朝寝-昼酒-夜遊

日々感じたことを思いのままに書き散らすのみ。
※毎週土曜更新を目標にしています。

文楽と橋下

2012年07月27日 09時35分16秒 | 歌舞伎・文楽
橋下・大阪市長「文楽、演出不足だ」 古典鑑賞後に苦言- 毎日jp(毎日新聞)


確かに橋下は市長選で勝利したが、
別に文楽の芸術性やら方向性やらを指示・命令して欲しくて
市長選に勝たせた訳ではない。
そんなこと、公約にもマニフェストにも書いていないだろ?
その点では、別に市長といっても市民の代表者ではない。

そして大阪市の財政立て直しにおいて、
別に文楽の内容が市長様個人に受け容れて頂けるかどうかはどうでも良い。
「古典芸能として守るべき芸」と判断できればそれで充分。
それを客ではなく市長の立場で「演出不足」云々するのは、
伝統芸能であろうがなかろうが、
一生をその芸に賭して何がベストかと考え、生活している人に対して、
予算を持っているのをいいことに札びらで頬を張る行為であり、
無礼千万でしょう。
対する藤蔵のコメントは冷静であり、
(芸は兎も角、この点に関しては)好感が持てる。

「演出不足」と言っているが、それは難しいところ。
「曽根崎心中」は戦後のテキストであり、近代的に作られている方だと思う。
ただ基本的に、近代の理性的で「全てを表現し、伝える」手法に対して、
文楽などの日本の伝統芸能は「客に想像してもらう」ことで
より豊穣な世界にしようとするところに特色があると思う。
だから観客の経験や知識、思いによって受け取れるものは異なる。
増して、人間が表情を付けたり、リアルに人間を表現する芝居と違い、
「人形」が芝居をする文楽では、想像しなければならない範囲が広いのは当然。
まあ、橋下が「曽根崎心中」でさえ気に入らないのであれば、
夏休み第一部の「親子劇場」を見に行けば良い。
そうすれば、如何に文楽協会が子どもに向けて市場を広げようと努力しているか、
垣間見えると思う。

と書きつつ、1人の文楽好きとしては、
文楽劇場に通う回数が減っているのは否めないところで。
それは、技芸員、特に大夫のレベルが落ちている、と感じるから。
越路大夫や津大夫はいないので、
そのレベルを引き継いでいるのは住大夫だけ、
同世代では嶋大夫、さらに源大夫がいる、という状況。
その下では呂大夫が夭折し、咲大夫や土佐大夫、伊達大夫、といった
ところになるのかと思うが、
住大夫と他の大夫の差が大き過ぎる、と個人的には思う。
何と言っても、義太夫は言葉が聞き取れてナンボ、と思うのだが、
その粒の立ち方にどうやっても超えられない差があると感じる。
それは「客に合わせる」云々ではなく、
声を出す素養、基礎訓練の積み重ね、
床本を読む力、表現する力、といったレベルの話。
学歴社会が進んでいること、
小さい頃から義太夫に触れる環境ではないことを考えると、
このあたりは最早失われていく芸に対する繰言かも知れないのだが。
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松竹座「荒川の佐吉」

2012年07月27日 08時16分33秒 | 歌舞伎・文楽
月曜日は11時過ぎに松竹座へ。

昼の部最後の「荒川の佐吉」と夜の部最初の「義経千本桜」を幕見で見ようと思ったのだが、
「義経千本桜」は既に売り切れ。
「荒川の佐吉」も最後の1枚、になっていた。
辛うじて購入し、いろいろと時間つぶしをしていた。

「荒川の佐吉」を見るのは初めて。
仁左衛門の佐吉、新又五郎がその友人の大工辰五郎、
佐吉の後見になる相模屋政五郎に吉右衛門が付き合う。

真山青果の作品で、
任侠ものに「親と子の別れ」を絡めた、言わば「義理と人情」のせめぎ合い、
そこに近代的な理性的な台詞も絡んだ、なかなか興味深い作品。
最初の浪人者は梅玉なのだが、
佐吉の「勝つ者が強い」在り方を耳にしてそれに魅かれた、
恐らく何か道理を無理で抑えつけられた挙句主に離れた浪人が
斬る、という理由付けからして、
近代的な自我やら自分の在り方やら、といった思想が出ているように思う。
或いは佐吉が眼の見えない子について語る「心の眼が開こうとしている」というあたり。

筋としては、佐吉の親分にあたる仁兵衛に2人娘がいる、というところが
若干分かりづらかった。
1人は「丸惣」という大商家に奉公してそこで主の子を宿し、
もう1人が仁兵衛に付き添っている、ということなんやな。

何と言っても仁左衛門の佐吉が非常に素晴らしい。
ベースには任侠に憧れ、三下奴ではあるが親分に忠義を尽くす。
目の見えない「親分の孫」を引き取って養育することになるが、
甲州からの戻りが遅れた理由など、
根本的に子どもが好きであり、子をあやしたり、子について語る時の子煩悩な様子。
仇討ちの立ち回りの後、親分として見せる風格も良い。
子は可愛い、しかし義理も通さなければならない。
捨てた両親の反省や自分の可愛がり方が正しいのか、と疑問を持ち(ここは近代的)、
結局返すことになるがその際の「心で泣く」あたり、
非常に良かった。

