツ娘。』が現れ、会場のテンションはマックス状態となる。<o:p></o:p>

『グレートガタゴン』と『モーレツ娘。』が、にらみ合って相対する。<o:p></o:p>

モーレツ も~っ。生かして返さないからねぇ。<o:p></o:p>

ガタゴン お前、雄か?<o:p></o:p>

モーレツ 雄で悪かったわね。<o:p></o:p>

ガタゴン 闘牛ってことは、雄だよな。<o:p></o:p>

モーレツ 雄も雄。雄なのに『娘。』。その狭間でもがき苦しんでいるのが、このあたし、『モーレツ娘。』なのよ!<o:p></o:p>

ガタゴン はぁ。<o:p></o:p>

モーレツ 更に、あんたたちみたいに、モノローグの台詞が今の今まで無くて、人間のアイドル『モーレツ@MUSUME。』に、おいしいところは全部持っていかれて、今、初めて、おねぇキャラだってことが発覚してるくらいなんだからね…。<o:p></o:p>

ガタゴン そんな半端な野郎は、さっさと尻尾まいて、牛舎に帰ってねんねしな。<o:p></o:p>

モーレツ その台詞、そっくりお前さんに返してやるわよ。半端もんの苦悩をぶつけてあげるわ!<o:p></o:p>

ガタゴン なかなか、いい度胸してんな。<o:p></o:p>

モーレツ かかってきなさい。あんたは、この闘牛場でねんねさせてあげるわ。<o:p></o:p>

 モーレツ、ガタゴンを挑発する。<o:p></o:p>

 ガタゴン、モーレツに突進するが、モーレツひらりとその突進をかわす。<o:p></o:p>

ガタゴン 怖気づいたか。<o:p></o:p>

モーレツ 角を突き合わせるまでも無いわ。あなたの負けよ。<o:p></o:p>

ガタゴン 何だと!!<o:p></o:p>

 その時、勢子が手綱を引く。<o:p></o:p>

勢子 落ち着きなさい。挑発は、相手の作戦よ。あなたの気性の荒さにつけこんでいるだけ。<o:p></o:p>

ガタゴン 御嬢さん。<o:p></o:p>

 ガタゴン、冷静さを取り戻す。<o:p></o:p>

ガタゴン 危なかった。もう、その手にはのらねぇぞ。<o:p></o:p>

モーレツ もう、小娘め。<o:p></o:p>

ガタゴン 俺を挑発するのは一向に構いはしない。しかし、御嬢さんを馬鹿にするのはゆるさねぇ。<o:p></o:p>

 ガタゴン、モーレツににじり寄って、両手でがっぷりと組む。<o:p></o:p>

ガタゴン 俺は、負けるわけにはいかないんだよ。<o:p></o:p>

モーレツ あたしもそうよ。負けた方はどうなるか知ってるでしょう。<o:p></o:p>

ガタゴン だから、負けるわけにはいかないんだ。<o:p></o:p>

モーレツ それはあたしも同じでしょう。<o:p></o:p>

 モーレツ、強烈にねじる。<o:p></o:p>

 ガタゴンも負けずに、モーレツのわき腹に入り込もうとする。<o:p></o:p>

田代 周り込まれるな。一気に行け。<o:p></o:p>

モーレツ そんなことはわかってるわ。<o:p></o:p>

田代 川向さんと俺はお前を、手塩にかけて育て上げたんだ。こんなところで負けさせるわけにはいかない。<o:p></o:p>

モーレツ 田代さん!<o:p></o:p>

田代 周り込まれるすきを見て、あげをねらえ!<o:p></o:p>

モーレツ 任せて!<o:p></o:p>

 モーレツとガタゴン、周り込み合い、土俵の中をぐるぐると回る。手綱を持った勢子の二人も、一緒にぐるぐると回る。<o:p></o:p>

 一旦離れた両者は、もう一度組み合い、はげしく角をぶつけ合う。<o:p></o:p>

 ゴツゴツ、ゴツゴツと、骨がぶつかり合う音がする。<o:p></o:p>

 両者が、離れた瞬間、モーレツの額がぱっくり割れ、血しぶきが飛ぶ。(口に含んだ赤い液体を噴き出す。)<o:p></o:p>

田代 モーレツ!<o:p></o:p>

モーレツ まだまだ!<o:p></o:p>

 モーレツ、もう一度ガタゴンに飛びかかろうとするが、田代が綱を引きそれを止める。川向も土俵に駆け込む。<o:p></o:p>

モーレツ 止めるなぁ!<o:p></o:p>

田代 もう良い。<o:p></o:p>

モーレツ まだまだぁ!。<o:p></o:p>

川向 …もう良い。お前は良くやった。<o:p></o:p>

モーレツ まだ…<o:p></o:p>

田代・川向 もう良い!<o:p></o:p>

モーレツ、固まって田代を見る。<o:p></o:p>

川向 ここで、お前を失うわけにはいかない。お前は、まだ先がある。<o:p></o:p>

田代 俺は、お前を潰したくはねぇ。だから…。<o:p></o:p>

モーレツ だから。<o:p></o:p>

田代 今日は、負けだ。<o:p></o:p>

モーレツ まだまだぁ!<o:p></o:p>

川向 終わりだ。<o:p></o:p>

モーレツ まだまだぁ、まだまだぁ。まだまだぁ!<o:p></o:p>

 モーレツ、叫び続ける。<o:p></o:p>

田代 相手を恐れて逃げ帰る負けじゃねぇ。次もある。今日は帰るぞ。<o:p></o:p>

 田代、川向、モーレツの背中を軽くたたく。<o:p></o:p>

モーレツ ま、だ…。<o:p></o:p>

 モーレツの体から力が抜けて行く。<o:p></o:p>

ガタゴン 次は、お前を震え上がらせて土俵から追い出してやるからな。それまで、本当の勝負はお預けだ。<o:p></o:p>

 『ガタゴン』は、悠然と土俵の周りを一周する。<o:p></o:p>

江根知 何と言う、壮絶な試合。勝ったのはガタゴンだ。しかし、一歩も引かなかったモーレツも、賞賛に値します。<o:p></o:p>

 『モーレツ@MUSUME』たちもたちあがって、鳴きながら拍手をする。<o:p></o:p>

中野 『モーレツ』がんばったよ。<o:p></o:p>

牛越 そうだね。<o:p></o:p>

牛島 もう、涙と鼻水でぐちゃぐちゃよ。<o:p></o:p>

短角 なんか…。<o:p></o:p>

南部 うん、あたしたち、まだまだ甘かったね。<o:p></o:p>

塩戸 モーレツくらい、本気で勝負しなきゃ。<o:p></o:p>

南部ママ あいつと、あんたたちと、お互い刺激し合って、大きくなりましょうね。<o:p></o:p>

@MUSUME はいっ。<o:p></o:p>

 会場から、割れんばかりの拍手が起こる。拍手は、勝者のガタゴンにだけではない。後ろ髪を引かれるように、土俵を後にする『モーレツ娘。』にもだ。<o:p></o:p>

江根知 続いて、長い間南部闘牛を支えてきた、貫禄のサイクロンと、現・暫定横綱の内間木王の一戦だ。<o:p></o:p>

 


