ごっとさんのブログ

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植物色素 アントシアニン

2015-09-18 10:30:11 | 化学
アントシアニンという名前は、あまりよく聞くというほどのものではありませんが、わりと身近な自然の中にあるものです。この化合物名については、最近はブルーベリーの青色色素で、目に良いなどと宣伝されています。

アントシアニンはフラボノイドといわれる化合物群の一種で、いわゆるポリフェノールの仲間になっています。ポリフェノールというのは、ベンゼン環にOH(水酸基)が付いたものがフェノールで、ベンゼン環が二つくっつき、それにいくつかのOHが結合したものです。こういった化合物は非常に酸化されやすく、簡単にキノンと呼ばれる物質に変化します。つまり自分自身が酸化されやすいということは、ほかの物質を還元する力があるということで、抗酸化物質と呼ばれています。

この抗酸化作用があるということで、体に良いとされているようですが、基本的には毒物で通常はごく微量しか体に入りませんので、問題はないようです。身近なアントシアニンとしては、秋の紅葉できれいな赤になるモミジの色がこのアントシアニンです。これは夏ごろまではモミジの中にはないのですが、徐々に作られ蓄積していきます。ところがこの赤色は葉緑素の緑色に隠され、現れてきません。それが低温になることによって、葉緑素が壊れ緑色が消えると、一気にその下の赤色が出てくるわけです。なぜモミジはアントシアニンをためていくのかは、よくわかっていないようですが、一日で真っ赤になるというのは、こういったメカニズムです。

ほとんどの花の色はこのアントシアニン色素の色で、主骨格のOHの数によって色が変わってきます。またこの色はpHにも依存し、朝顔の青い花に、酢酸などを加えると赤くなったりします。

このOHの数によって花の色が変わることを利用したものが、サントリーが開発した青いバラの育種です。バラという種類は、OHを導入する酵素(水酸化酵素といいます)がないために、アントシアニンの青色を出すことはできませんでした。そこでバラの遺伝子の中に、ほかの花からとった水酸化酵素遺伝子を組み込み、青いバラの開発に成功したわけです。これは遺伝子工学というような分野では、植物では先駆け的な研究で、実験室的に成功したという話を聞いたのは、もう25年も前のことですので、実用販売までにはずいぶん長時間かかったことになります。青いバラにそれほど商品価値があるとは思えませんが、いわば夢を実現させたというところに価値があるのかもしれません。

このようにアントシアニンはかなり身近な物質なのですが、安定性が悪いという性質で、実用化されていませんが、色々な花の色を楽しんだり、紅葉を愛でたりとそれなりに人間の役に立っている化合物です。