碓井広義ブログ

<メディア文化評論家の時評的日録> 
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「9(ナイン)ボーダー」悩めるボーダーたちへの応援歌

2024年05月22日 | 「日刊ゲンダイ」連載中の番組時評

 

 

川口春奈主演「9(ナイン)ボーダー」

悩めるボーダーたちへの柔らかな応援歌

 

うまいタイトルをつけたものだ。川口春奈主演「9(ナイン)ボーダー」(TBS系)である。ここでは20代や30代といった各年代の最終年やその状態を指している。

孔子は「三十にして立つ、四十にして惑わず、五十にして天命を知る」などと、節目の年齢における理想像を「論語」で示した。

だが、実際に29歳や39歳というボーダーに立った時、何となく焦りを感じたり、どこか落ち着かない気分になる人は少なくないはずだ。

銭湯を営む大庭家の長女・六月(木南晴夏)は39歳。会計事務所を経営しているが、別居中だった夫と離婚した。

次女で29歳の七苗(川口)は勤めていた会社を勢いで辞めてしまった。そして、やや引っ込み思案の三女・八海(畑芽育)は19歳の浪人生だ。

3人は、「私、これからどうしたいんだ?」という迷いの中にいることで共通している。

しかし、彼女たちは基本的に元気だ。七苗がつき合い始めた記憶喪失の青年・コウタロウ(松下洸平)や、六月を慕う部下の松嶋(井之脇海)など、心優しき男たちが近くにいる。何より三姉妹が互いに支え合う姿がほほ笑ましい。

脚本は「恋はつづくよどこまでも」(TBS系)などで知られる金子ありさだ。

やりたいことや夢には時間制限がないこと。年齢で線引きして諦めないこと。このドラマは、悩めるボーダーたちへの柔らかな応援歌だ。

(日刊ゲンダイ「TV見るべきものは!!」2024.05.21)

 

 


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