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ジャン・アレチボルトの冒険

ジャンルを問わず、思いついたことを、書いてみます。

本当に故意なのか? ~ 農薬冷凍餃子の話

2008-02-07 16:34:36 | 政治
メタミドホス混入の中国製輸入餃子について、誰かが故意に混入した、との見方が、ちらほら出てきた。しかし、汚染のされ方が、ばらばらで統一感のないことを考えると、故意というのは、もっとも最後に考えるべき可能性である。今の時期に、こういう見方が表に出てくるのは、不可解だ。

まず検討すべきは、工場を大規模に消毒したとき、誤って汚染してしまった可能性だと思う。

昔は、一般家庭でも、数年に一回くらい、ゴキブリ駆除のため、バルサンをたいて、家全体を消毒することがあった。この際、食べ物は勿論、食器なども外に出さなければ、バルサンまみれになって、その後、洗うのが大変になる。

天洋食品のような、大きな食品工場であれば、ネズミ、ゴキブリ、虫などが、間違いなく発生するはずで、かなりの頻度、しかも強い薬品で、消毒しなければ、駆除できないだろう。何年か前、日本でも、工場で作った食品に、虫などの異物混入が相次いで見つかったのは記憶に新しい。

しかし、消毒のために、すべての食品や機械類を、外に出すのは、大変な作業である。加えて、生産ラインが止まって、損金が発生する可能性がある。経営者としては、出来るだけ、搬出を小規模にして、ラインを止めないまま、消毒したい気持ちになるのは、当然である。

従って、その消毒の際に、食品が汚染される危険性は、少なくないと思う。とくに、今回の件では、餃子そのものよりも、包装の汚染が多いのは、気になる点である。餃子の具材や皮には注意が行き届いていたが、包装は見過ごしていた、という可能性もある。

さらに、消毒後の清掃が不十分であれば、ラインを再稼働したとき、床やテーブルに残った消毒薬で、汚染される可能性もある。また、井戸水のような、安価な水で、この清掃を行うと、井戸水からの汚染も考えられる。

故意云々の前に、まず、工場消毒の実態把握。これが順序だろう。

食品工場の衛生管理は、非常に難しい。やればやるほど、お金がかかるが、消費者はさほど褒めてくれない。しかし、やらなければ、すぐ不衛生になる。天洋食品の社長や中国当局は、100%安全な食品を作る工場だと言わんばかりだが、そんな工場があり得ないのは、先進国の消費者なら、たいてい知っている。優れた工場でも、薬物汚染、異物混入、製造日及び内容物偽装などと、常に、紙一重のところにいるはずだ。

今回の件では、汚染商品が少数で、汚染場所がばらばら、包装の外側のみの汚染もあるし、製造日もまちまちである。故意とするには、不思議な部分が多い。犯行を自供した人物がいるならともかく、まずは、衛生管理の手落ちという線を、徹底的に調べるべきだ。

中国食品局の責任者は、「日中友好発展に不満を持つ、一部の分子が、極端な行動に出た」可能性に、言及したそうだ。故意に誰かがやった、しかも、日本側で、というのが、自分の首が安泰な、都合の良いシナリオなのだろう。保身のために、官僚が、事実をねじ曲げようとするのは、どこの国でも同じということだ(笑)。

しかし、そんな政治教育的我希望的観測では(笑)、どの国の消費者も納得しない。求められているのは、科学的な調査に基づいた原因究明と、それに対する、有効な対処策である。日中両政府は、そのことを忘れてはいけない。

官僚のメンツや業者の利害を考えて、事実を曖昧にしたまま、最後は政治決着。

それでは、世界の消費者が、許さないだろう。

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ケンタッキーとバーミヤン、そして吉野家

2008-01-19 21:31:06 | 政治
例のゴキブリ騒動以降、ケンタッキーとバーミヤンは、食べなくなった。気持ち悪いという以上に、それぞれの会社の対応が、「そんなことは、あり得ない」の一点張りだったのが、一番大きい。

