第二話 南部闘牛観光振興協議会の危機<o:p></o:p>
山形支所の会議室。今日は、地元の観光振興を考える『南部闘牛観光振興協議会』の月一回の定例会。<o:p></o:p>
観光協会の会長の小林、市役所観光協会職員の田子内、商工会議所の代表の大畑、道の駅の店主野田が顔をそろえている。<o:p></o:p>
空気が重い。というか、よどんだ生ぬるいのもが見えない空間を漂っている雰囲気だ。<o:p></o:p>
小林 今日、集まっていただいたのは他でもない…。<o:p></o:p>
野田 定例会だからデェス。<o:p></o:p>
大畑 そうでぇす。<o:p></o:p>
小林 議題は、これからの観光振興です。<o:p></o:p>
野田 先月もです。<o:p></o:p>
大畑 先々月もです。<o:p></o:p>
小林 予算は減る一方。<o:p></o:p>
野田 メンバーも減る一方。<o:p></o:p>
小林 そんな中、『金は出せぬぞ知恵を出せ!』のスローガンのもと、今日も、皆さんから斬新なアイデアを出していただこうと思います。良い案を考えてきた方!はい、大畑さん。<o:p></o:p>
大畑 思いつきませんでした。<o:p></o:p>
野田 以下同文。<o:p></o:p>
小林 はい、それでは今日の定例会を終わります。<o:p></o:p>
全員立ち上がろうとする。<o:p></o:p>
田子内 あのぉ、すみません。記録を取っているのですが…。<o:p></o:p>
小林 何だよ。<o:p></o:p>
田子内 今日の会議の内容が、先月と同じ内容なので、前回の資料をコピーペーストしても良いでしょうか。<o:p></o:p>
小林 何だ、そのコーヒートーストって?<o:p></o:p>
田子内 先月の記録をそのまま使うということです。<o:p></o:p>
小林 全く同じということか。<o:p></o:p>
田子内 はい。<o:p></o:p>
大畑 先々月もです。<o:p></o:p>
野田 先々々月もです。 <o:p></o:p>
田子内 あっ。コピーペーストとコーヒートーストの聞き間違いのくだりは、面白いので記録に書き足しておいていいですか。<o:p></o:p>
大畑 良いんじゃない。旅費貰ってるんだし、少しは進歩があるところを見せなきゃ。<o:p></o:p>
小林 待て、みんな、旅費貰ってるのか。<o:p></o:p>
野田 そうだよ。<o:p></o:p>
小林 俺は貰ってねぇぞ。<o:p></o:p>
大畑 だって会長は、歩いてすぐそこじゃないですか。<o:p></o:p>
小林 いや、だったら、別の場所で会議しようぜ。<o:p></o:p>
野田 予算も少ねぇんだから、良いんじゃねぇのここで。<o:p></o:p>
小林 つうか、予算がねぇねぇって言ってんのに、会議の旅費はあるのか?<o:p></o:p>
田子内 はい。旅費は前年度並みに計上しております。<o:p></o:p>
小林 他に回せよ。<o:p></o:p>
田子内 費目間の流用はできません。他に回すには、補正を組んでやるしかありません。来年度、そうするのであれば、来年度は旅費を削減して…。<o:p></o:p>
野田 しなくていいよ。会議は大事です。<o:p></o:p>
田子内 では、そうします。ここまでの記録は、新しい所なので、書いておきますか。<o:p></o:p>
大畑 会議が終わってからの炉辺談話だ。書かなくてよし。<o:p></o:p>
田子内 わかりました。<o:p></o:p>
小林 ちょっと待ってくれ。今回は、いつもの定例会じゃ、ダメなんだ。<o:p></o:p>
大畑 何で、ですか。<o:p></o:p>
小林 前回のつつじ場所でのことがあって、ここの闘牛は存続の危機に瀕している。<o:p></o:p>
田子内 ここから、もう一度書き始めます。<o:p></o:p>
小林 そうしてくれ。<o:p></o:p>
大畑 上舘さんのことだね。<o:p></o:p>
小林 それもあるが、客の入りが最低だった。<o:p></o:p>
野田 最低?。<o:p></o:p>
大畑 悪い、悪い、俺は、商工会のイベントで、久慈の街さ行ってだ。何人来た?<o:p></o:p>
野田 俺も、まめぶ売りに駆り出されて、八戸に行ってた。何人来た?<o:p></o:p>
小林 ご…。<o:p></o:p>
大畑 五百か。<o:p></o:p>
野田 ちょっとすくねぇな。<o:p></o:p>
小林 ご、五十人だ!<o:p></o:p>
大畑 五十!<o:p></o:p>
野田 じゃっ。大赤字だべ!<o:p></o:p>
大畑 なしてよ!。<o:p></o:p>
小林 なしてよ!って、ここの人たちも、駆り出されるくれえのビックイベントを、八戸だの久慈だのってやられたら、お客さんもみんな取られてしまうに決まってる!<o:p></o:p>
野田 そりゃぁ、大変だったな。<o:p></o:p>
小林 大変だったじゃ済まされんのです!今度の春のつつじ場所も、同じような状況だったら、市からの補助金も打ち切り!<o:p></o:p>
大畑 そりゃぁ大変だ!<o:p></o:p>
小林 そして、南部に来るはずの予算が新規事業『海女さんのいるお寺、そりゃあ間違いだべ。』に回されそうなんだ。<o:p></o:p>
野田 海の海女さんとお寺の尼さんをかけてるのか。<o:p></o:p>
田子内 それと、『あまちがい』と、『あ、間違い。』も、かけています。<o:p></o:p>
大畑 なかなかのセンスだな。<o:p></o:p>
小林 感心してる場合じゃない!闘牛が廃止されるということは、もちろん<o:p></o:p>
大畑 もちろん?<o:p></o:p>
小林 闘牛観光振興協会も解散ということだ!<o:p></o:p>
野田 そりゃ、困る。<o:p></o:p>
大畑 本気で考えるぞ。<o:p></o:p>
野田 あぁ。<o:p></o:p>
田子内 『オオハタ、本気で考えるぞ。ノダ、あぁ。』はい、エンター。記録も終わりました。<o:p></o:p>
小林 よし。<o:p></o:p>
暗 転 <o:p></o:p>