これに絡む吉右衛門の政五郎が、またそれに勝る格を持つ親分。
仇討ちで立ち会う際の駕籠の幌を退ける際の声、様子。
その後、丸惣のお内儀に直った仁兵衛の娘を連れて
佐吉に説く際の話しぶり、声、動きなど。
或いは別れ際。
仁左衛門ののさらに上を行く大きさで、
この役がおさまり、説得力を持たなければ締まらん芝居だと感じた。

又五郎の大工辰五郎は狂言回しだが、
これも温かく。
佐吉の「人情」にあたる部分の強調・スパイスとして良かった。
歌六はあまり好きではないが、
この仁兵衛は、佐吉が何でこんな奴に仕えるんだ、
と理不尽さを感じさせる小さな親分であり、
この芝居では丁度良い感じ。
梅玉の浪人者も、青白い如何にもきりっとした悪人で、
声や姿から冷徹さが滲み出て良かった。
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第6回桂梅團治のこれ独演会?

2012年07月27日 08時03分32秒 | 落語・講談・お笑い
先週日曜は夜、繁昌亭へ。
いつもは梅田から歩くのだが、あまりに暑かったので
久し振りに南森町まで地下鉄に乗った。
梅田でも乗り換えで歩くし、南森町からも少しは歩くから
やはり地下鉄に乗るのは損した気分やなあ。


「千早ふる」(梅團治):○

いつもの「仕事がない」といった話、
かなりマニアックな鉄道の話。
さすがに「381系」とか言っても伝わらないと思うのだが、
それはそれで良いのかも知れない。

「千早ふる」は染語楼に習ったらしい。
そんなこともあって、懐かしく聞いていた。
最初の「娘の相談」での「万引き」「妊娠」「男だった」の3段のノリツッコミ繰り返しや、
父親がバクチと思っているあたりなど。
「便所から出てきた」は良いが、「尻拭かず」までいくと
少し行き過ぎかな、と感じなくもない。

細かいところで科白を足している
(例えば竜田川が千早や神代に肘鉄喰らうところで「相撲取りが嫌、というのが耳に入った」とか)が、
個人的には、まあ、どちらで良いかな、と思う。

繰り返しや仕込み→バラシは
吉朝にはないものが入っていたり、
逆に吉朝は入れているが入っていないものがあったりして、興味深い。
どちらも入れるとクドくなるのだろうな、と感じつつ聞いていた。

竜田川が千早におからをやらないところ、
竜田川が怒ってやらない、というより
千早が貰い辛くなってしまう方が好み。
あまり竜田川が悪い人間になって欲しくない、と個人的には思う。
ただ「おからくれなかった」と説明するから、
ある程度「くれなかった」要素も必要だろうが。

物語から「千早ふる」の説明へは普通に転換しており、
「最初が千早ふるやろ」に比べてキレは弱い。
個人的にはここでスパッと切れて「歌の訳ですか」でウケを取れると非常に良い、と思うので、
ここは少し不満。
歌の説明は男が「千早ふるは?」といった具合に順々に聞いていき、
それに対して隠居が合わせていくやり方。
これはこれで悪くない。

最後「とは」を聞かれたことに対していろいろ言うあたり、
少し行き過ぎと感じるところもあった。


「童謡批判」(桂竹丸):△

生で見るのは初めて。
顔の感じや雰囲気など、何となく三歩に似ている印象。

昔ラジオで聞いて、無駄にテンションが高く鬱陶しかったので、
あまり良い印象はなく聞き始めた。
テンションはその時に感じたほどは高くなく、
そこまでは不快感を持たずに済んだ。

では好みかというと、好みではない。
早口でギャグや小咄を続けていく芸。
反応を見て、妙な手の動きをしたり仕草を入れたりするのは、
変化としては悪くないが基本飛び道具。

「童謡批判」にあたるのも
いくつかの童謡を順々に俎上に乗せてツッコんでいく、というもの。
ありがちっちゃありがち。

芸協ではそこそこ「人気者」と扱われていたことがあったと思うのだが、
この程度、では、芸協のレベルが知れる、というもの。


「親子茶屋」(梅團治):△+

春團治に付けてもらったものらしい。
「可愛い女性はあまり合わない、想像して下さい」といった話からネタへ。

丁稚が若旦那を呼びに行ったり、
「鳴子を鳴らし過ぎると効き目がなくなる」といった話はなし。
特に後者は、毎日言っているであろう親旦那が「今後一切小言は言おまい」と言うことにつながる
ポイントとなる科白だと思うのだが。

若旦那の溌剌として、勢いのある感じが良かった。
旦那は、若旦那に小言を言っている場面ではそこそこ風格を見せていたが、
遊びに行ってからは下卑た感じが強く、良くない。
何となく年取ってから遊びに目覚めた、付け焼き刃の感じがするのだが、
実際には長年遊んでおり、それなりの蓄積があると思う。
そこが出ていなかったのが不満。

