ごっとさんのブログ

病気を治すのは薬ではなく自分自身
  
   薬と猫と時々時事

収入まで「遺伝」で決まる 行動遺伝学

2020-01-24 09:56:14 | その他
ほぼあらゆる個人差には、無視できない遺伝の影響があります。

この「ほぼあらゆる」には身長・体重、心身の健康度、発達障害や精神疾患、犯罪、パーソナリティ、社会的態度、知能、学力、さらには職業適性や収入など、人が社会の中で生きるとき気になる側面がおおむね網羅されています。

「無視できない遺伝の影響」とは、大体30~60%程度で、特に知能や学力、精神疾患は遺伝率の高い方(50~60%)に位置づいています。一方社会的態度は30~40%程度ですので、遺伝で説明できない割合の方が大きいとも言えます。

しかし人間は環境次第でどうにでもなるほど環境に従順ではなく、良きにつけ悪しきにつけその人物の内側から出る遺伝的な持ち味を、程度の差こそあれ発揮しています。

「行動のあらゆる側面には遺伝の影響がある」というのが行動遺伝学の第一原則となっています。ヒトの形質への遺伝の影響は、遺伝子が全く同じ一卵性双生児の類似度を、環境は同じ条件だが遺伝子が半分しか同じではない二卵性双生児の類似度と比較することによって得られます。

この双生児法によると社会的態度の一卵性の一致度30~50%で、二卵性は15~25%程度にすぎません。大きいのは同じ家庭で育っても一人ひとり異なる環境があり、それを非共有環境と呼んでいます。

この例として、ネクラな人でもマクドナルドのレジに立ち、客に笑顔を作り元気に対応すれば明るく見えます。しかし客に見られない厨房や家に帰れば普段通りのネクラな自然の姿に戻ります。

一方生まれつき明るい人は、レジの前でも厨房でも家族の前でも明るいでしょう。これが根本的な違いであり、ネクラな人がこの仕事を何年も続けることにより、明るい性質になるという事はおそらくないでしょう。

レジ打ちや厨房を仕切る知識は学習によって身に付きますが、社交性や勤勉性などのパーソナリティは、学習された知識により作り出されるものではないからです。

それはドーパミンやセロトニンといった神経伝達物質が、それぞれの遺伝子タイプに従って、どの程度の配分で調合されて脳の中で放出されているかの違いによります。

学校を卒業したてのころ、収入の個人差を一番説明するものは共有環境で、およそ50%がこれで説明でき、遺伝の影響は20%にすぎません。

ところが親の七光りなどで与えられた共有環境による貧富の差は、その後20年余りをかけて仕事をこなすに従って、徐々にその人自身の遺伝的実力があらわになってきます。

つまり収入は、その人の遺伝的素質をどれだけ伸ばし続け、その時たまたまどんな仕事に恵まれていたかでほぼ説明がつき、はじめにあった親や親族のコネの影響など雲散霧消してしまうという事です。

これが行動遺伝学的解析ですが、まあこういった見方もあるのかもしれません。