客には見えない部分だけに、厨房の衛生状態というのは、常に気をつけていないと、悪化するおそれがあるのは、誰でも知ってることである。だからこそ、ネットで、ゴキブリの話が流れたとき、多くのひとが、「そういうことも、あるかもしれない」と考えて、大騒ぎになった。

しかるに、会社側は、ろくに調べもしないで、それを無視、あるいは全面否定。さらに、デマを流されて、自分たちこそ、被害者だと言わんばかりの態度だった。

仮に、ゴキブリの話が本当でも、きちっと調べて、関係者を処分して、社長が謝罪して、今後の防止策を発表すれば、もっと気持ちが違ったと思う。

ネットを見て、お客が不安をもっているのに、その問題に正面から向き合わない。そんな会社の作る商品を、信頼できるだろうか?

先日、池袋の街を歩いていて、偶然、吉野家の前を通った。ふと、牛丼が食べたくなって、店に入ってみた。吉野家に行くのは、十年ぶり以上である。

吉野家は、店員が、デカ盛りの悪ふざけをした問題で、きちっとした調査を行い、責任を持って対処した。消費者から見て、納得のできる対応である。

デカ盛り騒動がなければ、そのとき吉野家には、入らなかっただろう。

ピンチは、対応次第で、チャンスになる。逆に、小さな問題に思えても、対応を誤ると、大きなイメージダウンを招いてしまう。

消費者が注目するのは、問題そのものではなく、その後の対応であることを、企業トップは、肝に銘じた方がいい。

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クジラの肉は安全なのか?

2008-01-17 17:39:15 | 政治
クジラの肉を調べたら、ダイオキシンなどの有害物質が、高濃度で検出された、という報道が、何年か前にあった。続報がないので、詳細は分からないが、食物連鎖の頂点に立つクジラが、海に流れこんだ汚染物質を、体内に蓄積・濃縮しているというのは、科学的に筋の通った話である。

最近は、スーパーでも、鯨肉を見かけるほど、クジラの国内供給量が増えている。浅草には、クジラ料理専門店が、新規オープンしたと聞いたし、学校給食に、クジラ肉を復活させる計画もあるらしい。

しかし、肝心の安全性に関しては、何の情報も伝わってこない。

南極海では、日本の調査捕鯨船が、環境保護団体 Sea Shepherd のメンバーに乗り込まれて、大騒ぎしている。オーストラリアの裁判所が、その地域での調査捕鯨を、違法であると判断したことが、きっかけになったらしい。

オーストラリアの領海問題、南極の資源保護、地元の反捕鯨感情などが絡み合って、外交問題にまで発展している。

だが、今や、捕鯨の一番の問題は、「クジラの肉は食べられるのか?」という点にある。食用に適さないほど、汚染が進んでいるのだとすれば、クジラを捕る意味がない。そして、それは、マグロなどの大型魚をはじめとして、多くの魚貝類が、かなりの程度、汚染されていることを意味する。

海洋汚染によって、海産物が食べられなくなるかもしれない。深刻な食糧及び環境問題である。政府は、一刻も早く、鯨肉汚染の調査に乗り出して、結果を公表するべきである。

調査捕鯨なのに、汚染の「調査」をしないで、危険な鯨肉を、市場にたれ流す。政府は見て見ぬふりをして、業者が大儲けする。給食で、それを食べた子供たちは、ダイオキシンなどを、知らない内に、体に蓄積していく。社会問題化したときには、官僚たちは、定年退職して、責任を問われない。

薬害エイズ、薬害肝炎と同じ、悪魔のシナリオだ。

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「ハガタカ」の熱海批判

2008-01-13 19:13:48 | 政治
「ハゲタカ」は、真山仁の経済小説で、外資系ファンドが、バブル崩壊後の日本で、破綻しかけの企業を次々と買収していく物語。大森南朋、柴田恭兵、松田龍平などの配役で、NHKでドラマ化されたので、ご存じの方も多いと思う。

