内的自己対話-川の畔のささめごと

日々考えていることをフランスから発信しています。自分の研究生活に関わる話題が多いですが、時に日常生活雑記も含まれます。

青空から虚空へ ― 西から東への哲学的架橋の試み(1)

2018-03-25 07:20:43 | 哲学

 西洋近代文学における空についての表象は、それこそ無数にある。対象を青空に限ってもそうである。
 しかし、天空の〈青〉がほんとうにその還元不可能な固有性とともに自覚され表象されている例はどれほど稀であることかとバシュラールは言う(L’Air et les songes, Le Livre de Poche, « biblio essais », p. 210)。というよりも、それはそもそもきわめて困難なことなのだ。ある物の色ではない〈青〉というのは、それ自体は表象のしようがない。軽やかに、たおやかに、どこに固着することもなく、他のなにものにも還元され得ない〈青〉。それは、どこか特定の場所にあるのではなく、いたるとろこにある。一切の実体化を拒否しつつ、現成する〈青〉。この〈青〉を私たちは物の色と同様な仕方では見ることができない。
 この〈青〉は、物象化しえない。それを表現するためには、したがって、非物質・物象化(dématérialisation)の力学を必要とする(ibid., p. 211)。
 この〈青〉を捉えうるのは、どのような精神の運動か。それは、青く、穏やかで、かぎりなく、形なく、最小限の実体性しか有さず、非物象性にあたうかぎり近い、ほとんど差異化されていない世界の中で、その世界と融合しうる存在の軽やかでたおやかな夢想である(ibid., p. 212)。