木村草太の力戦憲法

生命と宇宙と万物と憲法に関する問題を考えます。

審査基準と三段階審査(5・完)

2011-08-10 17:02:31 | Q&A 憲法上の権利
そして、②比例原則で審査しよう、なのですが。

渡辺康行先生や、私の師匠(高橋和之先生)は、
それぞれ別の方向から、

審査基準論と比例原則、ぜんぜんちゃうもんや!

とされているように見えます。


し・か・し、違憲審査基準論と呼ばれるものの内容を分析すると、
これ、ドイツ学派が比例原則って言ってるものの内容を整理してるだけじゃん、
というのが私の主張です。
(『急所』15ページ)

『急所』のこの箇所の理論水準については、非常に自信があります。

渡辺先生は、比例原則は手段審査に重点云々、としますが、
利益の均衡(狭義の比例性=相当性)の箇所では、いやおうなしに
規制目的の重要度という目的審査をせざるをえません。

高橋先生も、比例原則(特に猿払判決)と審査基準は全然違うといいますが、
猿払判決と学説の決定的な違いは、審査の枠組みではなく、
「公務員の外観的中立性」という保護法益の重要度に対する評価です。
(猿払は、この保護法益を、極めて重要もー最高と評価しています。
 なので、この事案で、仮に厳格審査基準を適用していたといしても
 この評価を維持する限り、結論は有罪です。
 ・・・。
 この辺りは、ブログよりちゃんと公式戦=学術論文でやるべきっすね。
 つい、ヒートアップしてしまった。)

はい。とにかく、この部分について、公式戦(学術論文)でケンカを売られたら、
きっちり勝ちきるつもりです。

・・・。


あ、ちなみに、答案作成的には、『急所』の枠組みで答案を書くと、
三段階審査論にコミットする方にも、
審査基準論にコミットする方にもわかりやすい形にまとまるので、
どんな試験委員相手にも、しっかり伝わるだろうと思っています。
(『急所』の論証例って、別に、そんなに新規=畢竟独自で読みにくい
 というものじゃないと思うのですが、どうでしょ・・・?)



あ、そうそう、ちなみに私の狭い意味での専門は平等原則で、
助手論文では、アメリカの平等関係の違憲審査基準の分析もしています。
はい。ですから、私、違憲審査基準論については、けっこう、自信があります^-^>

助手論文の表紙は、山本陽光さんの潜水艦の絵。




ぜひ、ご興味を持たれた方は、ぜひ南野的アマゾン様から^-^> 




はい。話がそれましたが、そういうわけで、

 ①法令審査の違憲審査基準を、処分審査と区別して考える必要はない。

 ②その枠組みは、急所15ページ以下の通り。

 ③比例原則は整理すると、審査基準論になる。

 ④③の部分の理論水準には、自信がある。

というのが回答になります。
(④は、回答というより、決意表明ですが^-^>)

はい、熱いご質問、ありがとうございました。
思わずヒートアップしちゃいました。
 


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14 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
ありがとうございました (迷える子羊)
2011-08-10 20:44:54
うわー、うわー、うわー。

木村先生、早速に、又非常にご丁寧なご回答をいただきありがとうございました。今までずっと疑問に思っていたことが氷塊いたしまして、思わず、叫んでしまいました。

この点については、主として私の読解力不足が原因であると思われますが、高橋先生、石川先生、宍戸先生、駒村先生、小山先生の審査基準論に関する論文等を読んでも疑問は解消されないままでした。

今回、「急所」と先生のご回答により、今後、自信を持って論証を展開していくことができそうです。また、先生をはじめ多くの憲法学の先生が指摘されるように、丁寧に(自動販売機型ではなく)防御権制約を認定することも肝に銘じたいと思います。

以上、長くなりましたが、本当にありがとうございました。今後も「急所」を丁寧に読み込みたいと思います。また質問する機会がありましたら、よろしくお願いいたします。

返信する
>まよえる子羊様 (kimkimlr)
2011-08-10 22:11:01
どうもありがとうございます。

一生懸命書いた記事なので、
そうおっしゃっていただけますと
うれしいです。

憲法に割ける時間というのは、
限られているとは思いますが、
ぜひ、楽しく有益な勉強時間になってくれると
うれしいです。

ではでは、ありがとうございました。

返信する
初めまして (かめ)
2011-08-10 23:21:27
初めてコメントします.
某ロースクール卒の受験生です.

憲法の急所を購入しました.楽しませてもらっています.このブログも楽しく読んでいます.
将棋の記事や,りんごアップルジュースの記事がお気に入りです.もちろん,ためになる記事もしっかり読んでいます.

今後のご活躍をも期待しています.


