碓井広義ブログ

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『ブギウギ』スズ子(趣里)の 仕事と恋の「大波乱」を救ったのは?

2023年11月18日 | 「ヤフー!ニュース」連載中のコラム

 

 

『ブギウギ』スズ子(趣里)の

仕事と恋の「大波乱」を救ったのは?

 

NHK連続テレビ小説『ブギウギ』。

11月13日から17日までの第7週は、スズ子(趣里)にとって、「仕事」と「恋」の両方で、大きな波乱の連続でした。

第一の波乱は、演出の松永(新納慎也)から誘われたことで始まった、スズ子の「引き抜き騒動」でしょう。

引き抜きに動いたのは、スズ子が所属する「梅丸」の最大のライバルである「日宝」。

言わずもがなですが、梅丸は現在の「松竹」であり、日宝はもちろん「東宝」ですね。

笠置シヅ子のリアル「引き抜き騒動」

この「引き抜き騒動」は、スズ子のモデルである笠置シヅ子にも実際におきたことです。

昭和14年、東宝側からシヅ子に対して、日本劇場(日劇)の舞台に「日劇ダンシングチーム」と一緒に出演してほしい、という話がありました。

しかも当時、松竹の給料が200円だったシヅ子に、300円払うというのです。

この頃は、大卒の初任給が100円くらいで、これが現在の20万円と考えれば、200円は40万円、300円は60万円にあたります。

大阪の養父への仕送りのことだけでなく、例の「桃色争議」で、会社に待遇改善を要求する難しさを体験していたシヅ子。

彼女にとって収入アップは魅力的でした。あまり考えずに契約書にサインしてしまいます。

そこからは、ドラマで描かれていた以上の騒ぎになるのですが、事態をおさめるために奔走してくれたのが、羽鳥(草彅剛)のモデルである、服部良一でした。

スズ子を救った、羽鳥の「思い」

ドラマでは、引き抜きのことを梅丸側に知られ、進退に困ったスズ子が、思い余って松永に迫ります。

「松永さん、ワテと一緒に逃げてください!」

当の松永は、その意味がわかりません。

「ワテ、松永さんのことが好きです。大好きなんです」

松永は、自分にはアメリカに残した恋人がいて、スズ子の気持ちには応えられないことを伝えました。

スズ子、生涯初の大失恋です。

さらに、梅丸にも日宝にも迷惑をかけたことで、しょげかえるスズ子。

新曲を作ろうとしている羽鳥に対して、こう言いました。

「ワテは無責任なことをしてしまいました。ワテに歌う資格はありまへん。こんな人間の歌、ワテ自身が聞きたないですわ」

羽鳥は、すかさず・・・

「僕が聞きたいんだよ!」

そして・・・

「これからもきっと人生にはいろいろある! まだまだこんなもんじゃない。嬉しいことも、辛いことも、たくさんあるよ。だから、嬉しいときは気持ちよく歌って、辛いときはやけのやんぱちで歌う」

嬉しいときは気持ちよく、辛いときはやけのやんぱちで。

まさにスズ子の原点です。

羽鳥は続けて・・・

「福来くんだけじゃない。僕だって、藤村ちゃん(宮本亞門)だって、きっと茨田くん(菊地凛子)だってそうだ。僕たちはそうやって生きていくんだよ!」

これは、単に今回の騒動についての話ではありません。

ショービジネスに本気で関わろうとする人間の「覚悟」であり、ショービジネスに生きる人間の「業(ごう)」を語っているのです。

自分の「生き方」と「居場所」

本来の自分を取り戻したスズ子は日宝に出向き、社長の大林の前で言い切りました。

「ワテは、やっぱり羽鳥センセの歌を歌いたいんです!」

そうこなくっちゃ!(笑)

スズ子は、羽鳥の妻・麻里(市川実和子)にも、迷惑をかけたことをきちんと詫びました。

ちなみに、この市川実和子さんは、女優の市川実日子(みかこ)さんの姉。お間違えなく。

で、この時、スズ子は麻里に、自分が梅丸に残った理由を説明します。

それは「羽鳥の歌」を歌いたいだけでなく・・・

「(羽鳥)センセは、ワテをひとりの人間として見てくれていはるというか……他の人にはなんや勝手にワテの動き方を決められてるみたいで。だから、ワテを大切にしてくれる場所におりたいと思たんです」

自分にとって、一番大切な「居場所」。スズ子に、もう迷いは消えていました。

一方、秋山(伊原六花)は大阪へと戻っていきました。

彼女もまたスズ子と同様、仕事と恋の両方の試練を乗り越え、自分の「生き方」と「居場所」を自分で決めたのです。

下宿のお父さんとの「別れの大相撲」。伊原さんが昨年主演した、配信ドラマ『シコふんじゃった!』へのオマージュとして素敵でした。

そして、舞台でスズ子が歌った『センチメンタル・ダイナ』(作詞:野川香文、作曲:服部良一)。しっとりと力強さの両方が味わえる、いい曲ですよね。

しかし、ますます悪い方向へと傾いていく、戦時下の日本。

スズ子の音楽にも人生にも、新たな試練がやって来そうな気配があり、引き続き目が離せそうにありません。

 


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