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外生菌根共生系の生理状態とマツタケのパズル

2005年05月11日 | きのこ ゼミ 情報メール
◆紹介:「外生菌根共生系の生理状態とマツタケのパズル」
    鈴木和夫 日本森林学会誌, Vol.87(1), 90-102 (2005)
               (きのこゼミ情報メール5月11日配信)


「日本人にとってマツタケは特別なきのこである」と誰が言ったか思い出せないけれど、頻繁に聞かされる言葉です。今回紹介する解説は、最近のマツタケ研究の成果をまとめたもので、現在進行形の内容も含めて極めて興味深いものです。

 まず、前置きに、マツタケ研究における一連と課題として、
  1.マツタケに類似する近縁種との種間の識別と種内の変異
  2.腐生菌か寄生菌か、本当に共生菌か?
  3.マツタケ菌根の形態形成
  4.マツタケのシロの動態と子実体形成
を挙げており、これらに関して自らの研究グループの成果を紹介しています。

 この解説の中で新しい知見として紹介されているものは次の事柄です。
・マツタケ菌根は発達過程で菌鞘の菌糸が減少し、フェノール類が増加して黒変し、菌鞘が非常に変化に富む。
・菌根内では内皮まで達するハルティヒネットを確認した。
・DNA解析からこの菌根内の菌糸がマツタケであることが判明した。
・宿主アカマツの細胞とハルティヒネットの間で、活発な物質交換が行われていることをATPase活性の分布から確認した。
・アカマツ-マツタケ菌根の迅速人工合成法を確立した。また、人工菌根の結果、アカマツ苗の生長が促進された。
・これらの研究成果から、これまで「マツタケは半寄生的である」という見解もあったが、典型的な外生菌根菌であることが判明した。
・マツタケシロの菌糸体およびアカマツの根の伸長は、5月から7月に活発に認められ、根は再び9月に伸長して、シロは1年間に10cm伸長した。
・子実体発生位置との記録から、マツタケのシロの活性部位は一般に幅10~15cm、深さ10cmの環状型をなしている。
・マツタケ子実体1本が発生するのに必要な菌糸体量は約100gである。
・マツタケ菌糸にはデンプン分解能力があり、アカマツ樹皮やブナおが屑を栄養源とすることが可能である。
・人工培養のためのマツタケ菌糸の成長促進には、界面活性剤や天然植物油(オリーブオイル)が有効である。

 鈴木先生の解説はいつも手前味噌の感があるんですが、ここで紹介している内容はまだまだ解析途中とはいえ、なかなか面白いので機会があれば一度読んでみてください。

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