人生にロマンスとミステリを

小説を読むのも書くのも大好きな実務翻訳者です。ミステリと恋愛小説が特に好き。仕事のこと、日々のことを綴ります。

柚月裕子『盤上の向日葵』

2020-02-13 08:40:11 | 読書記録(紙書籍のみ)
柚月裕子著『盤上の向日葵』

将棋用語がいっぱい、将棋の対局の場面がいっぱい。
「□(←将棋の駒の絵)4四桂」とか「□(←将棋の駒の絵)9二角」とか出てきてもさっぱり
わかんなくて、その辺りは読み飛ばしました(桂は桂馬かなぁとかそんな想像はできるけど、
4四ってどこやねんって)。でも、差し手の描写がすごく緊張感があって緊迫してて
状況は想像できる。将棋に詳しくて、しかも強くないと書けない本だと思うけど、
リサーチだけで書いたのだとしたらほんとすごすぎる。

さて。ここからは感想&ちょっとネタバレ。

プロ棋士を目指していたけど、年齢制限の壁を越えられなくて諦めざるをえなくなり、
将棋との接点を一切断つつもりで刑事になった佐野巡査の登場から
始まります。なので、佐野巡査が主人公かな~と漠然と思いながら読み始めました。
こういう挫折を知っている男性は大好物です(ちょっと脱線)。

けれど、三人称なのですが、途中で視点が変わるので、誰が主人公なのか
わからなくなります。そして、親から虐待を受けているかわいそうな上条桂介少年に
どっぷり感情移入しまして。彼を見かねて手を差し伸べてくれた唐沢さん(子どもがいない)に
どうにか救ってほしいと思うんだけど、桂介の最低の父親は本当に最低最悪で(っていうか、
ああいう背景なのに、あんた、そのセリフ言う!?みたいな)、桂介くんは
唐沢さんの手を取れず、虐待親父の下で育ちます。まあ、自力で東大に合格し、
IT企業を興して大金持ちになり……。孤独を癒やし、唐沢さんに教えてもらった将棋で
再び夢を追いかける、みたいな、明るい展開になるのかと思いきや。

真剣師(賭け将棋をする人)で「鬼のジュウケイ」の異名を持つ東明もひどいやつで。
結局、桂介は直接的には誰も殺してないんですよね。東明殺しの容疑で
佐野巡査たちにマークされる訳なんですけど。

でも、桂介は精神を蝕まれていくというか、それは「血」のせいで(ワタシ的には
「血」に縛られた自己暗示的な呪いのようにも感じましたが)
結局、悲しい結末を迎えました。

なんでやねん~。あんなかわいそうな生い立ちで、人に騙され、最悪親父には
お金をせびられ……そういうのをはねのけて生きて成功してほしかった。

なんて、そんなのは陳腐な物語になってしまうかもしれないけど。
東野圭吾さんの『白夜行』以来、悲しい物語にかなり心が疲れてしまってて。
次は嘘くさくてもいいから、思いっきりハッピーエンドのお話が読みたい。
コメント
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