そこは空調などない生暖かいベットリとした風が吹いていた
まだ屋根はあったが夏を髣髴とさせる空気だ
屋上へと続く道は斜め右方向にあった、エレベータの出口から50mほどだ
そこには、R駐車場使用禁止とかいてある
とりあえず車を止めるわけじゃないから入ってもいいだろう
ばれたらばれたでそれまでだが、別に悪いことをしているわけじゃない
俺が一人で先に進んでいき、屋上へ到達する
流石地上8階まで来ると景色がすこぶるいい
鈴鹿サーキットの観覧車も見える、山もいつもより近く、大きく感じる
黄昏が沁みる
「お、ここから海みえるんや」
「それは凄い、よかったやん」
「何が凄いの意味分からん」
「海が見えるっちゅうことは凄いやん」
「ああ・・・そう」
意味がわからない会話を俺はこれ以上続けるつもりは無かった
ここは地上7階、紛れも無く「高所」である
俺は「高所恐怖症」なのだが、お父さんは俺の3倍は怖がりだ
何が3倍かというと距離
高所恐怖症の人間は高い場所で端っこに行けばいくほど足がガクガクし始める
その端からの距離が俺の3倍敏感なのだ5Mほどでもう「やばい」とか言い始める
お父さんと高い場所に行く時に必ずやることがある、それは
わざと押して怖がらせる事だ
お父さんは高い場所で押すと無駄に楽しい反応を見せてくる
「こら、止めろ押すなって!やばいって言うとるやろ!」
その1、言葉使いがまるで変わる
普段かなり丁寧な喋り方をするのにこの時だけは砕けたというか
子供が友達と喋る時ような感じになる
その2、凄まじく逃げる
一瞬でも押し始めると猛ダッシュで反対方向へ逃げ出す
まあ俺も鬼じゃない、追いかけはしない
が、その後何回か繰り返す
俺がお父さんといる時に笑う数少ない場面だ
「ここがいい、ここにしよう」
そう言った場所は外灯の下だった、正直何がいいのかはわからないがそこに座り
カバンの中にあった刺身を取り出す
(何でデパートの屋上で刺身を食うねん・・・)
透明なプラスチックの蓋を開けて箸を取り出す
「で、醤油は?刺身を醤油無しとか無理」
「だからここにあるやん」
「だからそれはわさびやっつっとろーが」
「いや、これはしょう、、、、わさびかこれ」
「あほか」
「じゃあこれや」
「それしょうが」
「ああ、これしょうがか」
もうなんでもいいや
そしてまずしょうがをのせる
・・・・・あえて何も言わない
「わさび、これも」
「おいおいおいおいおいまてや、いらんわそんなもん」
「え?」
「あほか、しょうがとわさびをのせるアホがどこにおんねん」
「そうか、じゃあいいか」
刺身をしょうがとわさびだけのせて食べる気になどならん
すでにしょうがだけでも食べる気がしないというのに
アジの刺身の下にある千切り大根、醤油があるとうめーのよねこれ
ちなみに醤油なしでは食ったことがなし
「食べ」
言われるがままにしょうがのみのった刺身を口に運ぶ
俺が1切れ口に運んでいる間にお父さんはバクバク進んでいた
(ぶっちゃけ、ないこともない、美味しいとは、、、いえ、、なくはない、、、?)
よくわからなかったがまずくはなかった、ただやはりなんというか
魚本来の味を楽しむといえば聞こえは良いが、醤油は魚の生臭さも同時に消してくれていたようだ
20切れほどある刺身を俺は1/3ほど、ほぼ半強制的食べ終わると
「これも全部食べ」
と残りの1/3も俺に食べろという
「いらんわ」
俺は即答するとガクガクしながらフェンスに歩み寄る
俺は高いところは嫌いなんだ、嫌いと言うか有無を言わさず足に来る
だが何となく下を見たいという気持ちもある、その葛藤が楽しい、、のかは分からないが
ちょっと覗いてみたいのだ
一瞬だけ下を見ると満足した俺は既に横を見ていた
鈴鹿が一望できるこの場所で、我、何を思わんとす
俺はお父さんと二人でいる時とそうじゃない時は別人なので
普段からこんな人間ではないです!