闘牛王の憂鬱【第7回】

2013-10-14 00:02:02 | インポート

第十話 闘牛王の憂欝<o:p></o:p>

内間木王の牛舎。栗木が、新聞を広げて記事を読んでいる。<o:p></o:p>

 そこへ、大上が現れる<o:p></o:p>

大上 栗木さん。<o:p></o:p>

栗木 おぅ。来たか。<o:p></o:p>

大上 いよいよ、決まりましたね。<o:p></o:p>

栗木 あぁ。<o:p></o:p>

大上 後悔はしていませんよね。<o:p></o:p>

栗木 あぁ。内間木の最後の一番だ。思い切り闘わせてくれ。<o:p></o:p>

大上 わかりました。対戦相手は…。<o:p></o:p>

栗木 サイクロンだ。<o:p></o:p>

大上 …サイクロン。<o:p></o:p>

栗木 そうだ。<o:p></o:p>

大上 よりによってサイクロンですか。<o:p></o:p>

木 サイクロンも今回が最後だろう。<o:p></o:p>

大上 こいつも、憧れて目指し続け、なおかつ現役を続けているサイクロンとこの場所で対戦できることは本望だと思っていることでしょう。<o:p></o:p>

栗木 そうであることを願ってる。<o:p></o:p>

大上 栗木さん。闘牛、これでいいんですか。<o:p></o:p>

栗木 わからねぇ。<o:p></o:p>

大上 おれは、女が勢子になるのは賛成だ。だけど、勝負をつけさせるのは…。<o:p></o:p>

栗木 反対のことを思っている奴もいる。<o:p></o:p>

大上 反対。<o:p></o:p>

栗木 南の地区との交流を考えれば、勝負をつけさせるのいたしかたないが、女が土俵入るのだけはと、言う人たちもいる。<o:p></o:p>

大上 そうなんですか。<o:p></o:p>

栗木 だから、俺も答えが出せていない。出せていないまま、ずるずると周りに引きずられるように今になってしまっている。<o:p></o:p>

大上 ……。<o:p></o:p>

栗木 俺は弱い男だ。内間木王みたいに強くは無い。<o:p></o:p>

大上 栗木さん。<o:p></o:p>

栗木 すまないが、この結論は、お前の試合を見て決めさせてもらう。全てをお前に託してしまう、弱い牛主ですまない。<o:p></o:p>

 栗木、大上、内間木王の背を撫で去ってゆく。<o:p></o:p>

内間木王 相手は、サイクロンさんか…。どうしても闘わなければならないんだろうか。いや、いや、そんな弱気でどうする。そんな気持ちでリングに入ったら、サイクロンさんにも申し訳ない。栗木さん、俺は全てを忘れて、とにかく闘います。それが、貴方の望みなのですから…。それで、答えを出してください。それが、俺が生きる道なのでしょうから…。<o:p></o:p>

 中居梅子さん現れる。<o:p></o:p>

梅ちゃん ここで、おしっこしたい人のために、15分間のお休みに入ります。この後も、お楽しみに。<o:p></o:p>

 転  換<o:p></o:p>

 第十一話 策 略<o:p></o:p>

 舞台が白い幕で舞台後方と前方に区切られている。<o:p></o:p>

 闘牛場の会場設営をしながら、田子内、大畑、小林、野田が話し出す。<o:p></o:p>

田子内 すみません。うしこ先生のぶっこみ失敗しましたね。<o:p></o:p>

小林 間違ってはいない。計算通りだ。よくやった。<o:p></o:p>

田子内 どういうことですか。<o:p></o:p>

小林 記者会見は行った。うしこうしおの関係無い話に持って行ったおかげで、今回の闘牛が伝統のスタイルを変えておこなう批判に話は向かわなかった。<o:p></o:p>

大畑 会長の混乱ぶり、なかなかの名演技でしたよ。<o:p></o:p>

小林 そうか。NHKからオファーが来たら、どうすべ。<o:p></o:p>

野田 それは、出た方がいい。出演料の50パーセントは協会へ入れるとして…。<o:p></o:p>

小林 そんときは、俺は独立して芸能プロダクションを作るから、協会へは一銭も入れねぇど。<o:p></o:p>

大畑 そんな話は、まぢがっても、来ませんけどね。<o:p></o:p>

野田 そりゃ、そうだ。<o:p></o:p>

 小林、むっとする。<o:p></o:p>

小林 お客さんの入りはどうかな。<o:p></o:p>

 田子内、観客席の方を見て、野鳥の会の皆さんのように、カウンターをチャカチャカやりながら、数を数える。<o:p></o:p>

田子内 満席です。<o:p></o:p>

野田 ウハウハですな。<o:p></o:p>

大畑 ウハウハですね。<o:p></o:p>

田子内 しかし、運営には市のお金が投入されていますので、入場料が個人へ還元されることはありません。<o:p></o:p>

小林 そ、そうなの。<o:p></o:p>

田子内 しかし、当地区の経済効果を考えれば、我々への収入で無くても、問題無いじゃないですか。<o:p></o:p>

大畑 良いこと言うじゃないか。<o:p></o:p>

野田 そうだねぇ、<o:p></o:p>

小林 と、言いながら、大畑さんと野田さん。何やらニヤニヤしていますが…。<o:p></o:p>

田子内 グッズ販売については、商品開発をした商工会と、販売している道の駅にお金は落ちます。<o:p></o:p>

野田 そんなこと言わなくても、いいから…。<o:p></o:p>

小林 なぁにぃぃぃぃ。商工会と、道の駅にはお金が入るのか!<o:p></o:p>

大畑 まぁまぁ。<o:p></o:p>

小林 儲けが無いのは観光協会だけか!<o:p></o:p>

大畑 まぁまぁ。<o:p></o:p>

野田 そんな、小さなこと、気にしなさんな。<o:p></o:p>

小林 気にするぅぅぅぅ。<o:p></o:p>

田子内 今回、成功すれば、全ては小林会長の功績。後世に名が残ります。<o:p></o:p>

野田 記念碑を建てても良いな。<o:p></o:p>

大畑 会長の銅像でも良いな。<o:p></o:p>

小林 そうか。ぐ、ふふふふ。<o:p></o:p>

田子内 闘牛まつりの開始まで、後、一分を切りましたよ。<o:p></o:p>

野田 会長、口上をお一つ。<o:p></o:p>

小林 俺がか。<o:p></o:p>

大畑 そうです。どうぞ。<o:p></o:p>

 小林、もったいぶった後、咳払いを一つして話し始める。<o:p></o:p>

小林 さぁて、一か八かの大ばくち。吉と出るか凶と出るか。あたって砕ける大一番。南部闘牛、史上最大の頂上決戦場所、間もなく開演です!<o:p></o:p>

 小林たち、左右に分かれて退場する。<o:p></o:p>

 白斜幕に、『南部闘牛まつり 史上最大の頂上決戦場所 本当の横綱はどの牛だ!』と、映し出される。<o:p></o:p>

第十二話 闘牛大会オープニングセレモニー<o:p></o:p>

 幕が上がると、そこは、『闘牛場』。 会場には、関係者が数多く集まっている。<o:p></o:p>

 司会を務める江根知が、大きな蝶ネクタイをして現れる。一旦退場した小林たちは、用意された主催者席に着く。しかし、そのやり取りは、日本人らしく、高い席を譲り合ってなかなか座ろうとしない。そんな中、江根知がマイクをもって話し始める。 <o:p></o:p>

