彼女は涙声で兄に切々と心情を訴えました。無論後ろにいる年下の従姉妹には聞こえない様に小声で話しました。兄は大凡の自体を悟ると、ややあっけにとられましたが、改めて過去を振り返ってみるとなるほどと頷ける節がありました。妹が話の主に好意を抱いていた事は、共にその家に遊びに行った時の彼女の顔つきや様子、話し方に妙な違和感を感じた事を思い起こせば、なるほどね!と察する事が出来ました。しかし、まさかそこまで、妹が泣き出すほどにまで思い詰めていたとは…、今迄想像だにしていなかった出来事でした。
彼は『ませガキ』と思いました。ぷっと吹き出してしまいました。彼は「ははは…」と声に出して笑い出してしまいそうでした。妹の手前必死で笑い声を堪えると、片腹が痛くて痛くて、彼は非常に困りましたが、妹の方はまだ泣き止まず、幼いなりにそれなりに深刻な様子です。『仕様が無いな。』と彼は妹の事を愛おしく思います。「よしよし。」と、ポンポンと肩等叩いてやります。
妹の方はこの兄の態度に、分ってもらえたと思うとほっと気が緩み、声に出して泣いたおかげもあってか、気分はすっきりと晴れて来るのでした。自分の顔を覗き込む兄の慈愛に満ちた瞳を見上げて、にっこりと笑いました。子供というのは不思議なものです。「泣いた烏がもう笑った。」彼女は兄にそう茶化されて、兄の顔を見上げて肘で彼の脇腹を突くと「もう、お兄ちゃんたら、」と、何時もの様に輝くような笑顔で微笑みました。
それを見て兄は思います。『奇麗だよな。』。兄の欲目では無い、客観的に見てもそうだと真実彼はそう思いました。これなら、彼女が本気で迫れば誰も断る相手はい無いだろうと彼は確信しました。
「好きなら好きだと言えばいいじゃないか。」
兄は妹にアドバイスするのでした。