まだ屋根はあったが夏を髣髴とさせる空気だ
屋上へと続く道は斜め右方向にあった、エレベータの出口から50mほどだ
そこには、R駐車場使用禁止とかいてある
とりあえず車を止めるわけじゃないから入ってもいいだろう
ばれたらばれたでそれまでだが、別に悪いことをしているわけじゃない
俺が一人で先に進んでいき、屋上へ到達する
流石地上8階まで来ると景色がすこぶるいい
鈴鹿サーキットの観覧車も見える、山もいつもより近く、大きく感じる
黄昏が沁みる
「お、ここから海みえるんや」
「それは凄い、よかったやん」
「何が凄いの意味分からん」
「海が見えるっちゅうことは凄いやん」
「ああ・・・そう」
意味がわからない会話を俺はこれ以上続けるつもりは無かった
ここは地上7階、紛れも無く「高所」である
俺は「高所恐怖症」なのだが、お父さんは俺の3倍は怖がりだ
何が3倍かというと距離
高所恐怖症の人間は高い場所で端っこに行けばいくほど足がガクガクし始める
その端からの距離が俺の3倍敏感なのだ5Mほどでもう「やばい」とか言い始める
お父さんと高い場所に行く時に必ずやることがある、それは
わざと押して怖がらせる事だ
お父さんは高い場所で押すと無駄に楽しい反応を見せてくる
「こら、止めろ押すなって!やばいって言うとるやろ!」
その1、言葉使いがまるで変わる
普段かなり丁寧な喋り方をするのにこの時だけは砕けたというか
子供が友達と喋る時ような感じになる
その2、凄まじく逃げる
一瞬でも押し始めると猛ダッシュで反対方向へ逃げ出す
まあ俺も鬼じゃない、追いかけはしない
が、その後何回か繰り返す
俺がお父さんといる時に笑う数少ない場面だ
「ここがいい、ここにしよう」
そう言った場所は外灯の下だった、正直何がいいのかはわからないがそこに座り
カバンの中にあった刺身を取り出す
(何でデパートの屋上で刺身を食うねん・・・)
透明なプラスチックの蓋を開けて箸を取り出す
「で、醤油は?刺身を醤油無しとか無理」
「だからここにあるやん」
「だからそれはわさびやっつっとろーが」
「いや、これはしょう、、、、わさびかこれ」
「あほか」
「じゃあこれや」
「それしょうが」
「ああ、これしょうがか」
もうなんでもいいや
そしてまずしょうがをのせる
・・・・・あえて何も言わない
「わさび、これも」
「おいおいおいおいおいまてや、いらんわそんなもん」
「え?」
「あほか、しょうがとわさびをのせるアホがどこにおんねん」
「そうか、じゃあいいか」
刺身をしょうがとわさびだけのせて食べる気になどならん
すでにしょうがだけでも食べる気がしないというのに
アジの刺身の下にある千切り大根、醤油があるとうめーのよねこれ
ちなみに醤油なしでは食ったことがなし
「食べ」
言われるがままにしょうがのみのった刺身を口に運ぶ
俺が1切れ口に運んでいる間にお父さんはバクバク進んでいた
(ぶっちゃけ、ないこともない、美味しいとは、、、いえ、、なくはない、、、?)
よくわからなかったがまずくはなかった、ただやはりなんというか
魚本来の味を楽しむといえば聞こえは良いが、醤油は魚の生臭さも同時に消してくれていたようだ
20切れほどある刺身を俺は1/3ほど、ほぼ半強制的食べ終わると
「これも全部食べ」
と残りの1/3も俺に食べろという
「いらんわ」
俺は即答するとガクガクしながらフェンスに歩み寄る
俺は高いところは嫌いなんだ、嫌いと言うか有無を言わさず足に来る
だが何となく下を見たいという気持ちもある、その葛藤が楽しい、、のかは分からないが
ちょっと覗いてみたいのだ
一瞬だけ下を見ると満足した俺は既に横を見ていた
鈴鹿が一望できるこの場所で、我、何を思わんとす
俺はお父さんと二人でいる時とそうじゃない時は別人なので
普段からこんな人間ではないです!