江根知 それでは、『南部闘牛まつり 史上最大の頂上決戦場所 本当の横綱はどの牛だ!』を開幕いたします。司会は、北三陸テレビの福士蒼汰こと、江根知圭です。<o:p></o:p>

大畑 福士そうた…って誰だ。<o:p></o:p>

田子内 いま、売り出し中のイケメン俳優ですよ。<o:p></o:p>

野田 イケメン?<o:p></o:p>

田子内 あぁ、あまちゃんの種市先輩ですよ。<o:p></o:p>

大畑 あぁ、種市先輩ね…。ずぶんね。<o:p></o:p>

 みんな、江根知をじっと見る。<o:p></o:p>

大畑・野田・小林 そりゃないねぇ。<o:p></o:p>

 会場、静まり返る。江根知、取り繕うように話を続ける。<o:p></o:p>

江根知 開会に先立ちまして、本大会開催にご尽力いただきました、南部闘牛観光協会の会長の挨拶を…。<o:p></o:p>

 小林、席を立ち懐からあいさつ原稿を取り出そうとする。<o:p></o:p>

江根知 …という、形式的なスタイルは、今回は無しにして、テレビ的に、オープニングは南部闘牛観光が誇る、スーパーアイドルユニット、『モーレツ@MUSUME』の『私の彼は南部牛』からスタートです。どうぞ!<o:p></o:p>

 小林、がっくりとひざを折り、自分の席に戻る。<o:p></o:p>

 音楽と同時に『モーレツ@MUSUME』が、入場してくる。<o:p></o:p>

 派手なパフォーマンスで歌が始まる。<o:p></o:p>

『私の彼は、南部牛~それじゃぁソルジャー ファイティングブル~<o:p></o:p>

恋をしてるのダーリン<o:p></o:p>

人じゃないけどダーリン<o:p></o:p>

闘う姿は、小さな私の胸(ハート)を、わしづかみ<o:p></o:p>

艶がいいのよダーリン<o:p></o:p>

栗毛色なのダーリン<o:p></o:p>

一目見たその瞬間から<o:p></o:p>

私のハートはズキュンドッキュン!<o:p></o:p>

あなたのその鼻息<o:p></o:p>

筋肉質なひれ肉<o:p></o:p>

充血した瞳<o:p></o:p>

その全てが、私のハートにロックオン<o:p></o:p>

 

あげ おし ねじり はらき いない込み<o:p></o:p>

もたし ほじり あげもどし<o:p></o:p>

これぞ べごの角つき 基本技<o:p></o:p>

 <o:p></o:p>

あげ おし ねじり はらき いない込み<o:p></o:p>

もたし ほじり あげもどし<o:p></o:p>

今日の 決め手は 必殺技よ<o:p></o:p>

血走りウインク!<o:p></o:p>

私の彼は南部牛!<o:p></o:p>

鼻とりしたいのダーリン<o:p></o:p>

素手でやらせてダーリン<o:p></o:p>

興奮したあなたをなだめすかせる<o:p></o:p>

テクニック<o:p></o:p>

高くとぶのよダーリン<o:p></o:p>

走り回るのダーリン<o:p></o:p>

吠える雄たけび<o:p></o:p>

めまいがするほど素敵だわ<o:p></o:p>

ちょっと短めな角<o:p></o:p>

プリリとしまったお尻<o:p></o:p>

ピンと張りだすしっぽ<o:p></o:p>

その全てが、私のハートをシューティング<o:p></o:p>

 

あげ おし ねじり はらき いない込み<o:p></o:p>

もたし ほじり あげもどし<o:p></o:p>

これぞ べごの角つき 基本技<o:p></o:p>

 

あげ おし ねじり はらき いない込み<o:p></o:p>

もたし ほじり あげもどし<o:p></o:p>

今日の 決め手は 必殺技よ<o:p></o:p>

だっふんだ!<o:p></o:p>

私の彼は南部牛!<o:p></o:p>

短角 皆さんありがとう。<o:p></o:p>

 

@MUSUME 三人そろって、南部闘牛界のアイドル、『モーレツ@MUSUME』でした!<o:p></o:p>

 『モーレツ@MUSUME』手を振り、笑顔を振りまく。<o:p></o:p>

小林  これだ。これこそが、新時代の闘牛の幕開けにふさわしい!<o:p></o:p>

江根知 そう言って頂けるとありがたいです。<o:p></o:p>

小林  一つだけ、苦言を呈すとすれば…。<o:p></o:p>

 

江根知 はい?<o:p></o:p>

小林  何も、会長の挨拶も切らなくてもいいべ。<o:p></o:p>

大畑  そこは、英断。<o:p></o:p>

野田  そうそう。良く切った。<o:p></o:p>

田子内 残念ながら私もそう思います。<o:p></o:p>

小林 お前らなぁ。<o:p></o:p>

 協会メンバーのつぶやきはさておき、大会はどんどん進んでいく。<o:p></o:p>

<o:p></o:p>

 

 第十三話 闘牛大会<o:p></o:p>

 

 江根知、会場のセンターに立ちスポットを浴び、巻き舌を交えて話し出す。<o:p></o:p>

江根知 それでは、ここで、今回の闘いを仕切る勢子たちを紹介します。<o:p></o:p>

   牛の間を八双飛び、闘牛界の牛若丸、田代奈央也(たしろなおや)!!!<o:p></o:p>

    牛を愛し、牛に愛され続ける、闘牛界至宝のダンディズム、大欅實(おおけ   

   やきみのる)!!<o:p></o:p>

 寡黙な中に闘志を秘めている、キングオブ勢子、大上露歩(おおかみろ    

    ほ)!!!<o:p></o:p>

 そして、南部闘牛界から誕生した、女性初の勢子、上舘勢子(かみだてせい  

    こ)!!<o:p></o:p>

 

 紹介された勢子たち次々に現れる。<o:p></o:p>

江根知 上舘勢子!今回の場所では、ついに、ついに、女性が勢子として土俵に登場だ!南部闘牛界をいまいちどせんたくいたし申し候。新しい時代の幕開けだぜよ!<o:p></o:p>

