1日1日感動したことを書きたい

本、音楽、映画、仕事、出会い。1日1日感動したことを書きたい。
人生の黄昏時だから、なおそう思います。

「ふたつの枷」(古処誠に)

2010-09-19 08:40:03 | 
ニューギニア、ビルマ、サイパン、フィリピン。敗戦の直前・直後の日本陸軍の姿を描いた四つの中篇集です。現地の民衆との確執と交流、敗者へのまなざし。組織の崩壊、統一指揮の不在、規律の弛緩、上司と部下の確執、村八分。何の治療もほどこされずマラリアで死んでいく戦友たち。作者は、圧倒的な敵の武力の中で、なんらの展望も見出せないまま日々を生き延びていく兵士たちの姿を、一兵士の目を通して描いていきます。

丹念な調査に基づいて書かれた力作です。「責任感が強いのは結構だが、つきあわされるのはたまったものではない」これは、組織内の保身のために、成算のない夜襲を果たそうとする上官を、隊員の命を守るためにうしろから撃った部下の言葉。個と組織の問題、戦争の悲惨さをじっくり考えさせてくれる好著。これもおもしろかったです。結構、重たかったけど。