ドラマには、出てこないが、小説の中では、主人公の鷲津政彦が、恋人のリンと部下のアランを連れて、熱海の老舗ホテルに泊まり、朝食時に、観光地としての熱海を、厳しく批判する場面がある。

ホテルは「建物が老朽化」「サービス・料理が悪く」「スタッフの対応も最悪」。他の旅館も、「同じようなもの」で、投資の価値なし。さらに、新幹線の駅前は、「寂れていて」「バスもタクシーもしけている」。海を見に来たのに「コンクリートの無粋な駐車場や看板」が林立して、「眺めが台無し」になっている。「アジアのリゾート王にでも、街ごと買って貰わない限り、再生は無理」。

悪口のオンパレードである。真山仁は、熱海で、何か面白くないことがあったんだと思う(笑)。

しかし、的を得た批判であるのも事実だ。熱海は、老舗旅館が、「ブランド観光地」という過去の亡霊にしがみついて、改革を怠ったために、今や、裏寂れた温泉地でしかない。

何年か前に、熱海市の市長が、このままでは熱海市が財政再建団体に転落すると、危機宣言を出したとき、旅館の社長や、女将が、噛み付いていた。「熱海のブランドイメージを損なって、客が来なくなる」というのが、その理由らしい。

このニュースを聞いて、地元の経済人が、未だに、「熱海」をブランドだと思っていることに、正直驚いた。一般的な感覚では、今は、大室山の麓に、小さな私立美術館を多数作って、リゾート化に成功した「伊豆高原」などの方が、遥かにイメージがよい。

熱海に、客が来なくなっているのは、旅館の経営者が無能だからである。自分たちの失敗を棚に上げて、市長に責任をなすりつける。それでは、熱海が、再生するわけがない。

さらに、「カジノ」構想をぶち上げているのも、不可解な話である。実現のための最大の難関が、「法律改正」だそうだ(笑)。そんな絵空事にかまけている時間があるなら、自分の旅館のサービス向上に努力すべきだろう。

「ハゲタカ」では、海の眺めが、駐車場や看板で台無しになっていると、書かれているが、今の熱海は、それにリゾートマンションが加わって、さらに状況が悪化している。

お金がないから、手っ取り早く、リゾートマンションを誘致する。その建物のために、さらに街の景観が損なわれて、「美しい風景」という観光資源が消えていく。さらに、客が来なくなって、お金が入らなくなる。魔の悪循環である。

経営に行き詰まっている、旅館やホテルを、資金力のある企業が買収して、経営陣を全部入れ替えて、再出発を図る。さらに、駅前と海沿いの再開発を、それら企業が共同で行う。それ以外に、熱海を再生させる方法はない。

もちろん、そんな企業があればの話であるが。

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給油法再議決は、二流国家の証

2008-01-11 18:05:24 | 政治
自衛隊の海上給油活動を可能にする、新テロ特措法が、参議院で否決された後、直ちに衆議院に戻され、自民・公明による、三分の二以上の賛成多数で、可決された。

今回の再議決は、日本という国が、政治的に、二流国家であることを証明している。

自衛隊が、アフガン戦争の後方支援活動へ参加するということは、国の進路を示す重大な問題で、国民の、幅広い理解と支持が不可欠である。政府与党は、十分な説明を尽くして、国民的議論を喚起しなければならない。

例えば、ブッシュ政権が、イラク戦争を始める際、米軍のイラク派遣に対しては、90%以上の国民が、それを支持。議会でも、民主党のオバマ上院議員など、ごく少数を除いては、上下両院とも、反対する議員は、ほとんどいなかった。

その支持が正しいかったかどうかは、別の問題だが、それくらいの圧倒的な支持がなければ、通常の民主国家では、自国の軍隊を、海外に派遣して、戦争に参加させることなど、出来ないということである。

だからこそ、ブッシュ政権は、「フセインは大量破壊兵器を隠し持っている証拠がある」など、嘘をついてでも、国民の支持を得ようとした。若い兵士の死が現実となった場合、圧倒的支持がなければ、政権が持たない。加えて、国民の支持がないのに、作戦行動を命じられる軍隊ほど、予算的にも、精神的にも、脆弱な組織はない。

では、自民党は、自衛隊の再派遣について、国民の支持を得る努力をしただろうか?

