2007年7月2日(月)
渋谷C.C.Lemonホール(渋谷公会堂)
モスクワ国立アカデミー室内合唱団
指揮:ウラジーミル・ミーニン
想像を超えていた。これまでの合唱に対する考え方を変えるくらい。
日本の合唱は、同質で均質を求める傾向があるのに対して、個々の声を活かすことに重点が置かれているようです。かといってアンサンブルが乱れるということはまったくありません。したがって、聴こえてくる音を注意深く聴くと、個々の音がうまく交じり合うというより、個々の音がまとまって、それぞれのパートを、それも絶妙なアンサンブルで構成するといったような趣きとなります。そのせいか、歌っている時の身体の動きも、皆それぞれです。テノールパートのリーダーらしき人は、とてもノッていました。
総勢40名程度で、それほど多くはありません。ホール全体を満たす大きな音もきちんと出ており、音量に不満を感じることがないだけでなく、消え入るような小さい音、特に女性パートだけの曲では、きわめてデリケートな音楽を表現していました。
プログラムは、ロシアの民謡から現代曲、スヴィリードフ、ガブリーニンといった、初めて聞く名前の作曲家の作品、ややシアターピース風で、擬音や軽い所作もあり、音だけでなく、見ていても楽しめました。実際会場からは、軽い笑いが生まれました。そしてバッハのバディヌリ、これはスウィングル・シンガーズをイメージさせます。日本の歌として「浜辺の歌」など、変化に富んでいて飽きさせません。
声楽家の友人から招待券の誘いがあったときに、プログラムにグルジア民謡「スリコ」を見つけたためにこの演奏会にでかけました。これまで芸能山城組「地の響き---東ヨーロッパを歌う」で「スリコ」を聴き、その響きに魅了されていたもので、今回の演奏会では、実際に聴くことができると、とても期待していました。実際の「スリコ」は、現代風の編曲がほどこされており、芸能山城組のものとはやや趣きが異なっていたものの、ソロを歌ったテノールの声のよさ、それを支えるハーモニーのデリケートな美しさが聴けました。
この演奏会での花形は、バスのベロセーリスキーに尽きます。
30才台でしょうか、まだ若く、力感も十分あり、よく知られている「黒い瞳」などでは、その分厚い響きがホールに響きわたります。どこかユーモラスなステージマナーもあって、聴衆から大きな拍手を受けていました。
アンコールは「ソーラン節」。合いの手となる「ハイ、ハイ」がやや大人しいので、会場からは軽い笑い声も聞かれました。
出番は少ないものの、伴奏ピアノ(女性)も、とても繊細な音を出していたのが印象に残っています。
ロシア文化フェスティバルの一環として、この日の公演が日本で最初のようです。もし他の日に聴けるならぜひ行ってみることをお勧めします。