『野球界』昭和21年5月号「土俵擴大と勝敗」つづき
〔前略〕新進の九州錦は、下の方にゐた時分から、グイ
と吊上るやうにして打つ上手投に、多く星を得ていたゞ
けに、土俵が廣くなつてもそんな事に構はず、土俵の眞
たゞ中で、強引に勝負を決する事により、八勝二敗を稼
いだ。それに秋場所東へ廻つた鯱ノ里だが、彼はこれ
まで長い間幕尻の大立物と云つた感で、勝越すにしても
負越すにしても大した事はなく、秋場所も西幕尻三枚か
ら、東の同位置へ廻つた。然るに今度は相手の變つた
故かも知れないが、初日から三日間勝續け、四日目初
めて九州錦に寄切られ、其後も調子よく愛知山、双見山
に負けたゞけで七勝したから次場所には四、五枚目へ
躍進する事になるのだらう。〔中略〕最近では重い腰に
物を言はせてジツクリ水の入る四ツ相撲を取るやうに
なつたので、秋場所土俵の廣くなつた事が有利を齋した
とも思へる。 <以下、次回>
もとの直径15尺土俵に戻った昭和21年秋場所、上位
進出の九州錦は3勝10敗、鯱ノ里も2勝11敗の体たらく。
〔前略〕新進の九州錦は、下の方にゐた時分から、グイ
と吊上るやうにして打つ上手投に、多く星を得ていたゞ
けに、土俵が廣くなつてもそんな事に構はず、土俵の眞
たゞ中で、強引に勝負を決する事により、八勝二敗を稼
いだ。それに秋場所東へ廻つた鯱ノ里だが、彼はこれ
まで長い間幕尻の大立物と云つた感で、勝越すにしても
負越すにしても大した事はなく、秋場所も西幕尻三枚か
ら、東の同位置へ廻つた。然るに今度は相手の變つた
故かも知れないが、初日から三日間勝續け、四日目初
めて九州錦に寄切られ、其後も調子よく愛知山、双見山
に負けたゞけで七勝したから次場所には四、五枚目へ
躍進する事になるのだらう。〔中略〕最近では重い腰に
物を言はせてジツクリ水の入る四ツ相撲を取るやうに
なつたので、秋場所土俵の廣くなつた事が有利を齋した
とも思へる。 <以下、次回>
もとの直径15尺土俵に戻った昭和21年秋場所、上位
進出の九州錦は3勝10敗、鯱ノ里も2勝11敗の体たらく。