碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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2013年 テレビは何を映してきたか (1月編)

2013年11月05日 | テレビは何を映してきたか 2010年~13年
ハワイ島 2013

今年も、あと2ヶ月を切ってしまいました。

毎年、飽きずに思うのは、やっぱり「早いなあ」です(笑)。

年末には、その年に書いたものを整理というか、まとめて掲載するのですが、いつもバタバタになるので、たまには少しずつ、やっておこうと思います。

日刊ゲンダイに連載している「TV見るべきものは!!」。

この「同時代記録」も、1年分まとめてみると、その年のテレビが何を映してきたかを、多少は概観できます。

というわけで、今日は1月分をまとめてみました。

「ああ、こんなのやってたなあ」と、番組とその当時の自分のことが思い浮かぶでしょうか。

各文末の日付は掲載日。

2月分以降は、また随時アップしていく予定です。



2013年 テレビは何を映してきたか (1月編)


「新春TV放談2013」 NHK

正月3日深夜に放送されたNHK「新春TV放談2013」は、NHKのみならず民放各局のテレビ番組をネタにしてのトークバラエティー。司会は上田早苗アナと千原ジュニアである。

今年で5回目となるが、テリー伊藤、秋元康、鈴木おさむ、関根勤など、怖いものなしのパネラー陣がいい。フジテレビ「最後から二番目の恋」について、鈴木が「初回で小泉今日子に閉経の話をさせたのはすごい」と言えば、関根も「中井貴一のピンと伸びた背筋に感心した」と笑わせる。また過去のドラマのコーナーでは、秋元がフジの「北の国から」を評して、出演者が実年齢を重ねるドラマ作りこそ「最高の贅沢」と語っていた。

そして最も盛り上がったのが各自の体験談だ。日テレ「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」の当たり企画「早朝バズーカ」は、週刊誌で見た早朝ソープの広告がヒントだったとテリーが明かす。関根は師匠の萩本欽一が台本を捨て、口立てで出演者のセリフを決めていく様子を再現してみせた。

思えば、他局の番組を話題にすることは、民放ではタブーに近い。「NHKならでは」という意味で、これほど「ならでは」な番組もないかもしれない。惜しいのは放送時間が75分と短いことだ。次回は人気番組ランキングの紹介といった段取りもやめて、彼らの話をもっと聞かせてほしい。

(2013.01.08)


まほろ駅前番外地」 テレビ東京

一昨年映画化された「まほろ駅前多田便利軒」(原作・三浦しをん)の続編が連続ドラマになった。金曜深夜のテレビ東京「まほろ駅前番外地」である。同局のドラマ「鈴木先生」が映画化されて12日から公開されているが、映画の続きとしてドラマが作られるのは珍しい逆パターンだ。

キャストは映画と同じ瑛太と松田龍平。瑛太は東京郊外の「まほろ市」(モデルは町田市)で便利屋をやっている。その中学時代の同級生(当時はそれほど親しくなかった)で、事務所に居候しながら仕事も手伝っているのが松田だ。

第1回では地元のプロレスラー・スタンガン西村(静岡プロレス出身のスタンガン高村がモデル)から引退試合の相手になることを依頼される。細身の瑛太と松田が覆面レスラーを務めるだけで笑えるが、物語は大人の男を泣かせる展開となる。

このレスラー代行の話は2冊の原作本にはない。脚本も兼ねる大根仁監督(映画「モテキ」)のオリジナルストーリーだ。ワケあり男2人の微妙な距離感だけでなく、周囲の人たちとの関係から生まれる空気感も実に心地よかった。

また、このドラマにはいわゆるヒロインがいない。別の局が作ったら、若手人気女優を投入したに違いない。だが、それでは“脱力系相棒物語”という特色が薄まってしまう。これでいいのだ。

(2013.01.15)


「夜行観覧車」 TBS

先週から始まったTBS「夜行観覧車」(金曜夜10時)の舞台は、架空の高級住宅地「ひばりが丘」だ。平均的サラリーマンである宮迫博之と鈴木京香にとっては背伸びした買い物だが、嬉しい新居だった。それが2009年のことだ。

そして2013年1月現在。向かいに住む開業医の家で惨劇が起きる。夫が何者かに殺害され、妻の石田ゆり子は半狂乱に。この4年間に一体何があったのか。ドラマは過去と現在を行き来し、視聴者は謎めいた住宅街から目が離せない。

主演は鈴木だが、断然石田が気になる。まず、「絵に描いたような幸せ」のセレブ家族というのが怪しい。そして石田が醸し出す“日常系エロス”も、このまま黙っていないような気がするのだ。

しかし、このドラマには鈴木や石田を凌ぐ秘密兵器が存在していた。自治会婦人部長の夏木マリである。“ひばりが丘の女帝”ともいえる彼女は、この地にふさわしくない者として鈴木を扱うのだ。浅野内匠頭に対する吉良上野介のような底意地の悪さ。絶対隣人にはしたくないタイプを、夏木がシレっとした見事な怪演で見せつける。

家庭内のことは家族にしかわからない。いや、家族だって互いのすべてを知ってはいない。原作は「告白」の湊かなえ。鈴木、石田、夏木のトライアングルがどう変形していくのか、楽しみだ。

(2013.01.22)


「書店員ミチルの身の上話」 NHK

もしかしたら女優・戸田恵梨香の代表作になるのではないか。NHKよる★ドラ「書店員ミチルの身の上話」(火曜夜10時55分)を見ていて、そんな気がした。

ヒロインは地方書店勤務のごく普通の女性。ところがこのミチルちゃん、結構トンデモナイ。彼女を慕う彼氏(柄本佑)がいる。彼女を気遣う幼なじみ(高良健吾)もいる。それなのに出版社の営業マン(新井浩文)とちゃっかり不倫関係。しかも、その不倫男にくっついて東京まで来てしまう。

「それって、ただのズルズル女じゃん」と言うなかれ。20代女性が無意識に抱く、「これまでも、これからも、平凡な人生しかないのかな」というモヤモヤを、ミチルはごく自然に体現している。本人はどこまで考えて行動しているのか、いや何も考えていないのか、その浮遊感が絶妙なのだ。

現在、物語は共同購入の宝くじが2億円の大当たりで、それをミチルが独り占めしようとしているといった状況。そう簡単にいくはずもないし、振り回されている男たちや女たちの反撃だってあるだろう。それに、このドラマのナレーションでミチルを「私の妻」と呼んでいる謎の男(大森南朋)も気がかりだ。

幸せの青い鳥を探すどころか、捕まえても握りつぶしてしまいそうな、困ったミチルちゃん。予測不能なその成り行きから目が離せない。

(2013.01.29)



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