島の子どもたちの瞳には、光があふれている。私の動作の一つ一つを瞳のなかの灯が追っかけてくる。子どもの写真を撮るには、私自身が子どもに
なって、遊ぶしかない。子どもたちとのボール投げが始まった。全力でボールを投げ返した。私には、片言の『フォト、オーケー?』ぐらいしか、
コミニュケーションの手段がない。ボールを真剣に投げ返して、その場にとけ込んだ。
瞳がきれいだ。好奇心にあふれた小粒の宝石のようだ。その島の滞在時間は子どもたちと遊ぶことに夢中になって、あっという間に過ぎ去った。肝
心の写真は撮れずに、子どもたちとの記念撮影が精一杯だった。この写真と日本の記念切手を送る約束をして、次の目的地に向かう乗船場に行った
船に乗ろうとした時、カメラバックがない。子どもたちと遊んだ場所に置き忘れたんだ。背筋が凍り付きそうだった。ありますように、と祈りなが
ら、走って遊んだ場所に引き返した。
大人たち、子どもたちのたくさんの心配そうな瞳の輪に取り囲まれた。私のバッグはそこに、持ち主を待ちわびるかのように、丁寧に置かれていた
サンキュウ、を三回ぐらい繰り返した。瞳がぱあっと輝いてみんな、手を振ってくれた。ありがとう、島の人たち!
( 1982 モルディブ 撮影の旅より)
フォト 2010