神が宿るところ

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足尾神社(茨城県石岡市)(常陸国式内社・その13の3)

2018-12-22 23:27:20 | 神社
足尾神社(あしおじんじゃ)。
場所:茨城県石岡市小屋1(本宮)。茨城県道7号線(石岡筑西線)の石岡市・桜川市境の「上曽峠」から北筑波稜線林道に入り、北へ約4.5km。駐車場有り(境内)。林道は舗装されているが離合困難な道幅で、途中にハンググライダーの離陸場があったり、登山・ハイキングの歩行者がいたりして、十分注意が必要。
当神社の創建時期は不明。社伝によれば、第60代醍醐天皇(在位:897年~930年)が足の痛みで苦しんでいたとき、夢に「足尾の神」が現れたので、足尾山を遥拝したところ、たちまち快癒した。そこで、醍醐天皇は、紙に足形を印し、「日本最初足尾神社」の勅額を下賜した。その勅額が野火により焼失したので、寛正5年(1464年)に再下賜があったという。文治年間(1185年~1189年)の初め頃、源義経の家臣・常陸坊海尊が足尾山に籠って荒行を行ったといわれ、以来、「足尾山大権現」の霊山として修験道の修行道場として広く知られるようになった(常陸坊海尊は、元は円城寺又は比叡山の僧で、衣川の戦いの時には不在であったため生き延びたとされるが、その後の消息は不明。400年生きて、仙人になったとの伝説がある。)。「足尾山」で修行した行者や修験者が諸国を行脚しながら、「足尾神社」が足病消除に効験ありとの神徳を全国に広めたらしく、近世には足痛・足病の快癒を願う参拝客が多かったという。現在の祭神は国常立命(クニノトコタチ)、面足命(オモダル)、惶根命(カシコネ)。
ところで、「足尾山」(627m)は、「常陸国風土記」に「葦穂山」、別名「小泊瀬山」(原文:「乎婆頭勢夜麻」(おはつせやま))として記載があり、「萬葉集」にも歌われている。ただし、「常陸国風土記」では、その記載が「新治郡」の条の末尾にあり、「郡家の東、50里(約27km)のところに笠間村がある。そこへ越えて行く道を葦穂山という。」という内容になっている。ここでいう「郡家」が「新治郡家」(現・茨城県筑西市古郡、「新治郡衙跡」(2018年8月4日記事参照))であれば、「笠間村」(現・茨城県笠間市笠間)に行くには、今なら国道50号を東~東北に向かえばよい(約22km)。古代には、途中で「大神駅(家)」(現・茨城県桜川市平沢、「大神台遺跡」(2018年9月1日記事参照))を通っただろうから、国道50号線より北側を通ることになるが、こちらも国道289号線を進み、「鏡ヶ池」(茨城県桜川市山口)付近の分岐で直進すると「笠間」に着く。この間も約22kmで、「笠間」に入る前に越えるのが「鍬柄山」(276m)になる。よって、「新治郡家」から南東にある「足尾山」を越える必要はなく、「鍬柄山」を「葦穂山」とする説もある(なお、この説は当神社のHPにも紹介されている。)。これに対して、中村啓信監修・訳注「風土記 上」によれば、上記の「葦穂山」に関する記述は(失われた)「白壁郡」の条の一部であるという。「白壁郡」は、宝亀元年(770年)に白壁王が即位して光仁天皇となったことから、その名を忌んで「真壁郡」に改められた。「白壁郡(真壁郡)」の郡家の所在地は確定していないが、「真壁城跡」(現・茨城県桜川市真壁町)付近というのが有力。仮にそうだとすれば、「真壁城跡」は「足尾山」の西側にあることから、「笠間」へは、東に向かい、「足尾山」を越えることになる。その後の道順が不明だが、直線距離なら約18kmなので、徒歩で約30kmほどで「笠間」に至ると思われる。
ということで、当神社が由緒ある古社であり、常陸国茨城郡鎮座の式内社「夷針神社」に比定されてもおかしくはないと思われるが、当神社がなぜ「夷針神社」という名で登載されたのかという理由が不明で、なかなか論社として有力とは言えないのではなかろうか。


足尾神社のHP


写真1:林道沿いの「足尾神社」入口。社号標がある。以前は、ここにも鳥居があった。


写真2:鳥居


写真3:境内の「草鞋奉納所」。もちろん、草鞋ではなく、スニーカーやサンダルなどが多い。


写真4:真新しい社殿


写真5:社殿は一部石造で、天狗のレリーフも。


写真6:社殿横から更に上っていく道。結構急坂で距離もあり、息が切れる。


写真7:「足尾山」山頂付近の石祠。これが本殿。台座に「葦穂山」と刻されている。


写真8:県道7号線沿いにある「足尾神社一の鳥居」。かつては、ここから「足尾山」山頂までの道があったようだ。


写真9:「足尾神社」里宮の社号標


写真10:「足尾神社」里宮の社殿(場所:茨城県石岡市小屋387)。こちらにも、靴や松葉杖などが置かれている。
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