いろいろ言っていた芸者・舞妓は特に違和感もなく。
このネタ、別にそこはメインにはならないだろう。
ただ、遊びのほんわかとした雰囲気はあまり出ていなかった。
これは旦那の遊び慣れた陶然とした雰囲気が弱かったためだと思う。

若旦那が上がっての絡みはまあまあ。
「お前倅やないか」に対する「あんたおとっつぁん」の言い方、
ここで初めて父親を見た感じであり、喜んでいる様子なんだよなあ。
米朝は先に扇をとっており「見つかってしまった」と小さくなっている感じであり、
どちらが良いかはちと考える必要があるだろう。


「壺算」(梅團治):○-

自分の親の話など。
3代目が「壺算」を稽古していた、というのは驚いた。

2代目春團治ベースで仁鶴や枝雀を混ぜている、とのこと。
確かに2代目らしい古いフレーズが散見され、
これはこれで興味深い。
例えば「空気が抜けている」「パンクしている」といった悪口を受けての
アホの科白など。
テキストとしては、面白く組み合わされていると思う。

ただ、この人がある意味器用なのか、
それぞれの元の演者のテンポが残っており、
全体の統一感が不足した、気に竹を継いだ感が否めない。
特に「空気が抜けている」あたりでの2代目のテンポ、間のとり方、アホの作り方は
やはり特殊であり、
仁鶴や枝雀から来ている部分と合わせて一席の落語として聞くと、
アホと徳さんの関係やら、
アホのニンやらで違和感は残った。


「石田三成伝」(桂竹丸):△

こちらは石田三成と太閤の出会いから、三成を巡る話を軸にした地噺のような話。
ただ、出会いの(3杯の茶の)話の前にも関係ない小咄やらネタやらを散りばめており、
先ほどの話と何が違うのかよく分からない。
戦国大名の言い立てを入れているが、トチリも多いし、
演り慣れているだろうに、という印象。

サゲをつけており、
まあ、これは出会いの話とも絡めているので悪くなかった。

ただ基本同じパターンであり、
30分も聞いたり、2席聞いたりするべき人ではない、と思う。
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7月26日(木)のつぶやき

2012年07月27日 07時59分39秒 | つぶやき

都々逸坊扇歌の話、どこかで読んだ気がする。この本ではないと思うのだが。


posted at 09:02:11


金沢から帰路。ほとんど見ていないから、また来るだろうな。


posted at 11:43:12


伊藤園のオレンジティーが不味い(>_<)前も酷い目に逢ったのに。2度と買うまい。


posted at 16:11:39


大阪。金沢から5時間というところだな。


posted at 17:32:40


五輪が始まるんやな。「節電」と言うんだったら五輪の放映なんて電気のムダ遣いだろう、マスコミは「夜は構わない」とか言って都合良く立ち回るのかね、なんて悪口を言ってみたり。あと、祭りの中で政治絡みの話を誤魔化されないように気をつけておかんとな。


posted at 17:48:14


19時前でこの暑さ。「勘弁してください。許してください。」(10世家元桂文治「牛ほめ」)


posted at 18:53:49


賢そうには、見えない。>日本語+顔文字(^^) 女子大のとあるコース名が斬新だった - ねとらぼ http://t.co/04GnQWun


posted at 20:10:10


@jobuna_ashiba ワタシモデスカ?(笑)


posted at 20:25:41


「暴力的」と書かれている内容、日本では普通に警察がやっている「取調べ」行為じゃないの?日本の人権後進国ぶり(笑)>時事ドットコム:中国当局が「暴力的取り調べ」=帰国した北朝鮮人権活動家-韓国 http://t.co/CUk7ULlz


posted at 21:29:47


程度問題とはいえ、野村以外もやっているんじゃないの?損失補填の頃から、大口顧客優先の姿勢は変わっているとは思えないし。>時事ドットコム:監視委、野村処分を近く勧告=情報管理の体制不備で-増資インサイダー問題 http://t.co/4ciXJNMN


posted at 21:33:07


口上に並んで喋った、というだけなんだな。NGKでは漫談しかしない咄家も多いから、別に単独で高座に上がれるんじゃないかな。>桂文枝襲名披露で「落語家・さんま」一日限定復活:芸能:スポーツ報知 http://t.co/i7O3KpJN


posted at 21:36:42


@jobuna_ashiba それくらいならば大丈夫。ってか、元々知っていたっけ(笑)


posted at 21:38:42


お、連敗ストップか。これを機にタイトルを奪取できるのか、も?>藤井九段が勝ち、1勝1敗に 将棋王位戦第2局 http://t.co/1Vy883fo


posted at 21:48:17


暗黒時代しか知らない選手が監督をやると、暗黒時代基準の采配・要求水準になってしまうのだろうか。>時事ドットコム:阪神、また守備乱れる=プロ野球 http://t.co/l9BtqPXa


posted at 22:37:55



※「まとめ投稿」が飛んでいなかったので、twilogから編集。
 広告を載せるようにするくらいだったら、基本的なところはきちんとしろよ、
 gooブログ、NTTよ。
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