安井金比羅宮
(やすいこんぴらぐう)
京都市東山区東大路松原上ル下弁天町70
通 称
安井の金比羅さん
東大路通沿いに立つ鳥居。「悪縁を切り良縁を結ぶ祈願所」として有名です。
〔御祭神〕
崇徳天皇
(すとくてんのう)
大物主神
(おおものぬしのみこと)
源頼政公
(みなもとのよりまさこう)
東山を訪れた方は、一度は東大路通沿いに建つ「悪縁を切り良縁を結ぶ祈願所」という幕を掲げた鳥居を目にしたことがあると思います。この神社は安井金比羅宮。もともとこの辺りは藤や山吹の花が咲く名勝の地だったそうで、668年から671年の頃には美しい風景が広がるこの地を気に入った藤原鎌足卿が「藤寺」という寺院を建立し、藤原一門の繁栄を祈願したといいます。
安井金比羅宮の御祭神である崇徳天皇は、5歳という幼齢で1123(保安4)年に皇位に就きました。しかし幼帝を擁立することで強大な権力の維持を目論んだ曽祖父・白河法皇に実権を握られ、あげく1142(永治2)年には24歳という若さで異母弟・近衛天皇に譲位して退位せざるを得ない状況に追い込まれました。退位後も父・鳥羽上皇が院政を敷いて権力を掌握し続けたため、崇徳天皇は鬱々とした日々を送ります。そんな日々に潤いを与えてくれたのが、寵妃・阿波内侍です。1146(久安2)年、崇徳上皇は藤寺があった美しいこの地に彼女を住まわせ、たびたび行幸して癒しの時を過ごされていました。しかし、そんな時間も長くは続かず、近衛天皇の崩御後に皇位に就いた後白河天皇による圧迫により、次第に追い詰められていきます。
鳥居から長く続く参道の途中には、「絵馬の道」の石碑があります。
1156(保元元)年、崇徳上皇はこの状況を打開しようと武力による決起を図りますが、かねてから警戒を強めていた後白河天皇方の奇襲攻撃を受けて敗北(保元の乱)。この結果崇徳上皇は讃岐国に流されることとなり、阿波内侍との別離を余儀なくされます。上皇は自筆の尊影を彼女に下賜して讃岐へと下り、1164(長寛2)年に悲運のうちに無念の死を迎えます。悲報に接した阿波内侍は出家して尼となり、上皇の尊影を眺めながらひたすら冥福を祈ったといわれています。その後、この地に夜な夜な怪しい光が現れたことから、真言宗の名僧・大円法師がここを訪れたところ崇徳上皇の御霊が現れたため、建治年間(1275年~1277年)になって御霊鎮護のための光明院観勝寺が建立されましたが、残念なことに室町時代には応仁の乱の兵火に焼かれて荒廃してしまいました。
悪縁を切り良縁を結ぶといわれる「縁切り縁結び碑」。
後白河法皇の娘・亮子内親王は1200(正治元)年、太秦の安井の地にあった自らの御所に堂宇を建立し、平家打倒の軍を挙げて敗死した異母弟・以仁王の遺児である道尊僧正を開基とする寺院・蓮華光院を開きました。この寺院は、1695(元禄8)年に光明院観勝寺のあった場所に移転されますが、崇徳上皇の想いの込められた地に移されるということで、上皇にゆかりの深い讃岐国の金刀比羅宮を鎮守社として勧請し、御祭神である大物主神と崇徳上皇をお祀りすることで亡き上皇の御霊を慰めようとしました。この際、以仁王を支えて挙兵した功績を称え、源頼政公の御霊も合祀されることとなりました。人々は、鎮守社にちなんで「安井の金比羅さん」と呼び、厚い崇敬を寄せたということです。
その後、明治時代には廃仏毀釈運動のために蓮華光院は廃寺に追い込まれ、鎮守社のみが「安井神社」と改称されてその命脈を保ちます。戦後、国家神道が廃されて神道の宗教法人となった際に「安井金比羅宮」と改称され、現在に至っています。
拝殿(左)と、日本初の絵馬ギャラリーである「金比羅絵馬殿」(右)。
讃岐に流された崇徳上皇は、金刀比羅宮に参籠されて一切の情欲を断ち切り、ひたすら仏道修行に励んだといわれています。それにちなみ、ここは「断ち物の祈願所」としても信仰されてきました。男女の縁だけでなく、病気やギャンブルなど、全ての悪縁を断ってくれるという御利益があるそうです。さらに、流罪となって阿波内侍との悲しい別れを経験された上皇が、優しい気持ちで幸せな男女の縁を守り、それを妨げようとする全ての悪縁をも断ち切ってくれるそうです。境内にある「縁切り縁結び碑」には、ここを訪れた人々の悲痛なまでの願いが記された御札である「形代」が数多く貼り付けられていますが、悪意を持って男女の離別を望む祈願は聞き届けられることはなく、幸せを望む真っ直ぐな想いだけがその御利益に授ることが出来ます。
境内には、天満宮(左)や厳島神社(右)など摂社が立ち並びます。
アクセス
・JR「京都駅」より京都市バス206系統にて「東山安井」バス停下車、南へ徒歩1分
・京阪電鉄「祇園四条駅」下車、南東へ徒歩20分。
安井金比羅宮地図 【境内MAP】 Copyright (C) 2009 google
拝観料
・境内無料 ※絵馬館は拝観料が必要。(大人:500円、高校生以下:400円、幼児無料)
拝観時間
・常時開放 (絵馬館は10時~16時、月曜・盆・年末は休み)
公式サイト
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