 勢、観客席の端に陣取り、拍手を送る。<o:p></o:p>

 それにつられるように、観客はみんな立ち上がり、勢子に拍手を送る。<o:p></o:p>

江根知 この勢子たちの登場によって、闘いの場の舞台はそろった。ここで、第一回戦で闘う牛たちの登場だ!<o:p></o:p>

 回転する照明に、派手な音楽が流れてくる。<o:p></o:p>

栗木 なんだ、何だ。これは。<o:p></o:p>

小林 これは、今回の演出のポイントです。プロレスやプロ野球のような演出でやって観客の興味を引く作戦だとか。<o:p></o:p>

栗木 それで、これか。<o:p></o:p>

江根知 はい。<o:p></o:p>

栗木 闘牛の伝統がけなされるわ。<o:p></o:p>

小林 そういうリスクは当然あります。しかし、興業の面から考えると、こういった演出もありかなと思います。要は何を取るかです。人が来なくても伝統を重んじてやって行くのか、興業と割り切って、地域経済のために人が集まるイベントに作り上げて行くのか…。<o:p></o:p>

栗木 伝統を重んじながら客は呼べないのか。<o:p></o:p>

小林 無理ですね。それが成功していたら、日本中のどこの町でも、活気あるイベントが繰り広げられていることでしょう。<o:p></o:p>

栗木 そういうものなのか…。<o:p></o:p>

小林 そういうものです。<o:p></o:p>

栗木 しかし…。<o:p></o:p>

 栗木の思いとは裏腹に、会場が暗くなり色とりどりの照明が灯りだす。<o:p></o:p>

 


闘牛王の憂鬱【第6回】

2013-10-12 07:44:59 | インポート

第八話 モーレツ娘。(7歳)<o:p></o:p>

 

 舞台上手側の牛舎。中央に白い毛が混じった栗毛色のボディスーツをまとった牛が一頭。<o:p></o:p>

 その周りで、二人の男が、牛舎の掃除をしながら話している。<o:p></o:p>

川向 栗木さんも、思い切った決断をしたもんですね。<o:p></o:p>

田代 あぁ。<o:p></o:p>

川向 しかし、良いんですかね。ここの闘牛の伝統を壊して…。<o:p></o:p>

田代 心の中では、受け入れられてはいねぇだろう。伝統と存続を天秤にかけた結果だ。<o:p></o:p>

川向 はぁ。<o:p></o:p>

田代 闘牛を観光の目玉として広めるか、ここの闘牛の伝統を大切にして細々とでも残すか…。<o:p></o:p>

川向 難しい選択ですね。<o:p></o:p>

田代 表向きは変わっても、オーナーが闘牛の本質を押さえていれば、揺るぐようなものではねぇ。<o:p></o:p>

川向 闘牛の本質。<o:p></o:p>

田代 あぁ。<o:p></o:p>

川向 それって何ですかね。<o:p></o:p>

田代 俺たちが本気で牛を愛するということだ。<o:p></o:p>

川向 カッコいいっすね。<o:p></o:p>

田代 逆もある。形式にだけこだわって、形だけ同じことを繰り返しても、すたれて行くものもある。<o:p></o:p>

川向 そんなもんすかね。<o:p></o:p>

田代 神楽なんかも、残るものと消えて行くものの差は、根っこの想いだ。要はここよ。<o:p></o:p>

田代、胸をドンドンとたたく。<o:p></o:p>

田代 状況が変わっても、それだけは忘れるな。<o:p></o:p>

川向 わかっていますよ。…でも、うちのオーナーは、どうですかね。<o:p></o:p>

田代 牛を愛する気持ちより、我が娘を愛する気持ちが大きいということだけは間違い無いな。<o:p></o:p>

 そこへ、ヒラヒラの衣装をつけた、女の子たちが現れる。<o:p></o:p>

@MUSUME もう♪見えすぎちゃってこまるのぉ、見えすぎちゃって困るのぉ~。OH、モーレツ!<o:p></o:p>

短角 赤い突進娘こと、短角牛子でぇす。ちなみに彼氏はタンクンでぇす<o:p></o:p>

南部 南部牛の始祖、南部の土地をこよなく愛する、南部牛江でぇす。ヒアウイゴー。  <o:p></o:p>

塩戸 アメリカからやってきた、南部牛の原点、しおとほううんだ。趣味は習字だ。書道じゃねぇぞ。そんな立派なもんじゃねぇ。今週の目標を、筆で書いて、部屋に貼るんだ。ちなみに、今週の目標は、『茄子ば茄子、茄子ではならぬ、マーボー茄子』だ。<o:p></o:p>

  アメリカっぽくねぇ、キャラで、申すわけねぇ。<o:p></o:p>

中野 じぇぇぇ。潜水のしすぎで、耳から血が出ちゃいました。本当の潜りは甘くないです。北三陸の本物の高校生海女。なかもえこと、中野百瑛。<o:p></o:p>

牛島 限りなく昭和の匂いをかもしだす。元祖なんてったってアイドル。うしけいこと牛島圭子!<o:p></o:p>

牛越 先輩たちぃ、キャラたちすぎですぅ。私の目立つところをとっちゃいやですよ。ぷんぷん。本気でアイドル目指してます。うしももこと、牛越百々子。<o:p></o:p>

@MUSUME 私たち、南部闘牛のアイドル、『モーレツ@MUSUME』デェス。<o:p></o:p>

 三人、ポーズを決めた後<o:p></o:p>

南部 塩ちゃん、話し長いよ。<o:p></o:p>

塩戸 申すわけねぇ。おら、話をうまぐまどめるの苦手なんだすけ。<o:p></o:p>

短角 あのさ、やっぱりさ、南ちゃんと、塩ちゃんのキャラ変更しない?<o:p></o:p>

塩戸 えぇ、今さらが。<o:p></o:p>

南部 ノープロブレム。私が塩戸になれば良いのね。<o:p></o:p>

塩戸 そりゃぁ違うべ。南ちゃんは南部だから、南ちゃんなんだべ。南ちゃんが塩戸じゃ変だべ。『シオトナン』じゃ、ショコタンのパクリだと思われるべ。それではだめだ。<o:p></o:p>

中野 わけわかんなくなってるよ…。<o:p></o:p>

短角 もえちゃんだけ、海女の衣装で良いの。<o:p></o:p>

南部 ママがアクセントで良いって言ってるよ。ノープロブレム。<o:p></o:p>

塩戸 アクセントはうしけいだけで良いんじゃねぇですか。<o:p></o:p>

牛島 あたしはアクセントじゃないわよ。こないだの次期センター選抜、『どきっ。女だらけの相撲大会』でも、優勝したじゃない。<o:p></o:p>

牛越 もう、先輩たちぃ。ケンカしないでくださいよぉ。ぷんぷん。アイドルグループなんだから、表面上だけでも仲よくしましょうね。<o:p></o:p>

牛島 何、その表面上だけって。<o:p></o:p>

牛越 あっ。言いすぎました。てへっ。うしもも、ダメだぞぉ。こつん。(自分の頭を軽くたたく。)<o:p></o:p>

 田代、川向、唖然として、この子たちを見る。<o:p></o:p>

川向 何ですか。この子たちは。<o:p></o:p>

田代 南部さんの所の娘と、その仲間たちだ。<o:p></o:p>

川向 はぁ。<o:p></o:p>

短角 私たちのコンセプトは、リーインカーネーション。輪廻転生。テレビ草創期のアイドルを今の時代に復活させて、地方から新たなアイドル文化の発信を行います。<o:p></o:p>

