行雲流水の如く 日本語教師の独り言

30数年前、北京で中国語を学んだのが縁なのか、今度は自分が中国の若者に日本語を教える立場に。

「真理の基準」”未完”の石碑に名前が刻まれる日が来るのを願いつつ・・・再見!

2015-11-27 12:06:28 | 日記
北京首都国際空港で帰国の便を待っている。胡耀邦生誕100周年記念の旅は終わろうとしている。様々な感慨が湧いてくるが、湖南省中和鎮の胡耀邦故居で見た光景が、時間を経るにしたがい、より深い意味を持っているのに気づいた。

故居の奥には噴水のある池を望む丘に完成したばかりの建物群が並んでいた。「胡耀邦芸術館」などの看板が掲げられていたが、内装工事の途中でオープンには至っていなかった。故居入り口の「記念広場」もガランとして何もない。「来年には胡耀邦の銅像が建てられる」と報道があった。生誕100周年を迎え、にわかに拡張工事が行われているのだった。

巨石に刻まれた「廉」は今年に入って登場した。習近平の反腐敗運動に合わせ、故居全体を全国廉政教育基地にしようとしているのだった。園内の山肌を利用し歴代指導者の反腐敗に関する演説を記した石碑が並んでいた。習近平については、2014年1月14日の中央規律検査委員会第3回全体会議で、「劇薬で病気を治すように、刑罰をもって風紀の乱れを正す決心、骨を削って毒を取り出すように、腕を切断する覚悟を持った勇気をもって、党風廉政の建設と反腐敗闘争を断固として徹底的に行う」と述べた言葉があった。

「実践は真理を検証する唯一の基準である」

ひときわ大きな岩に書かれていた。文化大革命後、中央党校校長だった胡耀邦が封建思想に根を持つ個人崇拝を否定し、思想の解放を求める論争を提起し際のスローガンだ。毛沢東の後継者を自任した華国鋒党主席が、「毛主席が下した決定であれば、我々はすべて断固支持し、毛主席の指示であれば、われわれはすべて終始一貫して順守しなければならない」(二つのすべて)との方針を掲げたことに対抗する理論的根拠を提供し、小平の復権を助けた。小平は、真理の基準論争で軍や世論を味方につけ、華国鋒から政権を奪還することに成功した。

だが胡耀邦は晩年、小平ら保守派長老の不評を買って総書記の座から平の政治局員に二階級格下げされる。20日の生誕100周年記念座談会には胡耀邦を攻撃した小平らの親族は参加していなかった。完全な名誉回復には至っていないのだ。

「実践は真理を検証する唯一の基準である」の石碑には名前がない。中国では一人前の石碑とは認められない。この筆は小平のものに違いない。胡耀邦の名誉回復が不完全なことを、この未完の石碑が物語っていた。

搭乗時間が来た。再見!