自民幹部が、衆議院での再議決を決断したあと、参議院の外交防衛委員会では、自民党や公明党の委員が、相次いで、与えられた時間の半分も使わないで、自分から質問を打ち切ってしまった。国民に説明して、理解を求める気持ちは、まったくないらしい。

二院制の国で、一院が反対しているのに、政府与党が、それを押し切って、国防軍を海外に派遣する。しかも、その与党は、数ヶ月前の選挙で、惨敗している。どこかの国の、倒されかけている軍事政権の話なら、納得できるが、近代民主国家、日本での出来事である。

間違いなく、欧米先進国は、心の底で、日本を笑っているだろう。

最近のニュースによると、日本の一人あたりGDPが、国際ランキングで、十何位にまで、大幅下落したそうである。どうやら、経済でも、日本は、もはや一流とは、呼べなくなってきている。

崩れゆく日本。その責任は、野党は「政権担当能力がない」「今ひとつ頼りない」など、根拠のない主張を信じ続けて、何十年も、自民党に政権を任せ続けてきた、われわれ日本人自身にある。

一度も与党になったことのない野党に、なぜ「政権担当能力がない」と分かるのか、誰か教えて欲しい。一方、随分前から、明確に実証されていることがある。「自民党には、政権担当能力がない」ということだ。




今回のテーマに関連して、以下のようなブログも書いていますので、よろしければ、ご覧下さい。

質問打ち切り議員は、辞職せよ


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大連立構想は、長期政権の責任逃れ

2008-01-05 18:54:28 | 政治
福田首相は、民主党との連立に、まだ未練があるようだ。ねじれ国会では、何一つ法案が通らないと、盛んに嘆いてみせている。

国会の機能不全。自民党が、大連立を望む理由は、本当にそれだろうか?

確かに、海上給油活動の法案に関しては、民主党は、妥協する気配がない。これは、党の憲法解釈にかかわる問題なので、考えを変えられないのは、当然である。

しかし、他の法案について、自民党と民主党の考え方が、真っ向から対立して、妥協の余地がないとは、思えない。実際、薬害肝炎の救済法案は、あっさりと、成立しそうである。何一つ法案が通らないというのは、誇張に過ぎない。

では、なぜ大連立にこだわるのか?

長期政権や独裁政権が、権力の座を降りたとき、何が起こるのか、我々はよく知っている。新しい政権は、前の政権による、汚職や癒着を、容赦なく追求していく。

韓国の大統領は、ほとんどが、辞任後に、裁判にかけられ、有罪判決を受けている。また、フィリピンのマルコス政権やルーマニアのチャウセスク政権などは、さらに苛烈な結末を迎えることになった。

次の総選挙で、民主党が与党となり、自民党が下野した場合も、例外ではないだろう。

安倍政権は、閣僚の金銭にまつわる相次ぐ不祥事が、命取りになった。補助金を出す側の大臣が、同時に、補助金を受け取る側の関係者になっているケースなど、長期政権でなければ不可能な、税金還流の構図が、いくつも浮かび上がってきた。

政権の座にいてさえ、政府と与党の癒着が、つぎつぎと明るみに出てくる。政権交代した場合、相当な数の官僚と政治家が、責任を追求されるのは、目に見えている。

自民党幹部や上級官僚が一番怖れている事態である。

連立を組んで、今から、民主党を取り込んでおいて、来るべき時代に備えておきたい。選挙による、はっきりとした政権交代ではなく、自民の一部が政権に残るような、政界再編的な変化にとどめたい。そんな思惑が、見え隠れする。