牛島 んだ。んだ。リーインカーネルサンダー杉山だ。<o:p></o:p>

川向 なかなか。マニアックなギャグ…。<o:p></o:p>

牛島 わかるやつにだけ、わかれば良い。<o:p></o:p>

中野 あのぉ。りんねてんせいって何ですか。<o:p></o:p>

牛越 木の切り株にあるやつです。そこに転戦でマークが描いてあるってことじゃないですか。<o:p></o:p>

塩戸 それ、年輪と、点線。全然意味が違うんでねぇの。生まれ変わるってことだすけ。<o:p></o:p>

中野 あぁ、そうなんですか。<o:p></o:p>

牛越 うしもも、勉強が足りないぞ。てへっ。<o:p></o:p>

川向 俺には、この良さがわかりません。<o:p></o:p>

田代 俺にもわからねぇ。でも、これは、これでありかもな。<o:p></o:p>

短角 マリリンモンローからインスピレーションを受けて一世を風靡したマスプロアンテナのコマーシャルを40年の時を経て、更に再構築した、現代に蘇るアイドルの原点!<o:p></o:p>

牛島 んだ、んだ。マルモリダンスから、グラジュエーションで、卒業だ。 <o:p></o:p>

田代 アメリカのパクリをしたものの、更にパクリか?<o:p></o:p>

南部 そして、その原点となるアイドルはネットでしか見ることができない。本物に会いたければ、平庭高原にいらっしゃぁい。<o:p></o:p>

塩戸 これが、おらだぢ、『モーレツ@MUSUME』略して<o:p></o:p>

musume 『モームス』!<o:p></o:p>

川向 完全にパクリだ。<o:p></o:p>

南部 そして、その総合プロデューサーが、私のママで~す。<o:p></o:p>

川向 ママって言うな。母だべ母!<o:p></o:p>

 

 南部ママ登場。

南部ママ 自分がアイドルになるべく、久慈を飛び出して早幾年瀬。地方からのアイドル発信を目指して、この南部の土地に帰ってまいりました。闘牛『モーレツ娘。』のオーナー。アイドル『モーレツ@MUSUME』のプロデューサー、そして、『モーレツ@MUSUME。』南部牛江の本当のママ。南部ママ!<o:p></o:p>

南部 ママ!イッツクール!かっこいい!<o:p></o:p>

川向 ママって言うな、ママって。母だべ母。<o:p></o:p>

モーレツ もぉ~っ。。<o:p></o:p>

モーレツ、叫び声をあげる。<o:p></o:p>

田代 あれ、大事な闘牛のことを忘れてた。<o:p></o:p>

モーレツ も~っ。<o:p></o:p>

南部ママ 『モーレツ』は順調?。…あっ。牛の方ね、牛。アイドルの方は順調に決まってるんだから。なんたって、あたしが直々にプロデュースしてるんだから。<o:p></o:p>

田代 はぁ。<o:p></o:p>

南部ママ で、どうなの。<o:p></o:p>

川向 順調です。今や、円熟期を迎えようとしています。<o:p></o:p>

南部ママ 去年より、ずいぶんとやせたようじゃないの。<o:p></o:p>

田代 やせたんじゃなくて、ひきしまったんです。<o:p></o:p>

南部ママ ものは言いようね。これだけ、お金と手間暇をかけて育成してるんだから、ものにして頂戴ね。<o:p></o:p>

川向 はい。<o:p></o:p>

南部ママ そして、アイドル『モーレツ@MUSUME』と、闘牛『モーレツ娘。』との、最強コラボレーションで、協力に売り出すのよ。アイドルと闘牛の本物を見るなら、ここに来なさいってね。<o:p></o:p>

田代   すごいですね。<o:p></o:p>

南部ママ 北三陸テレビの江根知さんにも、ドキュメンタリー制作をお願いしてるから、あなたたちもテレビに出られるわよ。<o:p></o:p>

川向   本当っすか。<o:p></o:p>

南部ママ 今回、ここの闘牛の構造改革がなされたわ。この機に一気にたたみかけるわよ。がんばるよ、『モーレツ@MUSUME』!<o:p></o:p>

@MUSUME はいっ。<o:p></o:p>

南部ママ そっちは。<o:p></o:p>

田代 はいっ。<o:p></o:p>

川向 はいっ。<o:p></o:p>

 南部ママ、『モーレツ娘。』ににらみを利かせる。<o:p></o:p>

モーレツ も~っ。<o:p></o:p>

 転    換<o:p></o:p>

 第九話 闘牛大会開催決定記者会見<o:p></o:p>

 ここは、記者会見場。会見のテーブルには、観光協会の小林、南部闘牛協会の会長栗木、そして、地元漫画家うしこうしおが座っている。取材陣は、北三陸テレビのスタッフの江根知と照深だ。プレス席には、南部ママも座っている。<o:p></o:p>

南部ママ 江根知さん。良い感じで進んでいるじゃない。<o:p></o:p>

江根知  計画通りですよ。観光振興協議会ものってくれましたし。<o:p></o:p>

南部ママ 予想どおりね。<o:p></o:p>

江根知  今回、うちの局では中継が入ることになりましたが、その他は…。<o:p></o:p>

南部ママ スカスカペーペーテレビも、行けますよ、<o:p></o:p>

江根知 良いですね。<o:p></o:p>

小林  江根知さん。取材陣が、思いのほか少ないですよ。<o:p></o:p>

江根知 そうですね。そのあたりに、日報の志田さんとか、デーリーの水野さんとか、広報の水上さんとかいそうですけどね。あっ、FMいわての八重桜さんがいたいた。<o:p></o:p>

 江根知、会場から本物の報道陣を引っ張って来て、プレス席に座らせる。<o:p></o:p>

江根知 照深さん始めてください。<o:p></o:p>

照深 はい、本日は、今回の闘牛大会の開催にあたりまして、重大な発表があるということなので、インタビュー形式で野記者会見をさせていただきます。それでは、まず、南部闘牛観光振興協議会の小林さん、お願いいたします。<o:p></o:p>

小林 と…と、いうわけで、今回の闘牛は勝負をつけさせます。<o:p></o:p>

照深 いきなり結論ですか。時間短縮にご協力いただきましてありがとうございます。<o:p></o:p>

小林 そして、トーナメントで、真の意味での南部闘牛界のキィングオブキン(グ)を決めるというわけです。キングオブキングの発音は良かったですか。<o:p></o:p>