なお,mixiの方に憲法の急所のレビューを書きました(内容には触れておらず,表面的なレビューにとどめています)が,なお書きで木村先生のブログも楽しめる旨のコメントを書いていますので,今後ブログの読者「も」増えると思います.コメントへの対応が大変になってしまったら申し訳ありません.


最後に,憲法の急所の内容についていくつか質問が出てきましたので,自分で解決できなければコメントするかもしれません.面倒でなければお付き合いいただければと思います.

では,ご挨拶ということで,失礼いたします.
返信する
>かめさま (kimkimlr)
2011-08-11 19:47:50
どうも、ご挨拶ありがとうございます。
確かに訪問者が増えました!!

今後もどうぞよろしくです。

ちなみに、チーズバーガーの判例って
何だと思います?
返信する
うん。とてもわかりやすい。 (Unknown)
2011-08-11 20:48:15
助手あがりはぱないな。

ブログ主よりはるかに年長のロー修了生ですけど、
物凄く勉強になりました。

なんか頭の使い方を示していただいて有難いです。

これからも期待してます。
返信する
>Unknown様 (kimkimlr)
2011-08-11 22:01:24
ブログがお役に立てた様で良かったです。
^0^>
返信する
Unknown (かめ)
2011-08-11 23:40:03
このブログの訪問者が増えたのは「憲法の急所」の出来が素晴らしかったからだと思います.特に,講義編を立ち読みして惹かれた読者が多いと聞きます.実際,私は,先生が自信を持っているという箇所の記述を読んで,目の前の霧が晴れた感覚になりました.

ただ,学生から見ると,学会での議論があまり開かれているとはいないので,「木村先生ってどんな人だろう」と,ちょっと検索してこのブログにたどり着いたという方が多いのではないでしょうか.個人的には,もっとオープンな学会にならないかなーと思っています.



さて,チーズバーガーの判例ですが,2つあります.1つは札幌税関事件(最大判s59.12.12-①判例)で,もう1つは福岡県青少年保護育成条例事件(最大判s60.10.23-②判例)です.


まず,チーズ入りバーガーとチーズバーガーの関係ですが,「入り」とは,通常の判断能力を有する一般人から見ると,「一部として」という理解になると思います.ということは,どんな形であれチーズが一部に含まれていればよいので,例えば,チーズをパンとパンに挟んだハンバーガー,チーズをパンの上に乗せたハンバーガー,材料の中にチーズを混ぜたハンバーガーがチーズ入りハンバーガーになります.そのうち,チーズバーガーは,チーズをパンとパンに挟んだハンバーガーですね.これだけならば,実行委員の要求は無理!だと思います.これは,風俗には文化的風俗や宗教的風俗や性的風俗などが含まれるとした判例と類似します.


しかし,ハンバーガーの構造をさらに考えると,「一部として」というのは「挟んで」を意味するはずです.材料の中にチーズを入れたものは,チーズを隠し味にしたただのハンバーガーでしかないでしょう.すると,チーズをパンとパンに挟んだハンバーガーはチーズ入りバーガーだが,例えば,チーズをパンの上に乗せたハンバーガーは,ひと工夫したただのハンバーガーということになりそうです.これは,関税定率法21条1項3号にいう「風俗を害すべき書籍、図画」等を,法律の仕組み解釈によって限定解釈した①判例と類似します.また,規定の文理から合理的に導き出され得る解釈の範囲内かどうかという②判例の枠組みにも合致します.


ここでさらに問題が生じます.文理のみではなく,食中毒を回避するという乳製品禁止の立法趣旨を加味すると,そもそもチーズを利用すること自体が禁止され,チーズをパンの上に乗せたハンバーガーを作ることも禁止されます.しかし,これではチーズを利用したひと工夫あるハンバーガーを作ることができなくなり,文化祭の趣旨に合致しなくなります.そこで,食中毒の危険がないチーズの利用ならば可能という解釈を導くため,チーズの種類を限定するということができるのではないでしょうか.粉チーズ(笑)や,常温でも長時間保管できるチーズ.これは,②判例の「淫行」の限定解釈の思考過程と同様だと思います.


結果,②判例に対する批判(「淫行」をひどい手段を用いた淫行に限定解釈するのは無理)と同じように,チーズを粉チーズや常温でも長時間保管できるチーズに限定解釈するのは無理と同じ批判が成り立ちます.


