碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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【新刊書評2024】『大阪・関西万博「失敗」の本質』

2024年10月07日 | 書評した本たち

 

 

カジノありき 

理念なき万博の迷走

松本創:編著

『大阪・関西万博「失敗」の本質』

ちくま新書 990円

 

大阪・関西万博は2025年4月13日から始まる予定だ。わずか半年後の開催だというのに、全く盛り上がりを見せていない。それどころか、ネガティブな話しか聞こえてこない。

開催費用の膨張。海外パビリオン建設の大幅遅れ。工事現場ではガス爆発事故も発生した。会場用地が廃棄物の埋め立て地であることが原因といわれている。

そもそも、この万博は誰のため、何のための国家事業なのか。なぜ現在のような事態に陥ったのか。そんな疑問に答えてくれるのが、松本創・編著『大阪・関西万博「失敗」の本質』だ。読み進めると、この万博の暗部に驚かされる。

まず、会場を大阪湾にある人工島にしたことで、工期、コスト、防災、輸送といった課題が生じた。背後にはカジノを中心とする統合型リゾート施設(IR)の誘致計画との関係が潜む。

また、当初の1250億円から2350億円へと増額された会場建設費。その内実を含め、事業全体を外部の目で検証する仕組みがない。

大阪府と大阪市、政治と行政、首長政党と議会が一体化しており、チェックや歯止めが利かない。維新一強体制の弊害だ。

さらに開催が決まってから現在までの5年間、テーマに沿った基本理念やコンセプトが練られた形跡も見られないという。「なぜ、今、日本で万博を開くのか。その意義は何か」という哲学が存在しないのだ。

国民の共感が得られない「カジノありきの万博」の迷走はまだまだ続きそうだ。

(週刊新潮 2024.10.03号)

 


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