小杉行政書士事務所 小杉 幹のブログ

自然を愛し、単独で山を歩き廻ることを好み、たまにはロードや近くの山を走る、50代オヤジのブログです。

グレーゾーン案件のはざまで・・・

2005年06月04日 | 仕事の話

行政書士の取扱う中心業務に「許認可申請手続」があります。

行政庁に対して「許可」や「認可」を申請する手続で、主なものには「建設業許可」「貨物自動車運送事業経営許可」「産業廃棄物処理業許可」「風俗営業許可」などがあります。

その他に、一般にはあまり知られていないのですが、外国人の在留資格に関するものや国籍に関する許可申請があります。例えば「在留資格変更許可」「在留期間更新許可」「在留資格認定証明書交付申請」「帰化許可」などです。

今日はこの外国人の在留資格に関するお話をします。

外国人の入国や在留に関する手続の中で、海外にいる外国人を日本に招聘するための手続「在留資格認定証明書交付申請」で、当該外国人が日本の入管法に定める「在留資格」に該当していることを証明してもらう手続です。この証明書があると在外公館での査証申請が簡単にできることになっています。それから、すでに日本にいる外国人が在留資格の変更を申請する手続が「在留資格変更許可申請」で、例えば留学生が日本の企業に就職するための「留学」から「人文知識・国際業務」への変更、就職していた日本企業を退職して自ら会社を経営する人の「技術」から「投資・経営」への変更、日本人と結婚して日本で生活するための「日本人の配偶者等」への変更などがあります。

皆さんはよく「偽装結婚」という言葉を耳にすると思います。就労目的の外国人が、結婚の意志は無いにもかかわらず日本人と形式上の婚姻手続を行い(金銭の授受を伴う契約に基づいているようです)、「日本人の配偶者等」の在留資格を得ます。そうすると「日本人の配偶者等」の在留資格は日本における活動に制限はありませんから、晴れて堂々と就労することができるというわけです。

「偽装結婚」は当事者両名とも、実体の無い形式だけの婚姻ということを理解した上でおこなっているものですが、似たケースに「片方は本当に婚姻する意思はあるのだが、もう一方には無い」というものもあります。

入管法でいうところの「日本人の配偶者等」という在留資格は、法律上日本人と婚姻しているというだけでは要件を満たさず、「法律上の婚姻関係があり、なおかつ、同居・相互扶助という社会通念上の夫婦共同生活を営むという婚姻の実体」があることが要件であるとの解釈・運用がなされています。

現在、行政書士のうち「地方入国管理局長が適当と認める行政書士」(いわゆる入国管理局申請取次行政書士)が外国人の入国・在留関係の申請取次業務(申請する外国人の出頭免除)を行うことができますが、当然のことながら法令遵守義務が課せられており、「偽装結婚」に荷担するようなことはあってはなりません。

ところがここに難しい問題があるのです。

明らかに偽装結婚とわかるようなケース(めったにありませんが)は、当然ですが受託いたしません。また、かなり疑わしいケースも基本的には受託いたしません。ですが、難しいのは当事者の真実の婚姻の意思は外形上からは判断できないというところにあります。

一般的に偽装結婚を疑う場合に、「年齢差」「婚姻に至るまでの経緯」などを観点としているようです。確かに一般論として、20代の女性と60代の男性のカップルが、直接会う前からすでに結婚することを決めており、会ってすぐに婚姻手続をしたようなケースは、表面上「疑わしい」と判断されても仕方ないかも知れません。

ですが問題は、「婚姻は、両性の合意のみに基づいて成立し、・・・」日本国憲法第24条に定められているとおり、年齢がいくつ違おうが、会う前から結婚を決めていようが(昔はピクチャーブライドというものもありました)、当事者が真実に婚姻の意思を持っている限りそれを否定することはできないということです。そしてその真実の婚姻の意思は外からは見えないということです。

当事者が真実に婚姻の意思を持っている限り、我々としてはその「婚姻の真実性」をいかに立証していくかに知恵を絞るのが職務上の義務でありますが、当事者が実は真実な婚姻の意思を持っておらず、就労できる在留資格の取得が目的であった場合、結果的には偽装結婚の手助けをしたことになります。

職務上必要とされる注意義務を果たしていれば、結果的に偽装結婚だったとしても罪に問われることはないのでしょうが、それでは果たしてどこまでが職務上求められる注意義務なのかという問題があります。このようないわゆるグレーゾーンの案件に対してどのように対応していけばいいのかという問題は、非常にデリケートな部分であり、日頃常に頭を悩ませております。

今回は例として「偽装結婚」を挙げましたが、これは就労に関する在留資格についてもいえることですし、他の許認可申請手続についても全く無いことではありません。

行政書士は法律上、「・・・正当な事由がある場合でなければ、依頼を拒むことができない。」とされています。しかしながら違法行為に荷担することがあってはなりません。いかに外形上で要件を満たしていないようであっても、真実は要件を満たしているのであれば、何とかそれを立証するのが職務上の責務ではありますし、報酬を支払ってでも行政書士に依頼することのひとつの理由でもあると思います。

でも独立して業務を行う以上、自分の身は自分で守らなければなりません

非常に難しいところです・・・

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行政書士 小杉総合企画事務所
代 表・行政書士 小 杉 幹

埼玉県狭山市青柳1549-8

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