照深 素晴らしい発想ですね。裏には敏腕プロデューサーがいそうですね。<o:p></o:p>

小林 いや、いや、そんなのは居ねえすけ。<o:p></o:p>

 江根知、立ち上がりかけるが、南部ママに座らせられる。照深が続ける。<o:p></o:p>

照深 栗木さん、よくご決断なされましたね。<o:p></o:p>

栗木 決断…。<o:p></o:p>

 小林、栗木に向けられた質問だが、マイクを奪い取るように話に割り込む。<o:p></o:p>

小林 今回の開催は、栗木闘牛協会会長の英断によるものです。素晴らしいご決断に拍手!<o:p></o:p>

 小林、一人で拍手をする。<o:p></o:p>

照深 今回の見どころは何ですか。<o:p></o:p>

小林 何って、何から何までだ。見どころが無い瞬間は1秒たりともありません。<o:p></o:p>

照深 言いきっていますね。<o:p></o:p>

小林 ここの闘牛で初めて勝敗がつくんですよ。歴史的な出来事です。<o:p></o:p>

照深 伝統を変えて、良いんですか。<o:p></o:p>

小林 良いんです。良いんですよね、栗木さん。<o:p></o:p>

栗木 あ、あぁ。<o:p></o:p>

小林 そして、伝統の変更に伴いまして、勢子として女性が出ることも可能になりました。<o:p></o:p>

照深 女の子が土俵に乗って良いんですか?<o:p></o:p>

小林 良いんです。そうですよね、栗木さん。<o:p></o:p>

栗木 え、えぇ。<o:p></o:p>

照深 じゃぁ、あたしもやって良いんですね。<o:p></o:p>

小林 良いんです。<o:p></o:p>

照深 じゃぁ、今日は土俵の中で実況しましょうか。<o:p></o:p>

 照深、立ちあがって、土俵に入り込もうとするが、江根知がアイコンタクトで静止する。<o:p></o:p>

江根知 (いや、いや、いや、いや。)<o:p></o:p>

照深 ところで、栗木さんのお隣に座っている方は…。<o:p></o:p>

小林 俺ですね。<o:p></o:p>

照深 いや、違います。反対側に…。<o:p></o:p>

小林 反対側…。<o:p></o:p>

 小林、身を乗り出して、<o:p></o:p>

小林 だれだ、おめぇ。<o:p></o:p>

うしこ もう~すわけありません。地元でマンガを描いています、『うしこうしお』ともぉ~すます。影も~薄くて、重ね重ね、も~すわけありません。<o:p></o:p>

照深 それで、うしこさんは今回の闘牛とはどのような関係がおありなのでしょうか。<o:p></o:p>

うしこ 闘牛と言えば…、今度、私、新しいマンガを連載することになりもう~しまして…。<o:p></o:p>

照深 闘牛のマンガですか。<o:p></o:p>

うしこ じぇんじぇん違いも~うす。<o:p></o:p>

照深 どんな漫画なんですか。<o:p></o:p>

うしこ 海女を目指していた子が、抹茶のスイーツを食べて、抹茶味のお菓子専門店をはじめる話だとも~うしておきましょう。<o:p></o:p>

照深 タイトルは。<o:p></o:p>

うしこ タイトルは、『あまちゃ(ん)。』、『あ、(抹茶)まっちゃ!』です。<o:p></o:p>

江根知 なんか、ここでも二番煎じ的な雰囲気が感じられる。<o:p></o:p>

小林 それで、<o:p></o:p>

うしこ はい。<o:p></o:p>

小林 誰だ、おめぇ。<o:p></o:p>

うしこ ですから、『うしこ うしお』と、も~うします。<o:p></o:p>

小林 だから、誰だ、おめぇ。<o:p></o:p>

うしこ 『うしこうしお』と…<o:p></o:p>

小林 っていうか、誰がここに呼んだんだ!<o:p></o:p>

 

 記者会見が混乱する中、暗転。<o:p></o:p>

 


闘牛王の憂鬱【第5回】

2013-10-11 20:34:19 | インポート

第五話 内間木王(12歳)<o:p></o:p>

 栗木家の牛舎。4本の柱だけが立っている。前方に、餌箱らしき横長の木製の箱が置かれている。柱の中央に茶色の牛(内間木王)が、観客席に背を向けて仁王立ちしている。<o:p></o:p>

 ブラシを持った一人の老人が現れ、その背中に一生懸命ブラシをかけはじめる。<o:p></o:p>

 そこに、大きな桶を抱えて一人の女性が現れる。<o:p></o:p>

 

栗木妻 持って来たよ。<o:p></o:p>

栗木  あぁ。<o:p></o:p>

栗木妻 これでいいのかい。<o:p></o:p>

 栗木、桶の中を覗き込む。栗木、手を休め、桶の中の物をすくい取り口に含む。<o:p></o:p>

栗木  あぁ、よし。<o:p></o:p>

 栗木妻、その言葉を聞き、横長の木箱の脇に桶を置く。<o:p></o:p>

栗木妻 本当に、この子は過保護だね。こんな良いもの、毎晩飲まされてさ。<o:p></o:p>

栗木  俺ぁ下戸だすけ、その分だと思ってがまんしてけで。<o:p></o:p>

栗木妻 そりゃぁ、わがってる。でも、毎晩一升は、大酒飲みだ。<o:p></o:p>

栗木  この体でば、俺らのコップ一つと同じだ。昼間は、勢子の大上と体を絞って、十分食って、夜は酒を飲ませてぐっすりと眠らせる。この、体格と筋肉はこうしてつけてきたものだ。見ろ、この毛並み。ほれぼれするじゃ。<o:p></o:p>

 栗木、内間木王の毛並みに見惚(みと)れる。<o:p></o:p>

栗木妻 …観光協会の小林さんの話聞いたよ。<o:p></o:p>

栗木  あぁ。<o:p></o:p>

栗木妻 いいの。<o:p></o:p>

栗木  あぁ。いろいろ、変えていかねぇと、闘牛もやっていけねぇ。とりあえず、次だけやってみて、様子見すべって、観光振興協議会の小林さんに話をもって来られた。<o:p></o:p>