大連立構想は、長期政権下で、これまで甘い汁を吸ってきた、政治家や官僚が、安心な老後を送るための、一つの奇策に過ぎない。歴代社会保険庁長官は、民主党政権のもとでは、枕を高くして寝れないということだ。選挙で勝った政党が、政権を担うという民主主義の大原則など、保身のためには、ものの数ではないらしい。

国民が、今よりマシな政府を望むのなら、大連立に賛成してはいけない。総選挙による、政権交代しか、道はない。

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的外れな、福田首相の対中外交

2008-01-02 17:17:13 | 政治
中国は、現在、なりふり構わぬ資源外交を展開して、世界各地の資源を、抑えようとしている。さらに、レアメタルの国内消費を謳って、その輸出を妨げている。

資源を輸入に頼る日本にとって、中国の資源独占政策は、深刻な問題である。

さらに、資源への極端な先行投資は、中国経済にとっても、危険である。10%以上の成長率を、永遠に維持できれば問題ないが、それは不可能だ。

低成長に移行する際に、今の資源への投資が、巨大な不良債権になる可能性がある。株と不動産への過剰な投資と相まって、中国経済の急速な失速を招くかもしれない。

そのような中国のバブル崩壊は、日本経済を失速させ、さらには、世界経済全体に、大きな悪影響を及ぼすだろう。

日本政府は、中国に対して、現在の資源囲い込み政策を、改めるように、説得するべきである。それは、彼らが思っているほど、賢いやり方ではない。

福田首相は、今回の中国訪問で、この問題を、話し合っただろうか?

胡錦涛主席との会談要旨や、温家宝首相との共同記者会見を見る限り、資源問題には、触れてもいない。

福田首相は、国連加盟の是非を問う、台湾の住民投票に対して、事実上の「不支持」を表明した。訪中の「手みやげ」だったのかもしれないが、これは、日本外交の舵取りに関わる、相当な政治決断であり、中国への大きな譲歩である。

陳水扁政権と、与党民進党が衝撃を受けたのは、想像に難くない。

しかし、これだけの譲歩の見返りは、何だったのだろう?

中国のレアメタル資源の開発に、日本企業を参入させる約束を、取り付けたのだろうか?東シナ海でのガス田開発にからんで、日本側が主張する領海線を、認めさせただろうか?

メディアを通して見る限り、中国が、この「台湾住民投票への不支持表明」に、匹敵する譲歩を見せたとは、到底思えない。

父である福田赳夫氏の首相在任時のように、「日中友好」を唱えて、笑顔で握手すれば良かった時代は、とっくに終わっている。日本と中国は、パートナーであると同時に、ライバルでもある。友好ムードの演出以上に、シビアな外交取引が必要だ。

今回のような訪中では、国民の間に、政府の「弱腰」批判が高まり、日本国内の対中強硬派が勢いづいて、冷静な対中外交を展開することが不可能になる。

福田首相が、本当に、日中友好を望むのならば、一方的に譲歩した上に、本質的な懸案を先送りして、表面的に笑顔を振りまくだけの、「キャッチボール外交」は、止めるべきである。

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パキスタンの冷たい冬(3) ~ シャリフとブッシュ

2007-12-31 13:28:09 | 政治
ブット氏亡き後、シャリフ元首相の存在感が、高まってきているという。彼は、首相のとき、陸軍参謀総長だったムシャラフ氏の解任を命じたが、それがきっかけで、無血クーデターを起こされ、国外亡命を余儀なくされた。

現在は、亡命先のサウジアラビアから帰国して、国内で政治活動を始めている。

米国政府は、イスラム過激派との対決姿勢を鮮明にしていたブット氏とは異なり、シャリフ氏に対しては、冷淡であるらしい。イスラム過激派を育成したとされる、ハク元大統領の信任を得て、政治基盤を確立したこと。98年に核実験を強行したことなどが、影響しているようだ。

