内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

春風駘蕩、澄み渡る空気、目に染みる青空、非常時の異様な静けさの中、この街は美しい

2020-04-10 23:59:34 | 雑感

 今日は復活祭前の聖金曜日、アルザス地方では祝日扱いで、大学も含め学校はお休みになる。国の祝日である復活祭の月曜日までアルザス地方は四連休になる。復活祭がちょうどヴァカンスと重なってしまうとそのありがたみも感じられないが、今年は外出禁止令下というまったく想像することもできなかった別の理由で祝日が霞んでしまった。
 3月16日に大学が閉鎖になってから、そちら方面に出向く理由もなくなってしまい、わざわざ足を向けることもなかった。スーパーもその大半がお休みしている今日、大学脇のガソリンスタンドを兼ねているスーパーは開いているはずだとそこまで自転車で出かけた。
 買い物ついでにキャンパス内をほぼ四週間ぶりに見て回った。建物はすべて閉鎖されているが、キャンパスにはまったく塀がないから、どこからでも誰でも入れる。まったく人がいないかと思ったが、意外にも、散歩している人やグラウンドで子供を遊ばせている家族連れなどをそこここで見かけ、マスクをしている人もごくわずか、その様子は普段の休日とそれほど変わりがなかった。
 ここまで来たついでと街の中心部まで足を延ばした。これも四週間ぶりだ。ちょうど昼時だったが、さすがに普段とはまるで違う。レストランや土産物店はもちろんすべて閉まっている。開いているのはパン屋・薬局などごく一部。普段は常時観光客で賑わっている界隈も閑散としている。ところどころで見かけるのは散歩かジョギングをしている人たちくらい。固く扉の閉ざされたカテドラルの前には人一人いなかった。これは早朝でもないかぎり、平時にはありえない光景だ。澄んだ青空を背景としたカテドラルの尖塔はひときわ美しく凛と屹立していた。
 心地よい春風に吹かれながら、非常時の異様なまでの静けさの中、この街の美しさが胸に染みた。