元祖・東京きっぷる堂 (gooブログ版)

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都会から来たシリメツレツ

2021-02-25 08:12:00 | 夢洪水(散文・詩・等)

   都会から来たシリメツレツ   



けらけら けらけら


あれのを走る冷たい風が、絵画的遠近感を私と、その奇妙な石と、木に垂れ下がった首吊りの縄の作り出す、この風景に、やけにボウッと、眼球にゼリーを、はりつけたように、ぼんやり印象づけている。

けらけらけら   この冷たい風は笑い声のようだ。

けらけらけら   風は北から吹いてくる。北は都会だ。私の故郷“都会”。

けらけらけら   そうか、この笑い声は都会なのだ。


都会

人々の憎しみ、苦しみ、悲しみ、妬み、狂気、嫉妬、快楽、幸福感、全てをひっくるめると、この“けらけらけらけら”の笑い声になってしまうのかも知れぬ。

風は、笑い声を、運んで来る。笑ってやるぞ、何が都会だ!

・・・・・さて。

私は、これから、この奇妙に積み重ねた石の上にのり、“いっち、にのさん”で、はねあがるのだ。

青一色の空に向かって跳ねるのだ。

そして、落ちる、落ちる。

私は木に、みのむしの如く、ぶらさがり、少しずつ少しずつ、落ちてゆく。

私の首が、細くなり、私の鼻から、口から、耳から、ジュルジュルと白いもの赤いものが、吹き出して、この笑い声を、子守り歌がわりにして、空に混じるのだ。

青い空の仲間入りをするのだ。

ふふ、君の笑い声に見送られて死ぬなんて!

私は最高に.......最高に、みじめじゃあないか。くそ!笑うな!

けらけらけら.......クソ!オレを笑っていやがる。貴様が勝手に、こんな俺を育てて、そして、そこから追い出したのだぞ!

滅びろぃ!滅んじまえェェェエエ!

やめた、やーめた。やめた。やめた。

自然に死ぬのを待つぞ。何が青空だ。この地球じゃ、どこ行っても、オマエの笑い声は、俺の耳を追ってくるんだ!あー、勝手にやるさ!

俺は勝手にやる!

私は、積み上げた石どもを、蹴り倒して、縄をひきちぎり、笑い声を聞くさ。

ここまできて、私は、オマエの思いのまま動かされていたことが、やっとわかったのだ。

逆転さ。こんな笑い声。今度は、その声の方が、みじめに聞こえらぁ。思いどおりにゃ、いかなかったろう。ヘーーだ。私は死なずに、又、オマエのところに戻ってやる。

オマエの中で死んでやる。できたら、オマエを道連れにしてくれる。

けらけらけら........くそぅ、又、笑っていやがる。

笑え!俺には、何一つできねぇ、できねぇよ。たった一つの反抗っていったら、オマエの中で、俺を変えてやる事だ。

(この男、幼児期、少年、青年、と人々に圧迫され続け、すっかり打ちのめされ怯えてしまい、いっさいの物事を判断できなくなってしまいました。人の顔色ばかりをうかがい、うかがわなきゃ何も出来ない、皆が皆がと、いつも世間を気にし、そのくせ、この男、変なプライドを持っていまして、回りの人々をバカにしてもいましたし、自分では孤独なアウトロー気分で、たちまわっておりました。こっそりと、好きな俳優の一挙一動を真似て、他人の個性を自分にかぶせて、かぶさったと信じて、自分は一級品だ、と思い込んで、まるで、卑小な精神異常者のような真の個性に目をそむけ、浅野忠信には似ても似つかぬのに、浅野忠信に、なっているのでした。)





そう、判断力が欠け、プライドが異常に高く、能力が無く、身体が虚弱で、心が陰気で、エゴイストで、意志が弱く、欲望が強く、持続力が弱く、劣等意識が強く、ナルシストで、自意識が強く、堕落に憧れ、生きるためのエゴが欠如している、

この男。
自分を浅野忠信と呼ぶ、この男、
彼の考える事、行なう事は、すべて一見全見、支離滅裂です!

その後、彼は・・・・・・・・・・

伊豆から帰って来て、1週間が、まばたきする如く、気付かぬまま、何も残さず記憶にもならずに、過ぎ去った。この一週間、何があったのだろう。オレのアパートは静かだ。何も無いと感ずるのは、この一週間は、とてつもなく平和だったという事だろうか。

オレは小田急線で新宿に着くと、目を半分くらいつむって、人を、なるべく見ないようにして、京王線に乗り、そして・・・。電車の中でオレは、やっぱり恥ずかしかった。恥ずかしくて身体全体が引きつって硬直してしまい、ぴくりとも動けなかった。やはり都会は強い。オレは、口惜しくて涙を流した。胸が激しく鳴り、唾液が喉から込み上げて来た。

................オレは浅野忠信だ.......オレは浅野忠信だ........

人々は、冷たい灰色の顔をして、突っ立っていた。

それからは憶えていない。久し振りの都会の雑踏に接したオレは、今まで以上に人間たちの存在に圧迫されて、頭のどこかの線がプツッと切れてしまったのかも知れない。オレは本当に自殺しに行ったのか?

気がつくと、この仙川のアパートに帰って寝ていたのだ。そして七日間、1歩も外へ出ず、食事は全てデリバリですませ、頭を空白にさせていた。

そうか!オレの頭は、いつも空白になる事を、欲しているんだ!


ド~ン.....ドンガラガッタァ~.....ド~ン、ド~ン!


そして、その時、、「大日本絶対愛国同盟」が、やすやすと、いとも簡単に東京中にしかけた大型核爆弾が一斉に爆発し、本当に彼の頭の中は空白になり、彼の頭の中だけではなく、東京中が空白になった。空白よ・・・永遠に・・・

ああ、都会に戻って、めでたし、めでたし。

けらけらけらけら~

    


           kipple