しかし、シャリフ氏が、再び、政治参加する可能性は、高くなっている。イスラム教徒の国で、イスラム寄りの人物が、人気を集めるのは、当たり前のことである。また、過激派のテロ行為を支持しているイスラム教徒は、ごく少数である。

イスラム寄りだから、イスラム過激派への態度が生ぬるいから、無視する。ムシャラフ氏や故ブット氏など、アメリカにとって、口当たりのいい人物は応援するが、シャリフ氏は、ダメ。それでは、いつまで経っても、パキスタンの政治は安定しない。

国民のほとんどが、イスラム教徒で、反米感情を持ち、同胞への迫害だとして、アフガン戦争に反発している。その国に、宗教色のない、「民主的」な、親米政府を作って、「テロとの戦い」を強要するのは、かえって事態を悪化させる危険がある。イスラム穏健派を支援して、国内急進派を押さえ込む方が、より現実的である。

PLOのアラファト議長、アフガニスタンのタリバーン、イラクのフセイン大統領、イランのアフマディネジャド大統領。嫌いな相手だから、外交交渉はしない。できれば、武力で排除する。

ブッシュ政権は、パキスタンでも、また、同じことを繰り返すつもりだろうか。パレスチナ、アフガニスタン、そして、イラク。その態度が引き起こしてきた、数々の悲惨な結果を、未来に押しつけて。

しかし、相手は、核保有国である。結果の深刻さは、これまでの比ではない。

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パキスタンの冷たい冬(2) ~ 総選挙の行方

2007-12-30 18:40:08 | 政治
パキスタン各地で、ブット支持者による抗議行動が起こり、治安部隊と衝突しているらしい。政府は、暗殺犯を、アルカイダと断定しているが、支持者らは、政権の関与を疑っているようだ。

騒然たる状況の中で、欧米各国は、ムシャラフ大統領に、総選挙の、予定通りの実施を促している。アメリカ政府高官の言葉を借りれば、選挙の延期は、ブット氏を暗殺した連中の勝利を意味する、という理屈だ。

しかし、本当に、このまま、来年1月8日に選挙を行って、よいのだろうか?

欧米先進国は、とにかく選挙さえすれば、良い方向へ前進するのだと、盲目的に信じている気がしてならない。しかし、例えば、イラクでは、スンニ派政党の多くがボイコットを表明する中で、選挙を強行したため、シーア派とクルド人の政府が出来てしまった。結果、スンニ派は、国家建設に参加できなくなり、武力闘争の道に進まざるを得なくなった。

現在、米軍は、サドル師に忠誠を誓うシーア派の兵士や警官と、共同して、スンニ派武装勢力を掃討している。治安回復にはほど遠い、歪んだ構図である。

今回の選挙に対しては、ブット氏亡き後、急速に存在感を高めている、シャリフ元首相が、「自由で公平な選挙を期待できない」として、ボイコットを表明している。

そもそも、ムシャラフ政権は、つい最近まで、戒厳令を敷いていた。野党は、自由な選挙運動など、出来るはずもない。事実、ブット氏も、軟禁状態に置かれて、外出すらままならなかった。

外出が可能になって、遊説を開始した途端に、暗殺。ブット支持者が、ムシャラフ政権へ、不信感を募らせるのは、当然のことだ。今の状態では、人民党の選挙参加すら、危うい。

予定通り選挙を行って、野党ボイコットで、与党が大勝。議会には、シャリフ氏もいないし、ブット氏の人民党もいない。そうなった場合に、パキスタンの政情が安定化するだろうか?野党勢力が、一層激しく、政府と対立するのは、目に見えている。

この選挙は、誰かを勝たせるためではなく、国内勢力を、幅広く政治参加させることが、一番の目的であるはずだ。それが、パキスタンを安定化させる、唯一の方法である。野党の参加がなければ、やる意味がない。

