架空庭園の書

音楽への"homage"を主題として、思いつくまま気侭に書き連ねています。ブログ名はアルノルト・シェーンベルクの歌曲から

相模原市民交響楽団 第27回定期演奏会

2008-06-22 | 音楽


後半の《ライン》になって、音楽に芯が通り、流れ出した。
全体によく練れたアンサンブルで、テンポやディナーミクの変化に丁寧さが感じられた。
大雨の気配があるなか、出かけた甲斐があった演奏会。

6月22日(日)
グリーンホール相模大野 大ホール
相模原市民交響楽団
指揮:田代俊文

C.M.v.ウェーバー:歌劇《魔弾の射手》序曲
P.ヒンデミット:ウェーバーの主題による交響的変容
R.シューマン:交響曲第3番 変ホ長調 作品97 《ライン》 


魔弾の射手
まず、短めの作品からスタートという今日のプログラム構成は、弾く側だけでなく聴く側にとっても理に適っている。前半はウェーバーつながりとなる。ホルン(4本)そしてウェーバーが好んだクラリネットをはじめとして管楽器セクションの手堅い演奏。

ウェーバーの主題による交響的変容
アマチュアでも時折取り上げることがある程度の「珍しさ」だろう。今日の目的は、この曲。曲に情感を込めたり、ましてやそこに「人生の苦悩と歓喜」といったテーマを持ち込むことなく、いかに実用的な音楽を作るかを目指したヒンデミット。その乾ききったなかに、それでも残る叙情がヒンデミット作品の面白さではないだろうか。そのためには、演奏がもっと芯をもち、かつドライに進まないと出現しない。今日の演奏では、最後の"Marcia"でいくらか感じられた程度に留まる。

ここまで聴いた感じだと、全体に大人しいオーケストラで、ソツなくまとめているかと思われたのだが...

ライン
聴き応えがあった。オーケストラが作り出す音楽は、前半とは別のような安定感と運動性を感じさせた(これを芯が通ったと書いた)。生き生きとした第1楽章、豊かな表情を湛えた第2楽章。やや早めながら求心力をもった第4楽章と続き、第5楽章の後半では、アッチェレランド気味にクライマックスを築いた。
この演奏が聴けて十分な「楽興の時」が持てた。

演奏後、指揮者はパートごとに立たせて讃えていた。ティンパニストには会場から一際大きな拍手が沸いた。

音楽の不思議さ
会場の人々の雰囲気から想像すると、これまでに《ライン》を聴いたことがあるという人はそれほど多くない(だろう)。ティンパニの出番が多い曲というだけではなく、オーケストラ全体を、気負うことなく適確にサポートしたことを、人々は初めて聴いたのにもかかわらず、それを理解し、拍手を送ったのだろう。

特に第4楽章では、マレットの選択がとてもよかった。

アンコールとして、ルロイ・アンダーソンが書いたワルツ"Belle of the Ball(舞踏会の美女)"が取り上げられた。

聴いた席もあるのだろうか、全体のバランスとして、メンバー数の割りには、弦楽器が他の楽器群(そのノリは吹奏楽団を連想?)に押され気味の印象を持った。

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ご来場ありがとうございました (Hiro)
2008-06-26 23:19:38
はじめまして。Hiroと申します。私は相模原市民交響楽団のチェロ奏者です。

まずは、あの荒天の中、当団の定期演奏会に来ていただき、ありがとうございました。さらに、ブログでお褒めの言葉をいただき、重ねて御礼申し上げます。

ラインについてですが、「テンポやディナーミクの変化に丁寧さが感じられた」とのこと。シューマンはご存知の通り、オーケストレーションについてはあまり上手ではありません。シューマンはピアノで作曲をしていたと思われ、弦楽器奏者にとっては弾きにくい音形と盛り上がるとことで刻んでしまうということで、あまり演奏効果が出ません。
そこで、指揮者の田代先生からは、非常に細かいダイナミクスの指示がありました。それが演奏となって、皆様にお届けできたということは、我々にとって非常に大きな自信になりました。

冒頭は3楽章なのですが、2拍子にも聞こえる音形ですね。作曲家の池辺 晋一郎氏が最近「音楽の友」に連載している「シューマンの音符たち」に詳しく書いております。この冒頭を、チェロのトレーナーである三森先生は「最初からあたたまったエンジン全開で演奏しましょう」といっておりました。最初からリズムに乗り切れないと、置いていかれてしまいます。

ラインのティンパニ奏者は、楽譜への書き込みやスコアリーディングなど人一倍努力をしていました。その結果が会場にも伝わって、最後に暖かい拍手をいただけたものと思います。

ヒンデミットについては、我々にとってチャレンジャブルな選曲でした。田代先生も打ち上げの時には、「誰だ、こんな難しい曲を選んだのは!」といっておりました。第2楽章は当日でも、最後まで通るかどうか、非常にスリリングでした。ステージリハーサルでは、最後まで言ったのですが、打楽器から「もう一度!」。いろいろと落ちていたようなのですが、弦楽器の我々にとっては何が悪かったのかもわからなかったほどです。
第3楽章におけるチェロの歌を感じていただけたでしょうか。

魔弾の射手は、オープニングということで、おとなしい演奏という印象をもたれたのかも知れません。

アンコールの、「舞踏会の美女」はメインディッシュの後のデザートです。個人的には私はこの曲が大好きで、おしゃれなアンコールをお出しできたのではと思っております。管楽器が大きすぎたのはご愛嬌ということでご容赦ください。

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ブログを拝見すると、「ライン」が非常にお好きなようで、一家言お持ちのようですね。「極私的シューマン論---交響曲第3番《ライン》について 」については、興味深く拝読させていただきました。

当団としても、シューマンはかなり前に交響曲第4番・ピアノ協奏曲を演奏したのみで、あまり演奏する機会がありません。そのために、慣れていないので我々にとっても、非常に難しいものでした。さらに、特に長いわけではないのですが、プレーヤーとして集中力を持続させることが大変でした。

我々の演奏を、楽しんでいただけたら、幸甚です。次回の演奏会もぜひともご来場いただき、コメントをいただきたく、お願いします。
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