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架空庭園の書

音楽への"homage"を主題として、思いつくまま気侭に書き連ねています。ブログ名はアルノルト・シェーンベルクの歌曲から

フランクフルト放送交響楽団

2008-06-04 | 音楽


オーケストラはこういう音を出せるのだ、ということを改めて実感し、感心した。  
ただ「音楽」は少しも面白くなかった。グリモーのピアノを除けば....  
なぜブルックナーなのだろうか。他の曲、例えば、プロコフィエフの交響曲、R・シュトラウスの表題つき作品、《展覧会の絵》や《シェラザード》といったものの方が、このオーケストラの今の魅力/特性を素直に楽しめるのではないか?  
ブルックナーの第3楽章からは、もう「音楽」を聴くというのではなく、目の前に生起する音、それも饒舌な音を追っていた。  

6月3日(火)  
サントリーホール  
フランクフルト放送交響楽団  
指揮:パーヴォ・ヤルヴィ  
ピアノ:エレーヌ・グリモー  

L.v.ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第5番 変ホ長調 《皇帝》 作品73
  アンコール:ピアノソナタ第30番 作品109 第1楽章
A..ブルックナー:交響曲第7番 ホ長調
  アンコール:ヴィルヘルム・ステンハンマル/Carl Wilhelm Eugen Stenhammar カンタータ「歌」より間奏曲


オーケストラ
放送局所属という属性だけでなく、ステージに並んだ奏者を見ると、年齢層も指揮者と同年代もしくは下ということもあり、その作り出す音は、成熟というより、しなやかな機能性を感じさせる。プログラムにあるメンバー表を見ると、第1ヴァイオリンとホルンに明らかに日本人の名前が一人ずつ、そして結婚されたのだろうか、姓は別として名前が日本人と思われる方が第2ヴァイオリンにいるようだ。こういったことはもう珍しくなくなった。

ブルックナー
壮麗な音、特に居並ぶ金管楽器の音が、ホールに響き渡たる。冒頭、ヴァイオリンのトレモロ(原始霧)に導かれて歌いだすチェロによるホ長調主和音で構成させる旋律は、深々と、そして息の長いフレーズ感、第4楽章では、それまでゴツゴツしたリズムのテーマからかわって、弦楽器が、集中度を高め、しなやかに旋律を歌いだすところ(212小節)は、特に耳に残っている。

指揮者は、オーケストラをよくドライブしていた。指揮棒は楕円を描き、打点をはっきり打ち出すことほとんどない。このためか、音はよく流れた。その一方で、アインザッツが時折乱れる。

しかし、これはブルックナーなのだろうか?

目の前に生起する音響は、ただ「流れ過ぎて行く」---スマートといってもいい--だけで、ブルックナー作品を聴くときに強く感じる、どのように表面は変化しようが、底にあり変わることのない「ゆるぎないもの」、あるいは音による「巨大な建造物」(それは教会、大聖堂といったものに近い)や「大自然」といったものをまったく感じさせることはなかった。

この曲を選ぶことで、何かこの曲に対する共感なり、この曲で何を表現したいものがあっただろうと考えたい。しかし、それは最後まで伝わってくることはなかった。

皇帝
このような傾向にある指揮者とグリモーによる協奏曲が最初にあった。
「いかにも」というドレスではなく、黒のパンツにベージュ(もしくは上品な金?)の上というシンプルな装い。スラリとした、華奢ともいえる容姿とは正反対に、しっかりとよく響くピアノであり、その音はオーケストラに埋没することはない。

演奏そのものは、ピアニストが、細部にわたり自分の考える、やりたい音楽を、克明に表現しようとするに対して、流れを重視する指揮者の方向性が、第2楽章を除けば、うまく作用したとはいい難い。特に第1楽章冒頭のカデンツにそったカデンツァの後しばらく続く主題部分は、さらさらと流れるだけで、ピアニストの考えとは相反しているのではないか?

演奏中、ピアニストの息遣いが時折聴こえる(2階RD席)。

この息遣いは、演奏者が深く歌う姿勢の表れとして、まったく気にならない。むしろこの息遣い(から生まれてくる音楽の流れ)に、聴くものはどれだけ同期できるかにかかってくるだろう。

アンコール(大阪ではなかったらしいが)で弾かれたベートーヴェンのソナタにいたって、やっと音楽が聴けたとすら感じさせるもので、これなら、ソロのコンサートの方が....

アンコール
ブルックナーを終えてアンコールをやるとは思っていなかったのだが、しっとりとした作品で、このオーケストラの弦セクションが際立っていた。

 

 

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