郷土力士、両國→出羽海と玉ノ海→二所ノ関

　諫早出身の元小結両國改め出羽海は明治七年生れ、大村
出身の元関脇玉ノ海改め二所ノ関は大正元年生れ━相当な
開きがあるから、考え方に齟齬を生ずるのは当然かも……。
　しかしながら、両者とも角界のなかでは革新的思考の持主
だったはず。なぜ確執が……?
　半分臆測なのだが、或るとき玉ノ海は目撃した━出羽海の
靴の紐を部屋つき親方が結んでいる場面を…。典型的な所謂
“おべっか”に出くわした玉ノ海は、早くから「協会の在り方」に
疑問を感ずるに至り、二所ノ関部屋後継者の目途がついたら
角界から足を洗うつもりで…。やがて「二所ノ関理事」のポスト
も返上して野に下った━。
　尚、NHK相撲解説者に転身したのは、神風正一氏の慫慂に
よるものらしい。

衝撃的な「名門」消滅…

　好角家なら衝撃的━はやくも本年角界十大ニュースに入り
そうな「二所ノ関部屋」消滅云々…。
　師匠の横綱玉錦急逝に因って、若くして年寄二所ノ関との
“二枚鑑札”で部屋を継承した当県大村出身の玉ノ海梅吉氏
は、…諫早出身の出羽海梶之助(元小結両國)率いる大部屋
が採る「分家・独立許さず」の方針は、年寄の「弟子養成」の
権利・義務を剥奪するものだ━と批判。
　戦後、大ノ海は花籠でⅠ若乃花・輪島の両横綱、小結琴錦は
佐渡ヶ嶽で大関琴ヶ濱ら、関脇玉乃海は片男波で横綱玉の海、
他に関脇神風も内弟子に芳ノ里(←神若)……、更にⅠ若乃花
は二子山部屋を創設…といった具合に“核分裂”の如きで一門
を繁栄させ、名力士を多数輩出させたのである。
　ところが、二所ノ関部屋では元大関佐賀ノ花が急逝した際、
跡目をめぐって紛糾━後継者候補が一時、大鵬やその弟弟子
大麒麟らで決らず、…紆余曲折を経て“法螺吹き”金剛で決着。
余波で、天竜三郎氏から醜名を頂戴した天龍源一郎が“嫌気”
でプロレス転向といったハプニングまで…。
　「二所ノ関一門」と称しながら、総帥であるはずの二所ノ関は
理事のポストを長年得られず、可笑しな状態だった。
　畢竟、「今後も宜しく…」の元関脇金剛は、停年間近になって
も後継者問題を「想定外」に放置していたのかな…?