木村草太の力戦憲法

生命と宇宙と万物と憲法に関する問題を考えます。

積極目的による財産権(既得権)制約

2012-04-20 08:01:51 | Q&A 憲法上の権利
今日は、財産権についてのご質問を紹介します。

財産権と営業の自由 (ノブコフ176)
2012-01-13 05:42:04
 はじめまして。先生。大好きです。さて、質問させていただきます。
 「財産権の主張に積極目的規制だから緩やかに判断しよ!!という反論はダメなのですか?」という質問です。

 第五問の急所203Pの、本件では財産権の主張の方がよさそうだというご趣旨の記載に関してです。営業の自由の適法制約についての正当補償請求権を明示的に補償した規定がないからという理由は理解できました。しかし、積極目的規制に分類され、緩やかな審査基準が設定されてしまいそうだから、財産権主張の方がよいとの記載について頭がこんがらがってしまいました。

 第六問の解説を僕は、「積極目的規制は、いわば公的カルテルだから、いろいろくまなく専門的に調査して評価した上で、民主的正当性を確保したい。そーゆー規制は、そーゆー調査に優れた、民主的正当性を確保する機関の立法府に任せるべき。だから、緩やかに審査しよーぜ。」というものだと理解しました。

 それは、第五問でも同じことがいえる気がして、財産権であっても、被告に積極目的規制だ!!と反論させたくなってしまいました。多分僕は、積極目的規制はが営業の自由だけでなく、経済的自由権一般に妥当するものだと思ってしまっているのです。
 「積極目的規制は既存業者を保護するもので、公的カルテルだから、片方の営業の自由を制約し、片方の営業の自由を保護するのが前提になっている規制。だから、財産権主張の反論にならないのかなー。」とか、「でも、片方の財産権を制約し、片方の財産権を保護することも積極目的規制なんじゃないかなー。。」とか頭が混乱し、急所愛読仲間に質問しようとしたのですが、僕は「歩くミスリーディング」とよく友達から罵られるので、怖くなって友達を巻き込むことはできませんでした。ブログを拝見したところ、先生が暖かく優しく質問にお答えしてくださってるので、先生を頼りたくなりました。どうか、稚拙な私の質問にお答えいただけないでしょうか。


>ノブコフ176さま (kimkimlr)
2012-01-13 07:36:42
うーんと、財産権(既得権制約)と目的の積極・消極ですが、
判例は、積極目的だから緩やかに審査する、とは考えていないように思います。

既得権は予測可能性のための権利なので、
そういう保障根拠からすると、積極目的の方が
むしろ重大な侵害になりやすい、という考慮かと思います。

これに対し、営業の自由との関係では
目的がどうだろうと原告の生存と人格に与える影響は同じなので、
積極目的の方が重大な侵害だ、とはなりにくく、
他方、公権力側の事情(第六問で解説)からすると、
積極目的の方は認めてもいい規制なので、
ああいう議論になるのかな、と思います。

ただ、学説レベルでは、既得権保障を含めて
経済的自由権一般について、裁判所の政策判断能力から、
積極目的緩やか審査と言いますので
(芦部『憲法判例を読む』参照)、
第六問の考慮を財産権に及ぼすこともできるかな、と思います。

ありがとうございました。 (ノブコフ176)
2012-01-13 10:53:10
昨日3時間くらい悩んでいたのですが、先生のおかげで理解することができました!!本当にありがとうございます!!

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