1日1日感動したことを書きたい

本、音楽、映画、仕事、出会い。1日1日感動したことを書きたい。
人生の黄昏時だから、なおそう思います。

「オリクスとクレイク」(マーガレット・アトウッド)

2011-03-09 19:46:12 | 
人類が消滅してしまった世界で一人暮らす「スノーマン」が主人公の物語です。物語の冒頭から「ピグーン」とか「クレイカーズ」とか、耳慣れぬ生き物が登場します。はじめのうちは、未知の世界に降り立ったような読みにくさがありますが、読み進むにつれて未来世界の姿が次第に明らかになっていきます。

そこは、選ばれた者と「ヘーミン」が隔離されて暮らし、遺伝子の組み換えによって思い通りの「人間」を生産し販売することが可能となった世界です。

そして、物語の後半部分で、耳慣れぬ生き物は何者なのか、なぜ人類が消滅してしまったのが明らかになります。このあたりは、とてもおもしろかったです。
 
遺伝子の組み換え、幼児への性虐待、戦争請負会社、ゲート・コミュニティー、私生活の隅々にまで張り巡らされた監視のシステム、そして荒廃した心などなど。マーガレット・アトウッドの描く未来社会が、つい身近に思えた一冊です。

マーガレット・アトウッドの近未来小説の三部作の第一作。第一作には、何の救いもなかった。このままでは終わらないと思う....だから次も読んでみよう。

ちなみに表紙には、プラド美術館で見たヒエロニムス・ボスの『快楽の園』が使われています。プラド美術館では、この絵の前でたくさんの人だかりができていました。確かにこの絵には、どこか世紀末的で、じっと見入ってしまう不思議な魅力があります。