栗木妻 そうすか。<o:p></o:p>

栗木  悪い話ではねぇべ。<o:p></o:p>

栗木妻 …勢子ちゃんのためだね。<o:p></o:p>

栗木  えっ。<o:p></o:p>

栗木妻 闘牛で勝負つけさせる他に、おなごも勢子になれるようにしたって言ってだよ。<o:p></o:p>

栗木  いろいろ変えていかねえと。<o:p></o:p>

栗木妻 良いと思いますよ。<o:p></o:p>

栗木  ……。<o:p></o:p>

栗木妻 私ももうちょっと若かったら、勢子もしてみてぇな、なんてね。<o:p></o:p>

栗木  ……。<o:p></o:p>

栗木妻 良いと思いますよ。<o:p></o:p>

栗木  ありがとう。<o:p></o:p>

栗木妻 …この子は勝てますかね。<o:p></o:p>

栗木  『内間木』は、負けねぇ。<o:p></o:p>

栗木妻 『グレート』も7歳になったし、力つけで来たすけ。<o:p></o:p>

栗木  負けねぇ。<o:p></o:p>

栗木妻 この子も、今年で12歳だすけ。そろそろ(引退かと)…。<o:p></o:p>

栗木  負けねぇ。<o:p></o:p>

栗木妻 あんたが、そう言うんなら…。<o:p></o:p>

栗木  ……。<o:p></o:p>

栗木妻 今日は、早く飲ませて、寝せましょう。ちゃんと体つくって行かないと、勝てる試合も勝てねぇすけ。<o:p></o:p>

栗木  あぁ。<o:p></o:p>

 栗木妻、静かに去る。<o:p></o:p>

 栗木、内間木王に向かって語りかけるように話し出す。<o:p></o:p>

栗木  おめぇ。まだ、行けるよな。おれぁ、お前のおかげで、初めて横綱の牛主になったすけ、感謝してる。<o:p></o:p>

 内間木王、かすかに肩を震わせる。<o:p></o:p>

栗木  力をつけてきたグレートだが、勢子が居ない今の状態であれば潰すのは簡単だ。でもな、最高の勢子もつけさせて、最高の状態のグレートと闘って勝つ。そうしなければ、本当の横綱じゃねぇ。…そうだよな。内間木。<o:p></o:p>

ブラシを置いて、内間木王に柔らかなまなざしを残して去る。<o:p></o:p>

 内間木王、栗木が去ると、振り返り会場の方を見る。<o:p></o:p>

 

内間木王 親父さんのその『がんばれよ』の一言が、いつでも俺の心に大きくのしかかっている。もちろん俺はがんばる。俺にここまで期待を寄せて、俺を育ててくれている、親父さんと奥さんに酬(むく)いるためには、精一杯がんばった上に、更に『がんばる』を重ねなければならない。<o:p></o:p>

     俺は、本当は誰とも闘いたくは無い。しかし、親父さんの望みは俺が闘う    

    ことだ。闘って勝つことだ。闘うことが、勝つことが、親父さんの願いであ  

    って、俺がここで生きている意味だ。<o:p></o:p>

      俺は闘いたくない思いを持ちながら、親父さんのために歯を食いしばっ

    て、目を充血させて、必死で闘う。<o:p></o:p>

  

 内間木王、天を仰ぎみる。<o:p></o:p>

  

内間木王 闘って、闘って、闘って…。闘った後に残るものは…。(死…。)<o:p></o:p>

  

 最後の言葉は、言葉にならないが、全ての想いを表情に込めて胸の奥から天に向かって放つ。<o:p></o:p>

 

 暗  転<o:p></o:p>

 第六話 グレートガタゴン(4歳)<o:p></o:p>

 夕闇せまる時間。西の空にはうっすらと赤みが差しているが、空には満月に近い月が現れ始めている。<o:p></o:p>

そんな中、勢子が、笑顔でガタゴンに餌を与えている。<o:p></o:p>

勢子 私ね、とうとう、勢子になれるよ。勢子で土俵に上がれるよ。私の願いを、栗木さんが叶えてくれたんだ。<o:p></o:p>

 ガタゴン、肩を振るわせる。<o:p></o:p>

勢子 お前は、私の…。ううん、上舘家の宝だから、大切に、大切に育てて、本気で鍛えて、きっと、  横綱にしてみせるからね。私のしごきについてきてね。<o:p></o:p>

 勢子笑顔で、ガタゴンの口に餌を詰め込み続ける。<o:p></o:p>

ガタゴン うおひょうはん。(御嬢さん…。)<o:p></o:p>

 ガタゴン、口の中がいっぱいで、話せない。<o:p></o:p>

 勢子、しかし、まだ笑顔でガタゴン口に餌を突っ込み続ける。 <o:p></o:p>

 ガタゴン、耐えられなくなり、餌を吐き出す。<o:p></o:p>

  

勢子 ガタゴン。どうしたの。今まで、こんなこと無かったのに、大丈夫?<o:p></o:p>

 勢子、ガタゴンの肩に抱きつき、ガタゴンの肩をさする。<o:p></o:p>

勢子 ちょっと待ってね。父さんに聞いてくるから。ちょっと待っててね。<o:p></o:p>

勢子、その場を去る。<o:p></o:p>

ガタゴン …御嬢さん。あっしは、御嬢さんの期待に添えるような、男になります。横綱になって、今以上に、御嬢さんに惚れてもらえるような、そんな闘牛になってみせます。<o:p></o:p>

  うぉぉぉぉぉぉぉ。<o:p></o:p>

 

 ガタゴン、月に向かって吠える。<o:p></o:p>

 暗  転<o:p></o:p>

 第七話 サイクロン霜畑(17歳)<o:p></o:p>

 翌朝、舞台下手側の一角に、サイクロン霜畑の牛舎がある。<o:p></o:p>

 サイクロンは静かに佇んでいる。大欅(おおけやき)が、世話をしている。<o:p></o:p>

 そこへ、児童会の会長佐倉がやってくる。<o:p></o:p>

佐倉   大欅さん。<o:p></o:p>

大欅   おぉ、かなちゃんか。<o:p></o:p>

佐倉   今度の試合にサイクロン、出すの。<o:p></o:p>

 白鳥、入ってくる。牛舎の匂いに耐えられず、一瞬ムッとするが、体にファブリーズを振りかけて、納得する。<o:p></o:p>

大欅   あたりまえだべ。勝ち行くぞ。<o:p></o:p>

佐倉   無理させなくても良いのに…。<o:p></o:p>

大欅   サイクロンは出るつもりだ。<o:p></o:p>

白鳥   闘牛は勝たなきゃ、意味がありませんからね。<o:p></o:p>

佐倉   あやめ、そんな言い方しなくたって…。<o:p></o:p>

大欅   あやちゃんの言うとおりだ。優しいだけで良いってことは無い。やる時はやる。そんな時も無ければ、強くはなれない。<o:p></o:p>

 そこへ、小松と一本松が息を切らせてやってくる。<o:p></o:p>

小松   もう、置いていかないでよ。<o:p></o:p>

白鳥   あなたたちが遅いんでしょう。<o:p></o:p>

一本松  本日、私たちの学年で栽培しているヘチマがかじられているという事件がりまして、その解決に時間がかかったという次第で…。<o:p></o:p>

佐倉   どうせ、『まさ』がかじったとかいう落ちなんでしょう。<o:p></o:p>

小松   何でわかるの。<o:p></o:p>

一本松  素晴らしい推理力です。<o:p></o:p>

白鳥   あんたの食いしんぼうぶりは、10年前から知ってるわ。<o:p></o:p>

一本松  10年前と言えば、我々はまだ、この世に存在しない時代になりまして、話のつじつまがあわなくなりますが…。<o:p></o:p>

白鳥   あぁぁぁ。面倒くさい。<o:p></o:p>

佐倉   キュウリとヘチマの区別がつかなくて、食べちゃったんだね。<o:p></o:p>

小松   さすが、児童会長。何でもお見通しでやんすね。<o:p></o:p>

佐倉   おいしかった?<o:p></o:p>

小松   まずかった…。<o:p></o:p>

佐倉   でしょう。今度から気をつけなさいね。<o:p></o:p>

小松   へい。<o:p></o:p>

大欅   お前たちが、今日のサイクロン当番なんだ。<o:p></o:p>

佐倉   はい。<o:p></o:p>

大欅   じゃぁ、掃除を手伝ってくれ。<o:p></o:p>

子どもたち はぁい。<o:p></o:p>

 佐倉、ほうきで周りをはき始める。小松と一本松は、水を汲んだり運んだりするが、白鳥は、わらを指先でつまんで、ぽいと捨てるなど、仕事に参加している様子が見られない。<o:p></o:p>