いかがでしょうか?
先生の意図とかなり外れている自信があります(苦笑)
やはり事例問題って難しいですね.パズルみたいで楽しい側面もありますが.
返信する
>かめさま (kimkimlr)
2011-08-12 13:13:06
ほむほむ。

真剣に考えてくださってありがとうございます。

なるほど、そうきましたか!という感じです。
コメントをくださり、まことにありがとうございました。


『急所』、企画段階では、論証例付演習問題
というのがウリになるのでは、と
言われていたのですが、
(実際、第二部は好評なのですが)、
第一部の評判もとてもよく、すごくうれしいです。

ではでは、かめさまもまたブログに遊びに来てください。
チーズバーガーの記事も、
更新してゆこうと思います^-^>
私の出題の意図も、その時に^-^


返信する
初めまして (あとうともき)
2011-08-12 20:40:20
木村草太先生


いつもブログ拝見させてもらっております。
ロースクール修了生の「あとう」と申します。

『憲法の急所』は,まだ一読しかしておりませんが,
今夏中に読みきるつもりでいます。
ブログと併せて読みたいと思います。

私は,ロースクールを修了してもなお,①適用審査にも法令審査と同様の「違憲審査基準」が使えるのだろうか。
②三段階審査は魅力的ではあるが,狭義の相当性の場面は比例原則にすぎないため,表現の自由の優越等,人権の重要性を論ずることはできないのではないだろうか。
という2点がずっと疑問でした。

この2点の疑問が,先生のブログを読んで解消されてきました。ありがとうございます。


さて,上のコメントで「かめ」さんがチーズバーガーの判例は何かについて答えてくださっています。
「かめ」さんのお答えは,なるほどというものであり,私には考えつきませんでした。

もっとも,「チーズバーガーの判例」が1つの判例であるとしたら,私は都教祖最高裁判決(最判S44・4・2刑集23巻5号305頁)ではないかと考えます。

すなわち,争議行為=乳製品の使用禁止,あおり行為=乳製品の調理方法として,

1.法は,争議行為を一律禁止する(=乳製品の使用禁止)。

2.しかし,公務員にも労働基本権が保障されるため,すべての争議行為を禁止し,これに刑罰を課すことは,必要やむを得ない限度を超えているというべきである(=ハンバーガー屋の模擬店を出すことが許されており,かつ,チーズバーガーはどこのハンバーガー屋にも置いてあるメニューであるから,乳製品の使用が禁止されているからといって一律にチーズを使用禁止にすることは妥当でない。校長先生もチーズバーガーが大好きだし。)。

3.そこで,公務員に争議行為・あおり行為を禁止する法の趣旨から解釈して,政治的中立性を害さない争議行為・あおり行為は許されるべきである(=食中毒の予防の必要性から考えれば,チーズに十分に火が通る調理法を用いるならばチーズの使用を認めてもよいだろう)。

4.したがって,争議行為のなかに違法性の強いものと違法性の弱いものとの区別を認め,かつ,刑罰を課することのできるあおり行為とは,違法性の強い争議行為に対する違法性の強いあおり行為をいうものと限定解釈すべきである(=乳製品のなかに,食中毒を起こしやすいものとそうでないものとの区別(チーズは食中毒を起こしやすい)を認め,かつ,禁止される乳製品の調理方法とは,食中毒を起こしやすい乳製品を十分に加熱殺菌できない方法で調理するもの(チーズ入りハンバーガーは肉の中にチーズが入るため十分に加熱殺菌できないが,チーズバーガーは肉とともに焼くためOK)をいうと実行委員会は解釈した)。

という構造なのではないかと考えました。


上記の構造には無理なところがあるため,正解という自信はありません。
しかしながら,①チーズ入りバーガーよりもチーズバーガーの方が狭い概念であるということ,②同じくチーズという乳製品ど真ん中の食材を使っているのにチーズバーガーのみが許されること,および,③無理な合憲限定解釈に非難が加えられている判決だろうという3点を考えると,合憲限定解釈して被告人が救済された都教祖最高裁判決なのではないかと思いました。


長文のコメント失礼いたしました。

これからも先生のブログの更新楽しみに待っております。
返信する
>あとうともきさま (kimkimlr)
2011-08-12 22:07:05
こんにちは。
どうもありがとうございます。

ご疑問が解消されたようで、とてもうれしいです。
司法研修所の先生にもよろしくお伝えください。
また、研修所の教官の先生方にも、私のブログと『急所』紹介していただけると、とてもうれしいです。


す・あ・て、チーズバーガーですが、
なるほどです。
そういう考え方もあるのかと思い、
読んでいてとても楽しかったです。

いま思いついたのですが、
司法試験でも、判例の高度の理解を問いたいのであれば、
私のブログを引用し、
「さて、この判決は何か?
 理由とともに示せ。」という問題を出してみてはどうでしょう。

採点者もとても楽しいと思うのですが・・・。

ではでは、私のチーズバーガーが、あとうさまの
ご解答に負けていないとよいのですが・・・。

また、チーズバーガーの正体の記事
書きましたら、コメントいただけると幸いです^-^
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