由良の門を 渡る船人 かぢを絶え ゆくへも知らぬ 恋の道かな
由良の海峡を漕ぎ渡る舟人が櫂を失って漂うように、私の恋はこれから先どうなるのか解らないことだなあ
由良のとを 「由良」は、作者が丹後掾であったことから、丹後国(京都府)の由良川と思われるが、日本各地に由良という地名があり、それらも歌枕として用いられた例があるため、定かではない。この歌の場合、「由良」は、特定の場所であることは重要ではなく、かぢがなくなった舟が“ゆらめく”さまを表現するたに用いられている。「と」は、水の流れが速くなる場所。瀬戸。「を」は、経由点を表す格助詞。
かぢを絶え 「かぢ」は、操船に用いる道具。櫓(ろ)や櫂(かい)。舵ではない。「を」は、間投助詞。「絶え」は、ヤ行下二段の動詞「絶ゆ」の連用形。「絶ゆ」が自動詞であるため、「を」は格助詞ではなく、間投助詞とする説が有力。「かぢを絶え」で、「かじがなくなって」の意。ここまでが序詞。
ゆくへも知らぬ恋の道かな 「ゆくへ」は、(恋の)行く先。「恋の道」は、これから進んで行く恋の道筋。
そねのよしただ (生没年不詳)
平安中期の歌人。丹後掾。中古三十六歌仙の一人。自信家で奇人と伝わる。