小松   何にしてるの。<o:p></o:p>

白鳥   何って、掃除でしょう。<o:p></o:p>

小松   それが掃除?。<o:p></o:p>

佐倉   家の掃除もしたことが無い、『あやめ』がここに来ているだけでも偉いんだから。<o:p></o:p>

小松   そうなの。<o:p></o:p>

佐倉   それぞれのがんばりは認めてあげなきゃ。<o:p></o:p>

大欅   流石会長。いいこと言うね。<o:p></o:p>

 小松、サイクロンの様子を覗き込む。<o:p></o:p>

小松   サイクロ生きてる?<o:p></o:p>

一本松  生きていますよ。よくみてください。肩のあたりが上がったりさがったりしてるよ。<o:p></o:p>

小松   …本当だ。<o:p></o:p>

白鳥   サイクロンって何歳になったの。<o:p></o:p>

大欅   17歳だ。<o:p></o:p>

小松   高校生くらいなのか。<o:p></o:p>

一本松  いえ、牛の年は人間の5倍くらいで考えると教えてもらいましたから、17×5で、……85歳!<o:p></o:p>

大欅 計算早いね。<o:p></o:p>

白鳥   じぇじぇじぇ。すげぇ、85歳で、闘牛出てんの。<o:p></o:p>

小松   もし、うちのジイちゃんが、プロレスやったら死んじまうよ。<o:p></o:p>

大欅   サイクロンのすごいところがわかってくれて嬉しいな。<o:p></o:p>

佐倉   サイクロンがすごいのはよくわかってます。<o:p></o:p>

一本松  こないだの取り組みでも、一回吠えただけで、相手が逃げて行った。カッコいいです。<o:p></o:p>

小松   そうそう、相手はうんちもらしてた。<o:p></o:p>

大欅   サイクロンはね、大欅さんが、役場に入った年に、小学校の牛として飼うことになったんだ。その頃は、学校で闘牛を飼うなんて何事だって反対されて、それをまとめるのに苦労したんだ。<o:p></o:p>

佐倉   大欅さんとサイクロンにも歴史ありですね。<o:p></o:p>

大欅   まぁね。<o:p></o:p>

白鳥   …サイクロン、勝つかな?<o:p></o:p>

一本松  勝つに決まってるべ!<o:p></o:p>

小松   負けるわけがねぇ。<o:p></o:p>

白鳥   でも、どっちかが勝てば、どっちかが負けるんだよね。<o:p></o:p>

大欅   勝負の世界とはそういったもんだ。<o:p></o:p>

佐倉   今までと同じにして、勝負つけさせる必要は無かったのに…。<o:p></o:p>

大欅   そういった考えもある。<o:p></o:p>

佐倉   ずっと同じでいいことと、ずっと同じでだめなことがあるんじゃない。<o:p></o:p>

一本松  新しいことは面倒だから、去年と同じで良いっていう大人は多いです。経験をしているから失敗は少ないですが、大きな成功を収めることは、ほとんどありません。<o:p></o:p>

大欅   刺さる言葉だなぁ。<o:p></o:p>

佐倉   わたしたちだってそうじゃない。<o:p></o:p>

一本松  えっ。<o:p></o:p>

佐倉   失敗すいるのが怖くて、去年と同じ児童会行事をしてる。<o:p></o:p>

小松   あっしは、ヘチマでも食う、チャレンジャーでやんす。<o:p></o:p>

佐倉   だから、『まさ』は大きくなったら、ここを変えてくれる人になりそうだと思うの。<o:p></o:p>

小松   そんなに褒められると、照れるでやんす。<o:p></o:p>

佐倉   新しいことに挑戦しようとしてるんだから、南部の大人たちもすごいじゃないですか。<o:p></o:p>

大欅   そうかもな。<o:p></o:p>

白鳥   そうかも。<o:p></o:p>

大欅   何でもかんでも、新しくすれば良いって言うものでもない。<o:p></o:p>

一本松  そうですね。伝統と言うものもとても大切なものです。<o:p></o:p>

大欅   それに縛られ過ぎても先は無い。。今回の闘牛は、これからの南部闘牛をどうしたらいいのかを考える場所になる。お前たちも、ちゃんと見て、十年後に自分たちはどんな闘牛を見たいか、考えてくれ。<o:p></o:p>

小松  わかったでやんす。<o:p></o:p>

白鳥   サイクロン、精いっぱい闘ってちょうだいね。<o:p></o:p>

一本松  そう、勝っても負けても、サイクロンは俺たちのヒーローだ。<o:p></o:p>

 サイクロンだけに明りが当たる。サイクロン以外の人物の時間は止まり、サイクロンの独白となる。<o:p></o:p>

サイクロン 今まで、沢山、良い戦いをしてきた。今までの闘いに、悔いはない。この子たちの想いを受けて、今回も精一杯闘いましょう。勝ち負けは、この際問題ではない。精一杯、今を生きるだけです。子どもたちの笑顔で今まで、私は生かされてきた。それは、命尽きるまで変わらないこと。それこそが、私の生きがいです。子どもたち、そして、大欅さん。ありがとう。<o:p></o:p>

 独白のシーンから、全体に明りが広がる。再び、周囲の時間が動き出す。<o:p></o:p>

 転 換<o:p></o:p>

 


釜石市民劇場 再生!

2013-10-10 21:58:55 | インポート

 被災後再開することができなかった、釜石市民劇場がついに再始動し上演します

 

 市民劇場の拠点としていた市民文化会館も被災したままの状況の中、自分たちの力で復興しようというエネルギーに心が熱くなっています。

 こむろは当日は、これもまた震災後初めてステージで演奏会をする、田村ピアノ教室の発表会(恋の洞窟探検:こむろ作を上演)に行きますが、前日と、終わってからは釜石にいて、がんばった皆さんの傍らで、皆さんのがんばりを見守りたいと思います。

 演目:釜石市民劇場『みんな笑顔で』

 日時:10月13日(日)13:00開場 14:00開演

 場所:釜石駅付近シープラザ遊(白い常設テント)

 入場料:無料

 入場者:先着限定500名