架空庭園の書

音楽への"homage"を主題として、思いつくまま気侭に書き連ねています。ブログ名はアルノルト・シェーンベルクの歌曲から

アニタ・オデイのLive at Basieを聴く

2012-07-12 | 音楽


1958年の第5回ニューポート・ジャズ・フェスティバル"Newport Jazz Festival"を記録した映画『真夏の夜のジャズ"Jazz On A Summer's Day"』のことを話してから唄いだした《Tea For Two》。

映画でのアップテンポとは異なりぐっと抑え気味のテンポ。そうか、やっぱり落ち着いたのかな、年齢もあるし...と思ったら大間違い。たちまちアップテンポでグイグイと飛ばし始める。バックバンド(といってもピアノトリオだけど)との掛け合いや、アドリブにフランツ・リストの《ハンガリー狂詩曲第2番》のフレーズがさりげなく組み込まれたりと、この雰囲気は映画のものと似ている。
アンコールで唄われた《Tea For Two》は途切れることなくアントニオ・カルロス・ジョビンの《Wave》---ジョビンはそれこそたくさん曲を書いたが、この曲は《3月の水》とならんで僕にとってのベスト3に入る-----へとつながってゆく。

ジャズ喫茶でのライブ収録はコンサートホールでのそれとはやはり異なり、会場との一体感、インティメートな空気感が感じられる。

ベートーヴェンの弦楽四重奏曲全曲マラソン(?)中ではあるのだが、《ハープ》まできて一息入れたくなった。

「私は人間の声が好きなのだ」とプーランクはたびたび語っている。

これは最近読んだ村上春樹の「意味がなければスウィングはない」のプーランクのところに書いてあったのだが、そんなこともあり、このエントリーはどこかalla Haruki かもしれない。



そして僕もプーランクと同じように人間の声が大好きなのだ。

ということで(?)お気に入りの1枚アニタ・オデイのアルバム《ANITA O'DAY Live at BASIE》を聴いた。

1. Let's Fallin' Love 恋をしましょう
2. Honey Suckle Rose ハニーサックルローズ
3. It Don't Mean a Thing スウィングしなけりゃ意味が無い
4. Like Someone In Love ライクサムワンインラヴ
5. Candlelight & Wine キャンドルライト&ワイン
6. On A Clear Day You Can See Forever 晴れた日に永遠が見える
7. Love For Sale ラヴフォーセール
8. On Green Dolphin Street オングリーンドルフィンストリート
9. Four Brothers フォーブラザーズ
10. You Are The Sunshine Of My Life ユーアー・ザ・サンシャインオブマイライフ
11. I Cried For Youアイクライドフォーユー
12. Encore / Tea For Two - Wave 二人でお茶を-波

Vocal: アニタ・オデイ Anita O'Day
Piano: ドワイト・ディッカーソン Dwight Dickerson
Bass: ハーヴェイ・ニューマーク Harvey Newmark
Drums: ジョン・プール John Poole

リラックスした雰囲気の中、スタンダードなナンバーを------スティービー・ワンダーの《You Are The Sunshine Of My Life》なんて新しめ(他の曲に比べればね)も交えてアニタは唄いまくり、そしてMCでしゃべりまくったようだ(CDではその一部しか収められていないが、そうであることは十分伝わってくる)。

《Candlelight & Wine》という唄はこのアルバムで初めて知ったが、その歌詞はまさに大人のもの。

Then if you should touch your lips to mime,
We'l live a moment divine
with Candlelight and Wine

《Love For Sale》では、最初に《Fallin' In Love With Love》を、《You Are The Sunshine Of My Life》では《You Are My Sunshine》を付けたりしていて、聴いていてついニヤニヤしたくなるのだ。こういうの、僕はとても好きなんです。

というのは

今は昔、音楽を稼業としていたころがあり、演奏したり、編曲なんぞをしたりしていた。
そんなころに、アニタと同じく(?)《Tea For Two》をやったときには、曲中に《小さな喫茶店》をタンゴのリズムで挿入したり、《Yesterday Once More》では《Yesterday》を交互に入れたりした。

When I was young I'd listened to the radio
Yesterday all my troubles seemed so far away
Waitin' for my favorite songs
Now it looks as though they're here to stay
というような感じにね。

こういうのは僕のテイストにフィットする。
わかる人にはわかるし、わからない人はまったくわからない、いわば隠し絵のようなもの。
「粋だねぇ」とすら思う(自分でいうのもなんなのだが)。

映画におけるアニタ
今から60年近く前のものとは思えないほどおしゃれ。アニタだけでなく会場内の人々(IVYルック?)も。ただ、やたらと食べているシーンが多い。どういう意図でそのカットが選択されたのかわからないが、フロイトでいうところの口唇期なんて言葉も連想したくらいだ。



ベイシー
このライブが収録されたベイシーとは岩手県一関のジャズ喫茶「ベイシー」。この店を知らないジャズファンはいないだろう(行ったことがあるかは別として)からここでは触れない。

タモリ ジャズ喫茶ベイシーに出現 


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