田園都市の風景から

筑後地方を中心とした情報や、昭和時代の生活の記憶、その時々に思うことなどを綴っていきます。

沖端水天宮祭  三神丸の舟舞台

2019年05月09日 | 柳川

 まだ夏には早い五月の水路(すゐろ)に杉の葉の飾りを取りつけ初めた大きな三神丸(さんじんまる)の一部をふと學校がへりに發見した沖ノ端の子供の喜びは何に譬へよう。艫の方の化粧部屋は蓆(むしろ)で張られ、昔ながらの廢れかけた舟舞臺には櫻の造花を隈なくかざし、欄干の三方に垂らした御簾(みす)は彩色(さいしき)も褪せはてたものではあるが、水天宮の祭日となれば粹な町内の若い衆が紺の半被(はつぴ)に棹さゝれて、幕あひには笛や太鼓や三味線の囃子面白く、町を替ゆるたびに幕を替え、日を替ゆるたびに歌舞伎の藝題(げだい)もとり替えて、同じ水路を上下すること三日三夜、見物は皆あちらこちらの溝渠から小舟に棹さして集まり、華やかに水郷の歡を盡くして別れるものゝ、何處かに頽廢の趣が見えて祭の濟んだあとから夏の哀れは日に日に深くなる。
 この騷ぎが靜まれば柳河にはまたゆかしい螢の時季が來る。

                            北原白秋 「思い出ー抒情小曲集」より (青空文庫版)

 

 毎年5月3日から5日まで、柳川沖ノ端に鎮座する沖端水天宮祭が行われます。 

 一昨年初めてこの祭りに来ましたが、今年は夜の舟舞台を見ようと中日の夕方から出かけました。沖端水天宮はごく小さな社です。

 舟舞台では芝居が始まっていました。6隻の小舟の上に、釘を使わず舞台が組まれています。この神社には水天宮のほか稲荷神社、祇園社が祀られており、それに因んで三神丸と名づけられています。

  幕間に子ども達による囃子が演奏され、地元青年部の若い衆が舞台を稲荷橋へと移動させています。船の様子は「思い出」で語られる白秋の時代と変わりありません。右手の建物が水天宮です。舟を漕ぐ若衆のカンカン帽がお洒落です。

 まだ明るいので少し周りを歩くことにしました。堀端の酒屋です。いかにも酒屋という雰囲気が出ています。菰樽は近くの八女市にある酒蔵の銘柄「繁枡」でしょう。若いころに愛飲していました。

 沖の端には数軒の鰻屋があります。柳川はせいろ蒸しが名物ですが、この日はどこも営業を終了していました。店先では「うなむす」を販売しています。蒸した鰻のおむすびだと思いますが、私は食べたことがありません。

  川下りの終点近く、営業を終えたどんこ船が静かに舫っています。

  旧藩主立花家の料亭旅館「御花」の洋館にあかりが灯っていました。

  沖ノ端に戻ってきました。昔と変わらぬ縁日風景です。

 掘割の両岸に夜店が並んでいます。「三神丸」はこの掘割をお囃子を演奏しながら行きつ戻りつします。舟舞台は水天宮と沖ノ端地区の6町内それぞれに奉納するため、船を止める場所は決まっています。この堀の正面が立花家の御花で上流になり、上りと下りで曲が違うそうです。

  演歌に振りを付けた踊りが披露されています。三波春夫の唄でした。

 

 舟舞台の三方は幕間に御簾が下ろされます。囃子方の後方には白秋のいう化粧部屋。小さな楽屋です。

  囃子方は笛に太鼓、そして三味線で、別名オランダ囃子と呼ばれる水天宮囃子を披露します。

  掘割の夜は更けていきます。

 今度は芝居が上演されています。どうやら忠治物らしいです。船に張られたポスターを見ると、旅芝居の一座のようです。舟舞台の芝居とお囃子は夜の10時まで、祭り期間中、三日三晩上演されます

  夜も8時を過ぎたので帰ることにしました。社務所の横を通ります。

 歩いていてもまだ縁日の浮いた気分が残っています。祭りの世話方と、あるいは見物客同士、知り合いに声をかける姿も見られます。都会とは違う田舎の祭りもいいものです。

  一昨年の昼の舟舞台の様子はこちらです。

 

 

 

  

コメント (3)    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 大興善寺のつつじと新緑 | トップ | 道の駅に泳ぐ鯉のぼり »
最新の画像もっと見る

3 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
御花 (tango)
2019-05-10 06:12:42
ここで蒸篭虫をいただいたのはいつのことだったか・・・川下りも十数年前・・・
夜の風情もいいものですね!
おはようございます (九州より)
2019-05-10 07:40:01
私が川下りをしたのは一昨年の夏でした。
暑かったですね。
川下りは今頃か秋がベストシーズンです。
せいろ蒸しは久留米の大善寺町黒田という地区も名所です。
何軒も鰻屋さんがあります。
訂正 (tango)
2019-05-10 13:03:26
せいろ虫・・・?
ごめんなさい・・恥ずかしい変換ミス(^^♪
蒸篭蒸し

コメントを投稿

柳川」カテゴリの最新記事