神戸の空の下で。~街角の歴史発見~

足かけ8年、150万PV突破。「近畿の史跡めぐり」のサブタイトルも、範囲が広がったために少し変更しました。

大阪・今宮戎神社。

2010年01月06日 | ◆大阪府
商売繁盛・福徳円満

今宮戎神社

(いまみやえびすじんじゃ)
大阪市浪速区恵美須西1-6-10

神仏霊場大阪 豊楽の道・第4番札所
なにわ七幸めぐり・第6番札所
大阪七福神・恵比寿






〔御祭神〕
天照皇大神
事代主神
素盞鳴命月読尊稚日女尊



 今宮戎神社は、聖徳太子が建立した四天王寺の西方の守護神として600(推古8)年に創建されたと伝えられています。そして翌601(推古9)年の3月には聖徳太子自らが御祭神の祈誓を行い、市場鎮護の神として祀られるようになったといわれています。1274(文永11)年にはここに御厨子所が設けられ、毎日宮中へ鮮魚を納めるようになりました。これは南北朝の騒乱期こそ中断したものの、1557(弘治3)年には後奈良天皇の綸旨を賜って再開され、1868(明治元)年までの毎年正月、宮中への鮮魚奉納が行われ続けました。「朝役」とよばれるこの鮮魚奉仕を継続的に行うため、今宮戎神社は京都の四条油小路に土地と家屋を拝領していましたが、この土地が八坂神社の氏子地だったために祇園祭にも奉仕する事となったそうです。





今宮戎神社の社殿。「十日戎」が行われる3日間には100万人もの人出で賑わいます。


 
 平安時代の末期には四天王寺の西門に「浜の市」と呼ばれる市が開かれるようになり、市の守護神として今宮戎神社の御祭神が祀られるようになりました。この「浜の市」が繁栄するのに比例して今宮の「えべっさん」の御神徳も高まり、これを契機に諸業繁栄の神である「えべっさん」への信仰が庶民の間に広く根付いていく事となります。安土桃山時代に入っても「えべっさん」への信仰はますます高まりを見せていき、1609(慶長14)年には豊臣秀頼公によって社殿の造営や社領の寄進が行われるなど、今宮戎神社は庶民からも大名からも厚い崇敬を集める「商売の神様」として繁栄を続けていきます。江戸時代、「天下の台所」と称されるように大坂が日本経済の中心地としてさらに発展するにつれ、今宮戎神社も商業の守護神として上方商人たちから一層厚く崇敬されるようになり、有名な「十日戎」もそれに比例するように賑わいを見せることとなりました。明治維新ののちも経済発展の守護神として崇敬を集めていましたが、1945(昭和45)年3月14日の大阪大空襲によって社殿は灰燼に帰してしまいます。しかしながら11年後の1956(昭和31)年には氏子の皆さんや多くの人々の支援によって再興されました。





歌碑(左)と、社殿の右手に立つ大黒社(右)。


 
 御祭神の1柱である事代主命は、「出雲の国譲り神話」において神の託宣を受けて国譲りを決定するという重要な役割を果たした神で、「国譲り」を行った後に海中へと姿を消したといわれている事から、海の彼方から現れる「戎神」と結び付けられて祀られるようになったため、「商売繁盛の神」として崇敬を集めるようになりました。この事代主命は古来より耳の不自由な神といわれており、参拝する際には拝殿で祈願を行った後、本殿の裏にある羽目板を叩きながらもう一度大声で願い事をして念を押すという風習が残されています。





社殿の右奥にある稲荷神社(左)と、本殿の裏にある祈願の念押しの羽目板(右)


 
 「商売繁盛、笹持ってこい!」の掛け声で有名な今宮戎神社の「十日戎」行事は江戸時代になって始められたといわれており、前述したように元禄時代には現在のような祭礼のスタイルが確立されたと伝えられています。初詣の人出こそ50,000人ほどですが、「十日戎」が行われる1月9日の「宵えびす」、1月10日の「本えびす」、1月11日の「残り福」の3日間には実に100万人を越える人々が押し寄せ、いつもは静かな境内が「商売繁盛」を祈願する参拝客の熱気に包まれて大変な賑わいを見せます。

 「福笹」の笹は無料で授与されますが、この笹を飾り付ける縁起物の「吉兆」と呼ばれる小宝は参拝者が自由に選んで購入するシステムとなっています。「吉兆」は1,500円程度から数万円する物まで数多く取り揃えられており、銭叺・銭袋・末広・小判・丁銀・烏帽子・臼・小槌・米俵・鯛など様々な「吉兆」を自分で選んで購入し、「福娘」の皆さんに飾り付けてもらうというのが今宮戎神社の「十日戎」の特徴的なスタイルです。





社殿の奥に立つ大燈籠(左)と、境内の南のビルの狭間に立つ一の鳥居(右)。


アクセス
・南海電車高野線「今宮戎駅」下車すぐ。
・大阪市営地下鉄御堂筋線「大国町駅」下車、東へ徒歩5分
・大阪市営地下鉄堺筋線「恵美須町駅」下車、西へ徒歩5分
・阪堺電鉄「恵美須町駅」下車、西へ徒歩5分
・JR「新今宮駅」下車、北へ徒歩10分
今宮戎神社地図  【境内図】  Copyright (C) 2000-2009 ZENRIN DataCom CO.,LTD. All Rights Reserved.

拝観料
・境内無料

拝観時間
・9時~17時 (十日えびすが行われる1月9日~11日は終日)

公式サイト


福の神 えびすさんものがたり
吉井 貞俊
戎光祥出版

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