総選挙の時期を延期して、野党に、選挙運動の時間を、十分に与える。国際社会が、公正な選挙の実施を監視する。いくつかの手を打った後で、実施しても、遅くはない。

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パキスタンの冷たい冬 ~ アメリカの誤算

2007-12-29 19:15:06 | 政治
ブット元首相が暗殺された。犯人は銃撃後に自爆。軍を掌握するムシャラフ大統領と、国民に人気のあるブット元首相を組ませて、パキスタンの政情安定化をはかる。ブッシュ政権のシナリオは、完全に崩壊した。

ブット氏のパキスタン帰国は、ムシャラフ氏が、汚職の罪を免除すると発表したことが、きっかけである。この決定の裏に、アメリカがいたことは、想像に難くない。

しかし、ムシャラフ政権の支配が弱まって、国内のイスラム勢力が盛り返している時期に、ブット氏を帰国させるのは、果たして、正しい判断だっただろうか?イスラム過激派に、格好の敵を提供しただけではないだろうか?火に油を注ぐことになったのではないだろうか?

ブット元首相は、欧米とのパイプやリベラルな考え方から、イスラム寄りのひとびとから、支持されないのは、はっきりしていた。この点では、ムシャラフ大統領と、あまり変わらない。

また、国内の民主化勢力が、投獄されながらも、抵抗活動をしていた時期に、海外に亡命していたこと。そして、帰国直後の一時期ではあるが、独裁的傾向を強めるムシャラフ氏を、評価したこと。民主化を望む国民の中にも、ブット氏の姿勢に疑問を感じていたひとは、少なくないはずである。

加えて、汚職政治家というイメージが、完全には、払拭出来ていなかったのも、事実だ。

ブット氏が、再び首相になったとして、果たして、今のパキスタンをまとめていけただろうか?命の危険を冒してまで、彼女を帰国させる必要があっただろうか?

ムシャラフ政権は、軍事政権ながら、比較的リベラルで穏健な政権運営を行ってきた。パキスタンは、核保有国であると同時に、「対テロ戦争」の最前線でもある。欧米先進国から見て、この国を統治するに適切な人物としては、現在のところ、ムシャラフ氏以外には考えられない。

しかるに、ブット元首相の帰国、暗殺は、パキスタンの政情を一層不安定化させ、ムシャラフ政権の基盤を、さらに弱体化させた感がある。

ブッシュ政権は、再び、間違いを犯したのではないだろうか。

イスラエルのパレスチナに対する超強硬姿勢を容認したため、中東和平の試みは、完全に頓挫している。ガザ地区では、パレスチナ人が、悲惨な生活を送るなか、住民の不満を吸収して、ハマスが着々と勢力を伸ばしている。

アフガニスタンから軍事力でタリバーンを追い出して、オサマ・ビンラディンとアルカイダを壊滅する計画も失敗した。タリバーンは依然勢力を保っている。オサマは、ビデオレターを送りつけて、元気に演説している。

アフガニスタンは、軍閥が群雄割拠する最悪の状態で、米英軍は、いまだに戦争を続けている。カルザイ大統領は、首都カブールから、一歩も出られない。

さらに、イラク戦争。フセインを失脚させて、民主国家を建設する予定だったが、武装勢力、テロリスト、強盗団などが入り乱れる、無法地帯が、いくつも出現してしまった。テロリストのいない独裁国家を、テロリストが暗躍する分断国家に変えてしまった。

ブッシュ政権には、中近東問題に精通したブレーンが、いないのだろうか?それとも、ブッシュ大統領の耳は、ロバの耳なのだろうか?彼が、手を打つたびに、テロ組織にとって有利な状況が出来上がっていく。

血も涙もないテロリストの巣窟、そのすぐ側に、核兵器と核技術が転がっている。しかも、その国を治める政権は、弱体化の一途をたどっている。

ブット氏暗殺で、世界が、さらに危険な場所になったことは、間違いないだろう。


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