Jun日記(さと さとみの世界)

趣味の日記&作品のブログ

土筆(137)

2018-07-22 07:58:19 | 日記

 しかし、光君は全く慌てる気配も無く、感情的になっている祖父を宥めに掛かりました。

   まぁまぁ、…

今の世の中、自分1人だけ研究室にこもってガリガリ研究してるなんて事無いんだよ。大抵は研究室で同じ研究をしている仲間が集まって、何人かでグループになって協力して研究しているんだ。たまたまある朝僕にこの理論が閃いて、皆に先んじてこの方法を発見したから、嬉しい勢いのままに先ずは自分がと、彼等に先んじてやってみたんだよ。

   丁度じっちゃんも家に来ていたから、この機会に僕の研究の成果をみせるいい塩梅だと思って、一緒にとお供に連れて来たんだよ。昔からの憧れだっただろう、じっちゃん、タイムトラベルは。

   その内研究室の皆も僕達に追いついてくるさ。それに、後輩達の方が僕なんかより余程優秀な奴が多いんだ、置き手紙やメモ書きも置いてきてあるし、全然、彼等を当てにしていていいよ。

   孫のこの余裕のある言葉と態度に祖父はややホッとしました。が、万事人任せな孫の態度はやはり気になるのでした。

「お前より?当てになるのかい?その後輩達とやらは。」

彼は横目で孫の顔付きや様子を眺めながら現状を推し量ってみます。昔気質なせいでしょう、何事も自分自身で執り行わないと気の済まない質の彼にすると、この今の他人任せの窮状がどうにも不安で仕様がないのでした。